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2015年03月22日

任天堂は再び「ゲーム人口の拡大」を成せるのか

| 03:34 | 任天堂は再び「ゲーム人口の拡大」を成せるのかを含むブックマーク 任天堂は再び「ゲーム人口の拡大」を成せるのかのブックマークコメント

大きな驚きをもって受け止められた、任天堂DeNAの業務提携。

これについては人それぞれ、様々な見解があるかと思いますが、私はとても力強く前向きなものであると受け止めています。

その大きな理由は、会見の中で岩田社長の口から「ゲーム人口の拡大」というキーワードを久しぶりに聞くことができたことです。

任天堂株式会社 株式会社ディー・エヌ・エー 業務・資本提携共同記者発表

任天堂を躍進させた「ゲーム人口の拡大」というスローガン

「ゲーム人口の拡大」は2002年に岩田聡氏が社長に就任して以来の任天堂の一貫したスローガンです。

しかし、ここ数年の決算説明会では「QOLの向上」「任天堂ユーザー層の拡大」という言葉に取って代わられ、大きな戦略目標からは外されてしまっている印象を受けていました。

岩田社長はニンテンドーDSWiiによって今までゲームに興味のなかった幅広い層にアプローチすることに成功し、全く新しい市場を創出することでゲーム人口を飛躍的に拡大することに成功しています。

その流れはその後のソーシャルゲームの台頭へと引き継がれ、今や歴史上かつてないほどゲーム人口が拡大した時代と言って過言ではないでしょう。「ゲーム人口の拡大」という看板を下ろしたことは、その流れの中で任天堂存在感がだんだんと失われていったことの象徴のように感じ、とても寂しく思っていただけに、今回再び岩田社長の口からその言葉が出た時には、驚きと興奮を感じずにはいられませんでした。

しかし、現実問題として、スマートデバイスがここまで普及し、様々なタイプのゲームが日々生まれ続けている現在、これ以上の「ゲーム人口の拡大」を目指すということはどういうことなのでしょうか。

その鍵は、現在の主流である「F2Pによるアイテム課金」モデルが取りこぼしている層を取り込むことにあると、私は考えています。

岩田社長の現状認識についての疑問

その前に、記者会見で述べられた岩田社長が語った現状認識について、いくつかの疑問を呈しておきましょう。

  • スマートデバイスでは、コンテンツの新陳代謝が激しく個々のコンテンツの寿命が短くなりがち
  • 競争環境が激しく、持続的に成果を出しているコンテンツ供給者は全体の中で本の一握り
  • 成功しているコンテンツ供給者は単一のヒットタイトルに依存している構造になっていることがほとんど

会見の中で岩田社長は上記のように述べていますが、実際にスマートフォンアプリで持続的に成果を出しているデベロッパーの数はコンシュマーゲーム全盛期と比較しても明らかに増えており、その中には複数のヒットタイトルを抱えているところも少なくありません。

またコンテンツの寿命という意味でも、一度成功を収めたタイトルが価値を失うという状況は、例外的にいくつかの事例がある以外は基本的に発生していません。

F2Pアイテム課金モデルの強みと課題

F2Pのアイテム課金モデルは、高額課金をしてくれる少数のコアユーザーとそれにぶら下がる、コアユーザーの10倍以上のゲームプレイヤーを囲い込むという形で、ゲーム人口の拡大に寄与してきました。

このモデルが何よりも優れているのは、数万人〜数十万人程度の、比較的小規模なユーザーを囲い込めば、それで商売として成立するという点です。どんなにニッチなジャンルであってもコアユーザーの掘り起こしに成功すればサービスを持続することが出来る。また、その中から数百万人〜数千万人にリーチ出来るようなゲームが生まれれば、莫大な利益を生み出すこともある。

競争環境が激しくなり、入り口に立つ難易度は数年前に比べて高くはなっているものの、一度ファンを掴んでしまえば十分に勝機のある、魅力的な市場であり続けているのは間違いありません。

一方でこのF2Pアイテム課金モデルは、ある問題点を抱えています。

それは、ターゲットとなるユーザー層が、高額課金コアユーザーのボリュームゾーンである「20代〜50代」に絞られてしまうという点。

F2Pアイテム課金による高額課金が未成年者に悪影響を与えているという社会認識も相まって、作り手はますます未成年者向けのゲームから遠ざかる傾向にあります。

任天堂は未成年向けゲーム市場を目指す

任天堂がスマートビジネス市場に打って出て更なるゲーム人口の拡大を目指すとしたら、狙いとするのは間違いなく、この、取りこぼされた未成年層でしょう。

任天堂は旧来から低年齢層向けゲームに強みを持っており、過去の資産や企業ブランドイメージを考えても自然な流れに思えます。

しかし、この層を取りに行くにあたっては解決しなければならない大きな課題があります。それは「高額課金ユーザーの存在に頼らないF2Pモデルは構築しうるのか?」ということです。

現在既に存在するもので言えば、Kingの「Candy Crush Saga」等は、莫大なユーザーを囲い込むことで、1人あたりの課金額は小さいまま成功している例と言えます。

しかしこれは岩田社長が否定している「単一のヒットタイトルに依存した構造」そのものであり、多様性という意味でもあまり歓迎できる方策とは言えません。

また、任天堂も自社プラットフォーム上で様々なF2Pモデルの模索をしていますが、今のところ決定的に上手くいったものというのはまだ存在していません。

果たして岩田社長がどういった腹案の上に勝算を描いているのかは現時点ではうかがい知ることは出来ませんが、新しいビジネスモデルの発明なしに「ゲーム人口の拡大」が更なるステージに上がることは難しいのではないかと考えます。

DeNAが果たすべき役割

ここで今回任天堂パートナーシップを結んだDeNAについても触れておきましょう。

「ガチャ」で大儲けしたモバゲープラットフォームの運営会社として広く知られるDeNAですが、一般に印象されている姿と違い、DeNA自身はあまり「ガチャモデル」に積極的ではなかったという歴史があります。

そもそもモバゲー躍進の原動力になった「怪盗ロワイヤル」はガチャモデルではないんですよね。ソーシャルゲームプラットフォームのもう一方の雄だったGREEとのライバル関係の中でガチャモデルも取り込んではいったものの、それ以外の課金手法についても様々に研究・実施してきたという実績がDeNAにはあります。

もちろんそれは、任天堂が目論んでいるであろう新しい課金モデルとは違い、あくまでも「青天井の課金モデルのバリエーション」ではあるのですが、そういった研究や実験と、任天堂が持つ知見とが交じり合った時、現実的でスケール可能な「天井のあるアイテム課金」を提案をしてくれるのではないか、そういう期待もあります。

これからの新しい10年に向けて

今回の協業についてはその他にも、

といった興味もありますが、これに答えが出るのは早くても1年後、2年後という話になってくると思われますので、今回はここで筆を置きたいと思います。

何はともあれ、年内にもリリースされるであろう協業第一弾タイトルでどのような提案が行われるのか、楽しみに待ちましょう。願わくば、これからの新しい10年のゲームの形が変わるような何かが生まれることを、切に期待しています。