『あやしい探検隊アフリカ乱入』

 突然だが、我が家のトイレの横に小ぶりな本箱がある。ガラスの扉がついた幅1m高さ2mほどのこの本箱は日頃メインで使っているものではない。この家に越してきた1995年当時に所持していた本が入れたままになっている。週末の朝にゆっくりとトイレに入るときは、この本箱から昔読んだ一冊を取り出し持って入る。だいたいがその日の気分で適当に選ぶのだが、一冊を続けて読んでしまうこともたまにはある。今年の春頃からおよそ半年がかりで『あやしい探検隊アフリカ乱入』を読んだ。

 この本は椎名誠と仲間達のアフリカ旅行記。あいかわらず楽しくニギヤカだ。登場するのは自称バカ旅作家の椎名誠のほか、ワニ眼画伯、辺境の写真師、タワシ髭の登山家、凶暴ぶちかまし編集者の合計5人。これら一癖も二癖もありそなオヤジたちが、インド経由でナイロビに着き、サバンナを駆け抜け、キリマンジャロに登り、モンパサでインド洋と戯れる。

 この本が単行本として出版されたのは1991年の2月。彼らがこの旅に出てからもう20年近くたつのだ。カバー折り返しに印刷された著者近影が若々しい。当時の椎名誠たちはおそらく今の自分と同じくらいの年齢だったはず。旅の中で彼らが喜んだり困ったりするエピソードがたくさん出てくるのだが、それらに対する彼らの対応や、気もちの持ちかた動きかたがとても共感でき、ナチュラルに感情移入できた。「うんうん、そう思う」「やっぱそうでしょ」最初に読んだ時はこんな風に感じたたのだろうか、記憶がない。当時の彼らに年齢だけだが追いついてオヤジになったということは事実だ。

 今では随分変わってしまっているのかもしれない、未知なるアフリカの自然の中でのびのび楽しむオヤジたちに感情移入して過ごす休日の朝(のトイレ)。大自然のシマウマやキリン、マサイ族にも会えた半年のツアー、こんな読書もなかなか良いものだ。