『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』

 世界は数字で動いている。少なくともビジネスの世界ではそうだ。売上金額、生産数量、ロス率、歩留り、納入日。単価、金額、売掛、買掛、手形期日に消費税。会議の日程、参加人数、出張手当に交際費(語呂がいいぞ)。すべてが身近な数字だ。「数字力」というコトバが昔からあったのか、著者の造語なのか分からないけれど、ぜひとも養成したいと思い手に取った。

 まずは数字に関心を持つことを本書では勧める。日常で何気なく目にし耳にする数字の意味を正確につかみ、数字を覚える。いくつかの数字を覚えていると、別の数字を目にした時に比較したり推測したりできる。数字が生きてくるのだ。そして定点観測。いくつかの数字を定期的に追うことで世の中の流れが見えてくる。

 実に親切で分かりやすい。本書は4章からなるのだが、1章で「数字力」の大切さを説き、2章では数字の見方を7項目で説明。3章では数字力を阻害する代表的要因を6つ上げ、4章は「数字力が高まる五つの習慣」を紹介する。結構難しい話をしているのだが分かりやすいのは、言葉にムダがないことと、例示が適切だからだろうか。語り口調も優しく、スイスイよめる。こういう先生に教わりたかった。

 しかし非情に残念なのは、本書が1,000円の新書版であること。新書をバカにしてはいけないが、ありがた味が少ないのだ。随所にある「例題」などもマジメにやればよいのだが、通勤電車の中では落ち着かない。同じ内容を分厚いハードカバーにして、別冊付録に「世界の数字○○年度版」と「数字力アップ・ヒーリングミュージックCD」をつけて4,500円位で売っても売れるだろう。いや、その方が良い。4,500円払ったら元を取ろうと、心静かに背筋を伸ばして読むだろうし、例題も全てやるだろう・・・。以上は言い訳だが、実際若手ビジネスマンにはぜひオススメしたい内容だ。

 さて、冒頭に世界は数字で動いていると書いたが、考えてみれば、人類が数字を発見するずっとずっとずーっと前から世界は存在して地球は回っていたのだから、46億年の地球の歴史の中では「数字の奴、最近ナマイキ」ってなものなのではないだろうか・・・。こんな屁理屈こねてるから数字に強くなれないのは明らかだ。

ビジネスマンのための「数字力」養成講座 (ディスカヴァー携書)
作者: 小宮一慶
出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日: 2008/02/27
メディア: 新書