『告白』


 一気に読ませる面白さだった。事件は中学校のプールで起こった。犠牲者はその学校の教師の娘、愛美ちゃん。警察の捜査の結果は転落事故だったが、母親である教師は担任をしているクラスのホームルームで、我が子はこのクラスの生徒によって殺されたと宣言し、犯人に対し報復をしたことを語る。第一章は全編、犠牲者の母であり教師の森口悠子の一人語りとなっている。続く二章以降も関係者4名によるモノローグ。刑事や探偵が事件の謎を解くのではなく、関係者がそれぞれの立場で語るうちに、事件の全貌は明らかになっていく・・・。

 著者の湊かなえは一風変わった表現方法で読者を翻弄しながら、少年犯罪、学校と親、教師のあり方、母と子関係などについて問題提起する。しかし問題は提起するものの、そこに解決策や明日への希望はない。救いの無い小説なのだが、強力な筆力によって、衝撃的かつうーんと唸らせる結末へと連れていかれる。何だかすごい。ところでこの小説、登場する何人かの大人の男たちの描かれかたが辛辣だ。無神経であったり、独善的であったり、はたまた全く役にたたなかったり。世の男性に対する著者の怨念のようなモノを感じてしまうのは考えすぎだろうか。総じて著者は人間の不完全さ、そして作中に出てくるドストエフスキーではないが人間にとっての「罪と罰」についてもういちど考えてみろと言っているような気がする。

 この小説、中島哲也監督の手で映画化されるそうだ。女教師役を松たか子、生徒の母親役で木村佳乃。どのような形で映像化されているのか、とても気になる。

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
作者: 湊かなえ
メーカー/出版社: 双葉社
発売日: 2010/04/08
ジャンル: 和書