- 作者: 梅川正美,阪野智一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2004/12
- メディア: 単行本
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確認しておきたいのは、イギリス労働党は社会民主主義政党であり、いわゆる「左翼」ではあるが、しかし日本的な「左派政党」のイメージは決して通用しないということだ。
労働党は反戦の政党でもないし平和主義の政党でもない。自国の「利益」のために必要ならば、戦争や武力の行使をも躊躇しない(もちろん党内には、平和志向や労働組合重視の姿勢を持つグループも存在する。ただしそれらは傍流でしかない)。
しかもブレアは労働党の「現代化」をはかり、組合の力を削減、生産手段の公有化という社会主義的な綱領を廃止することなどによって「ニュー・レイバー」を打ち立てた。
この本で注目したいのは、武力行使におけるブレアの理念・態度・戦略。トニー・ブレアは、
世界には、非民主主義的な政治体制があり、野蛮な行為が行われているが、もしこれらの悪事をやめさせようとするなら、その国に介入するしかない。
武力は、ときには、独裁者に打ちかつための唯一の手段
と、単刀直入に言い切る。さらにブレア・ドクトリンとも言うべき武力介入の原則──介入の理念の正しさ、平和外交の手段が介入に先行すること、物的にも精神的にも合理的に引き受けられる程度であること、戦争が長期にわたる場合の想定、そして
自国の国益が絡んでいなければならない。いかなる軍事介入も慈善事業ではなく、自国の国にとって利益になることでなければならない。介入の理由は常に介入される側の国民の福祉があげられるが、実は、その介入は、介入する国にとって利益がなければならない。
このことは、国家は(または政治家は)単なる「慈善事業」では動かないということだ。何かしらの「利益」が絡んでいること。それが条件として必要なのだ。
逆に言えば、国(など)を動かすためには、国益に照らして、何かしらの「利益を提示すること」を忘れてはならないということだ。