日本の選挙が終わったら、次はドイツの選挙である。公共放送連合体ARDの調査によると、与党社会民主党（SPD）の支持は34％、対するキリスト教民主同盟（CDU）は41%。CDU優位であることには変わりはないが、しかしSPDの支持は前回に比べ3％アップしている。
BBCは、ARDの調査を元に、シュレーダーの「ファイトバック」だと見ている。
Polls suggest Schroeder fightback [BBC NEWS]
この結果は、SPDのゲアハルト・シュレーダー首相とCDUのアンゲラ・メルケル党首のＴＶ討論会（TV duel）の影響が大きかったのではないか、と推定されている。
ＴＶ討論会の内容については「欧州経済新聞ニュース」に詳しい。雇用、税制、トルコ問題まで両党のスタンスが明快にわかる。
ドイツで首相候補者討論会：視聴率は59.7パーセント、「経営者としての首相」前面に、トルコのEU加盟問題で明暗
とくに、税制にスポットが当たったようだ。
メルケル党首が、ハイデルベルク大学のパウル・キルヒホーフ教授（元連邦憲法裁判所判事）を専門チーム（Kompetenzteam）の一員に迎え、実質的な財務大臣候補に指名したことで、税制が今回の選挙戦でもっとも熱いテーマとなった。というのも、キルヒホーフ教授は、現在、ドイツの付加価値税（日本の消費税に相当）の税率は16パーセントであるが、これを25パーセントにまで増税し、代わりに複雑な税制を一挙に簡素化することを提唱しているからである。付加価値税は、所得税のような累進性がなく、また、最終的に消費者に負担がすべて転嫁される（つまり、実質的に企業の負担分はない）ため、付加価値税の増税による税制の簡素化は、実質的に、企業や富裕層に対する減税となる。
もっとも、CDU・CSUの税制案は、キルヒホーフ案ほど大胆ではなく、付加価値税の増税は2パーセント（つまり、18パーセントへの増税）にとどまる。そして、環境税（Ökosteuer）を撤廃し、所得税を3パーセント減税し（最低税率を15パーセントから12パーセントに、最高税率を42パーセントから39パーセントに下げる）、多岐に亘る税法の例外規定（節税のトリックに使われていると非難されている）を廃止することを主張している。
なお、SPDは、付加価値税の増税に反対する一方、25万ユーロ以上の収入がある者に対しては3パーセントの所得税増税を行い、他方で法人税を25パーセントから19パーセントに減税すると公約している（CDU・CSUは22パーセント）。
それでBBCの記事に戻ると、個人的な「懸念」が記されている。
There is speculation that the CDU and its Bavarian sister party, the Christian Social Union (CSU), might be forced into a "grand coalition" with the SPD, rather than with their preferred coalition partners, the Free Democrats (FDP).
すなわち、CDU／CSU は「優先的な」連立が予定されている自由民主党（FDP）よりもSPDとの「大連立」（grand coalition）を狙っているのではないか、という憶測が流れている。
FDPは「経済リベラル」を前面に打ち出している政党。そして何といっても党首のギド・ヴェスターヴェレ氏（Guido Westerwelle）はゲイであることを公言している政治家だ。
Guido Westerwelle, the Liberals' Top Gun [Deutsche Well]
"I believe that Angela Merkel would make a very good chancellor," said Westerwelle in comments about the upcoming elections and the Union's campaign for the chancellery. "However, I also believe that the liberals can ensure that the conservatives have the courage to make the important changes the country needs."
If the FDP enters into a governing coalition, Westerwelle says the party will argue for a simplified, fairer tax system, promote new technological developments and, above all, reduce Germany's Byzantine bureaucracy.
