HODGE'S PARROT

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マルティン・シュタットフェルト『BACH PUR』



『2声のインヴェンション』BWV.772-786から聴き始めた。全15曲を18分14秒で弾ききるマルティン・シュタットフェルトの演奏を聴き終わった途端、「バイバイ、グレン・グールド1」と確信した。こんなにもスリリングなJ.S.バッハのプレイを聴いた後では、もはやあのカナダ人のレコードを「有難がる」必要はなくなった。「権威」から解放された──そんな気分だ。

プレイズ・バッハ

プレイズ・バッハ


マルティン・シュタットフェルト(Martin Stadtfeld)は、1980年ドイツのコブレンツに生まれた。1997年の「ニコライ・ルービンシュタイン国際ピアノ・コンクール」優勝、2001年のブゾーニ国際ピアノ・コンクール入賞、2001年の「バッハ国際コンクール」優勝*1。そして2004年ソニー・クラシカルよりバッハの『ゴールドベルク変奏曲BWV.988 を引っさげ鮮烈なデビューを果たす。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲

バッハ:ゴールドベルク変奏曲


デビュー・アルバムが『ゴールドベルク変奏曲』というのは、どうしてもグールドの亡霊を呼び覚ますところがある。が、シュタットフェルトの弾く、例えば『イタリア協奏曲』BWV.971の超快速演奏を聴けば、「アキレスはモグラに追いつけない」というのは、So what? でしかない。
クリアーなタッチから生まれるクリアーは音は、クリアーな録音によって、素晴らしく「クリアカットな音楽」になる。その新鮮で刺激的でクールな音楽を聴く喜びは、この上もない。

また、『フランス組曲第2番』BWV.813や『3声のインヴェンション』BWV.787-801といったバッハのオリジナルに混ざって、ブゾーニの編曲『主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる』BWV.639、『喜べ、愛する信者よ』BWV.734 や、シロティの編曲による『前奏曲ロ短調BWV.893がぶっきらぼうに並べられているのも、いい。バッハは、いつだって「現在進行中の研究」であった。短い曲ばかりなので、これらを「シャッフル」して聴くと、意外な効果も味わえる。
ピアノでバッハを弾くことそれ自体が素晴らしくエキサイティングであることを、その音楽を聴くことが素晴らしくピュアな快感であることを、このドイツのアーティストは教えてくれる。どこかにあるはずの『インベンションとシンフォニア』の楽譜を探してみようっと。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番&第24番

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番&第24番



↓ スタジオに籠るだけではなく、クルマをかっ飛ばすピアニスト=シュタットフェルトもカッコいい。
Interview with pianist Martin Stadtfeld - Bach Goldbergs,etc




オフィシャルサイトやソニーのサイト──ここには、GUCCIを着たファッションモデル=シュタットフェルトがいる──でもメディアを存分に駆使しているようだ。

[Martin Stadtfeld]