タルト・タ・タン

「ザ・シェフ」というコミックがありまして。
天才と謳われるフリーの料理人味沢匠の話なのですけど。
今日はその中の一編の話から。
 
味沢はとあるレストランに雇われる。
そこには鬼軍曹なベテランのウェイターがいた。
 
「『りんごの焼き菓子』を」
「ハイ、かしこまりました。『タルト・タ・タン』ですね」
 
その若手のウェイターと客とのやり取りを聞いていた鬼軍曹は裏へ呼び出し説教する。
 
曰く、客相手に符牒や専門用語に直す必要は無い。
何故なら、言い直された客は決していい気持ちにはならないから。
 
このエピソードは、客商売をしている私の心に深く刻まれました。
 
今では若い衆を指導するときも
「本来、割り箸は『一膳、二膳…』と数えるけど、
お客さんが『一本頂戴』と言ったときまで『一膳お入れします』と言わなくて良い
かえって、お客さんが不機嫌になってトラブルになりかねん」
と、言っています。
 
現に、先日心の中に刻んでおきながら客がおでんを注文し、
「糸こんにゃく」と言ったのに、「白滝」と復唱したら
「俺は白滝なんて頼んでねぇ!」と嫌な顔をされました。
まあ、普通は流して終わりなのでしょうけど。

何が言いたいかと言うと、色々なお客さんがいるのでわざわざトラブルを作る必要は無い、ということです。