We are built as gene machines and cultured as meme machines,
but we have the power to turn against our creators.
We, alone on earth,
can rebel against the tyranny of the selfish replicators.
- Richard Dawkins "Selfish Gene"
Jun 11(Thu), 2009
「きわめて短時間にそこそこの成果を上げる人間」の取説とその弱点
「きわめて短時間にそこそこの成果を上げる」ことを得意とするタイプの人がいる。
ギリギリまで何もしないで、期限が迫ってから取りかかるくせに、最終的な成果物を見ると平均以上のクオリティを保っている。
難問に対して絶対的な解答をもたらすことはできないが、落としどころを見つけることに長けている。
他人から見れば「どう考えればそうなるのかわからない」思考プロセスを辿って、それでもまともな形で結果を出すことが出来る。
また、思考に小回りがきくため、急な状況の変化に難なく対応できる。
「きわめて短時間にそこそこの成果を上げる人間」の特徴
まず彼らは目的からスタートする。ひとたび目標を設定すると、それに向かって誘導ミサイルのごとく突撃する。
目に見える成果をイメージし、その実現に必要なリソースを自分の経験や他人の能力、そして環境の中から素早く探し出して投入し、カオスな資源を驚くほど見事に"形"に整える。
また彼らは往々にして、多才で人脈が広い。いくつもの世界に所属し、何足わらじを履いているのかわからない。
いくつもの世界を渡り歩く彼らは、ほぼ例外なく、浸食不可能な固有の世界を持っている。そうでなければ多種多様な世界を渡り歩くうちにそのうちの一つにトラップされ、「この世界こそ俺の生きる道」と断言しそこに骨を埋めてしまうに違いないからだ。
どんな価値観をぶつけられようとも揺るがないのは、自身の世界をフィルターとして各世界を眺め、それぞれの世界の限界をなんとなく理解してしまうからだ。すなわち彼らは、「本当に頼れるのは自分のみ」ということに、本能的に気が付いているタイプなのである。
ひとつ、重要なことがある。
もしあなたの知る誰かが「短時間にそこそこの成果を上げる」人間に見えていたとしたら、それは一面的な、一つの世界からの視点に過ぎないかもしれない、という点だ。彼らの眼から見た世界は全く異なる色をしているかもしれない。
他人から見ると無関係に見えるすべてのものごとは、彼らの脳内では一続きの成長プロセスに組み込まれ、統合され、経験を消化した後に他の世界へと応用される。そして、ここに彼らのパフォーマンスの秘密がある。
繰り返しによって、彼らの能力はくるくると螺旋を描きながらじわじわと上昇しているのだ。
したがって、彼らに「謎な人」というレッテルを貼らせる原因となる、いつの間にか能力が向上していたり、有用な人脈が広がっていたり、思考が洗練されていたり、いともたやすく別の価値観を取り込んだり...という現象は、何のことはない、他の世界で得てきたものを使っているだけのことだ。
くるくる回って進む螺旋において、ある世界を去り、次回その座標に到達する時、世界の中にいる人からは連続的な時間に感じられても、螺旋の上を進む人にとっては一周ぐるりと"回ってきた"後なのである。
このことは、意識的に所属する世界の枠を超え、その人個人にフォーカスしない限り、理解することは出来ない。
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「きわめて短時間にそこそこの成果を上げる人間」の取扱説明書
まず、彼らは"何ではない"か。
彼らは、コツコツと同じテーマに取り組み、その結果としてブレイクスルーを起こす遅咲きタイプではない。
「この短期間でここまでできるのなら、もっと時間を与えてやればさらにすばらしい成果を出すに違いない」と思ったら大間違いである。
彼らのモチベーション/能力というものは、デッドラインから逆算した「発動ライン」を超えた瞬間から指数関数的に上昇する。HPゲージが赤色に変わってから本領を発揮する。それまでに費やされた時間は振り返ってみると誤差のようなもので、時間を与えれば与えるほど無駄になる。
この「発動ライン」はいわば本能的に備わっているものであるらしく、状況に応じてほとんど直感的に行動パターンを変える。
また、何でもそつなくこなせる器用なタイプ、というわけでもない。
なぜならば彼らのパフォーマンスはモチベーションに大きく依存し、「気が進まない」ことには時間を割こうとしないからだ。
「やりたい」と思ったこと(そしてたいていの場合「やりたい」対象が幅広い)にまんべんなく手を出し、各分野で「そこそこの成果」を上げることは出来るが、
別に要領が良いわけではないので、本人が「やりたくない」ことをやらせても、アウトプットの質には期待できないのである。
以上を踏まえた「扱い方」
彼らは短時間にそこそこの成果を上げることを得意とする一方、長期的な戦略を立て、かけた時間に比例した成果を出すことが非常に苦手であり、これは生き方・体質レベルまでしみこんでいるために、意志によって調整することは非常に困難だ。
そこで彼らをうまく使うには、まず何より、目的を与えてやることが最重要事項となる。
彼らは目標が設定されないルーチンワークが死ぬほど嫌いである。そのため、なるべく短期的かつ具体的に、求める成果を明らかにしておく必要がある。なぜなら彼らは、ゴールを明らかにすることではじめて、必要な資源を検索し始めるからである。
また、彼らは全貌の見えない仕事がルーチンワークと同じくらい嫌いである。
今自分が何をしているのか、全体の中のどこに位置するのか、いまこの瞬間は一体どんな価値を生んでいるのか。これを知らないと不安に押しつぶされそうになる。
そこで、関わってもらうプロジェクトの全貌を包み隠さず知らせておき、場合によっては前述の短期目的を無視しても良いことを伝え、出来る限りの自由を与える。
そうすることで、指示を与える側には想像も出来ないような解決を、異世界から持ってきた価値をチューニングすることで実現してくれる可能性が高まる。
そして、彼らを一つの場所に留めておかないことも重要だ。
前述の通り彼らは「他人から見ると無関係に見えるバラバラなものごとを統合して扱い、各世界の経験を他の世界へ応用する」ことに長けている。
一方でコツコツと同じテーマに取り組むことを非常に苦手とするため、本能的に他の世界に顔を出すことを求め、バランスを保っている。
ここで「集中」させるために他の世界との交流を絶ってしまうと、バランスを崩し、「そこそこ」の結果すら出せない無能な人間に成り果てる。
彼らは自由であればあるほどその能力を発揮し、彼ら自身が好む世界において価値を生み出すことが出来るタイプなのである。
彼らの弱点と限界
以上のような能力を持つ彼らには、弱点とも言うべき、致命的な"限界"がある。
短時間に能力を発揮するスプリンターである彼らは、いわば「おいしいところ」だけを使って成果を出すため、逆に見れば泥にまみれてものごとをイチから経験していくスキルに欠けている。泥にまみれるスキルに欠けた人間は、いつも綺麗な上澄みだけを掬って、わかったように物事を語り、そして行う。
こうしたスタンスは、他人から、特に実際に「泥にまみれて」いる人間や、回り道して苦労を重ねてきた上の世代から、総攻撃を食らうことが多々ある。そういう人たちは「きわめて短時間にそこそこの成果を上げる」彼らの姿を見て、自分の生き方や人生を否定されたような気になり、プライドを守ろうとして必死に反論するのである。
「泥にまみれろよ」「若造が知った風な口をきくな」「そんなものは虚業だ」「やったこともないくせに」といった具合に...
これらの指摘に一面の正しさはあることは確かだが、上澄みを掬うスキルに特化した彼らに対して回り道を強要するのは、致命的な機会損失に他ならない*1。「きわめて短時間にそこそこの成果を上げる」彼らは、風当たりの強い人種でもあるのだ。
そして最後に、彼らの致命的な弱みは、いつまで経っても精神的な充足を得ることが出来ない所にある。
「自分にないものを求める」という人間の性質に漏れず、上澄みを掬うことが上手な彼らは、特定の世界において「選択と集中」を行ったプロフェッショナルにあこがれる。
あこがれつつも、プロフェッショナルとの間に超えられない壁があることもわかっているのが彼らという人間である。プロフェッショナルを横目に、多様な世界で「そこそこの成果」を残し、たまに「革新的な異分野融合」を成し遂げながら、生きて行く。
そうしてたくさんの世界に足跡を残しながらも、本人は永遠に「これでいい」と満足することなく、いつのまにか消えていくのである。
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*1:逆に、「きわめて短時間にそこそこの成果を上げる」ことに優れたライバルの足を引っ張りたいときは、これらの批判を行うといい。政治的に正しいうえ他者の支援も受けやすいため、効果敵にライバルの強みを潰すことが出来る
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