8月3日 マウナロア登山記2 登山ルート、往路

登山計画、ルート
今回、登山したマウナロアの気象観測所からマウナロア山頂までの登山計画を図示してみましょう。(この概念図は、登山後にカシミール3Dで描画したもの。登山時は、USGSの地形図を印刷してフリーハンドで書き込んだものを使いました。)

ハイキングガイドや、Webでの登山記録をみると、マウナロアの気象観測所からオブザーバトリートレイルを使ってノースピットまで、そこからサミットトレイルを使って頂上までというきわめてアバウトな記述のものがほとんどです。今回、単独行なので、色々調べて、以下のことが分かりました。

  • 頂上カルデラまで登るオブザーバトリートレイルには、斜面が急な旧道と、比較的緩やかな新道がある。
  • カルデラに沿って頂上方面に向かうトレイルには、噴火口近くのサミットトレイルと、少し下を走る(ジープ道を兼ねた)ノースピットトレイルがある。
  • ノースピットトレイルは、頂上までは続いておらず、旧気象観測所のところで切れている。

今回の登山計画では、まず、オブザーバトリートレイルの新旧道の分岐までは、高所慣れのため自分のいつものペースよりもゆっくり登る。分岐到達時に余力十分であれば旧道、苦しければ新道で登る。どちらにしても、サミットトレイルまで行かず、ノースピットトレイルを使って旧気象観測所まで行く。そこから、サミットトレイルに合流して頂上へ。頂上までは目標4時間。朝9時には登頂。9時半頃頂上を出て、サミットトレイル又はノースピットトレイルを下り、オブザーバトリートレイルは、登りで使わなかったほうのトレイルで下山。下り元気があれば小走りで目標3時間。12時半に車に戻り。午後2時半頃コンドミニアム着です。到着時間の遅れは、随時、携帯電話でコンドミニアムの留守家族に連絡する予定です。他の方の登山記録に比べて、タイムが速すぎるとは思いましたが、ノースピットトレイルが期待通り(楽な)トレイルで、何とか余力を残して得意の下りに入ればなんとかなるのではないかと思っていました。

出発〜オブザーバトリートレイル
出発は丁度5時。まだ、道は真っ暗。ヘッドライトをたよりに気象観測所脇のジープ道を西に向かいます。一番参考になると思ったマウナロアのトレイル解説のWebページでは測候所から0.3マイル、500m弱で登山道の入り口のはずだったが見つかりません。登り口かもしれないと思ったところで10m位登ってみましたたが標識やケルンらしきものは見たりません。5時12分700m以上行ったところでやっと標識発見。やはり、Webページの情報を鵜呑みにするのは危険だと認識しました*1。まだ、足元はヘッドランプの必要な明るさですが、トレイルの目印になるケルンは明瞭なのでオブザーバトリートレイル登山開始です。風は左横から吹きつけます。靴下を手袋代わりにしている手もかじかんできました。高所だけあって、息はすぐに切れますが頭痛等高山病の兆候は全くありません。最初から飛ばすと高山病が怖いので、慎重に大きく息をしながらゆっくり登ります。左手、東側がぐんぐん明るくなり6時ちょっと前に稜線から朝日が顔を見せました。振り返るとマウナケアも真っ赤。

その左後ろにマウイ島の最高峰ハレアカラが雲の上に突き出ています。西をみると、フアラライの頂上の墳丘がよく見えます。絶景。しばらく、休止です。登り始めたら頂上のほうで緑色の光が見えたような気がしました。朝日の中を順調に登ります。(ピンボケ写真ですが、下は登山中のMクーの影です)

6時23分、岩戸のところまで着きました。

さらに順調に高度を上げ、6時50分に新道と旧道の分岐と踏んでいた場所で旧道を探します。

体調十分なので、当初の予定では旧道で登りたかったのですが、旧道のケルンは見つからず、仕方が無く新道を登ることにします(実際には、分岐は、岩戸のところでした)。しばらくジープ道を歩いた後、7時頃にオブザーバトリートレイルは右側に道を分けます。ここは、多分、USGSの地形図で”CRACK”と書いてある筋のところです。オブザーバトリートレイルはほとんどが、溶岩流の上を歩きますが、ここの部分は細かい砂利、それもグリーンサンドビーチと同じカンラン石の岩や砂が広がっています。砂利の上のトレイルなので踏み跡が残り、道を間違えることはありません。(GoogleEarthの衛星写真でも微かに登山道が見えることを帰ってから確認しました。)緑の砂は、肉眼ではきれいに見えたのですが、写真にはうまく写りませんでした。

ノースピットトレイル
オブザーバトリートレイルの新道をもうしばらく登ると7時45分、ジープ道が現れました。標識通りオブザーバトリートレイルの終点まで行ってサミットトレイルを使うのであればまっすぐ。USGSの地図でノースピットトレイルと書いてあるルートを使うのであれば右折です。どの登山記でもサミットトレイルで苦戦したことが書かれているので、リスクはありますがジープ道を右折、即ちノースピットトレイルを使って時間短縮を目指しました。このトレイル、それまでのオブザーバトリートレイルより緩やかで、特に最初のうちはアップダウンも少なく、何だかハイキング気分。気温も段々上がってきて、心地よい風が吹いてくる。斜度は無くても、歩行速度は出るので高度計を見ると、10mまた10mと調子よく高度は稼いでおり、お手軽ルートとしては大成功です。イザベラ・バードさんの「日本奥地紀行」では、

日本人は、話し相手がいないと調子はずれのぞっとするような歌を独りで口ずさむものである

と書いていますが、私も日本人。歌いはしませんが、意識せずにメロディが口をついてきます。少なくてもこの20年以上聞いたこともないメロディ*2が、自然と出てきたのには私自身驚きました。並行して走るサミットトレイルのケルンも時々見えます。8時丁度に右側から旧道の交差がありました。これも無視して直進です。

高度計で4000mを越えるころから徐々に疲労が出てきました。ノースピットトレイルも、段々傾斜が急になり、こんなところどうやってジープで通れるの、と疑問になるようなごつごつの岩場もあります。このトレイルの終点、旧気象観測所は、Google Earth衛星写真では真っ白で目立つはずでしたが、トレイルからは、まったく見えません。前の丘に人工物のT字のアンテナのようなものが見えてきて近くまで寄ってからやっと、そこが旧気象観測所だと分かりました。8時46分着。そこからサミットトレイルまで最短距離では100m位ですが、斜めにサミットトレイルと合流するように登りました。Google Earthの写真でこのあたりは登りにくいアア溶岩ではなく、パホエホエ溶岩であることは確かめていたので道はなくても難なく登れます。

サミットトレイル〜頂上
9時5分。ついに稜線にたどり着き巨大なマウナロアの山頂カルデラ、モクアウェオウェオを目の当たりにしました。カルデラは思っていたよりも深く下をのぞくと目が眩みます。また、溶岩湖だったところは深緑に見え、平面なので上からだとカルデラ湖のように見えます。小休止後、サミットトレイルを辿りましたが、さっそくサミットトレイルがなぜ「いやなトレイル」かがすぐに分かりました。地図上は、カルデラにそってトレイルはまっすぐ書かれているのですが、実際には、30m位の単位で左右に曲がっています。理由は、登山道として不適なアア溶岩流を避けるまたは一番細いところを渡るためなのですが、そのたびに、少し下っては登るという繰り返しになります。このときは、GPSで頂上まであと何mというのが分かっていたので何とか頑張れました。そうそう、このあたりで爆弾が破裂するような音を聞きました。マウナロアとフアラライの鞍部にある軍事基地の演習でしょうか。今回の登山行で聞いた唯一の人工的な音でした。最後ヘトヘトになりながらも頂上と思われるところに到着。GPSによれば、ここが頂上なのですが、ケルンにもどこにも山頂だという印はありません。もう少し南の方が高そうに見えるところがあります。50m位、少し先に行ってみましたがケルンが無いのでここが頂上だと決めました。

9時28分。予定よりも30分ほど遅れですが、まあまあのペースで念願のマウナロア登頂です。頂上は、カルデラのすぐ縁。カルデラは大きすぎて、写真にうまく収まりません。(複数の写真をつなぎ合わせてみましたが、今ひとつ)

ここまで、誰にも会わず、ヘリコプターも見かけませんでした。今一つ思考能力が減退しているのと息は少し荒い、という自覚はありますが、頭や足の痛み等はありません。コンドミニアムの家族ももう起きていると思うので、ここで電話をかけてみました。携帯電話のアンテナ感度は5個中、3個立ちますが、通じません。これが復路に大きく影響が出てくることになるとは、このときは思いもしませんでした。

*1:ですから、マウナロアに登ろうとする方は、このWebページの情報も鵜呑みにせず、自分でしっかり調査すべきです

*2:古い米国映画「オズの魔法使い」でジュディー・ガーランドが歌っていた曲ですが、有名な「虹のかなたに」ではなくて、オズの国を目指して従者たち?と歩いているときに歌っていた曲です。曲名は忘れました。