Stan Kenton Without His Orchestra スタン・ケントン / Solo
「ひとり上手と呼ばないで」と中島みゆきは歌った。
スタン・ケントンは1940年代に
スイング、ダンス一辺倒だったビッグバンドジャズに
ラテンジャズの荒々しさと
近代クラシックの複雑なスコアを持ち込んだ才人。
生涯ずっとビッグバンドと共にあり続けたひとが
一枚だけ作ったソロ・ピアノのアルバムがこれ。
アーティスト名の“without”にご注目を。
デューク・エリントンですら、
ピアノ・トリオのアルバムを3枚作っているのに、
ケントンは強情というか何というか、
きっと彼の中で自分がひとりでピアノを弾いていい
しかるべきときを待っていたのだと思う。
“ひとり上手”になるときを見計らっていたのだな。
ベイシー、エリントンもそうだが、
ビッグバンドを率いるひとのピアノは
鍵盤を叩くタッチが普通より強い。
荒っぽいのではなく、押しが強いというのだろう。
その“押し”が、
まるでツボのマッサージを受けているような
気持ちの良さに通じるのだ。
耳の肩凝りになったときは、
このアルバムは欠かせない。(松永良平)