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2008-01-14 ミルコン / アナルジェシックワールド このエントリーを含むブックマーク

Hi-Fi-Record2008-01-14

「もしもし、●●と申しますが、松永さんいらっしゃいますか?」


「はい」と答えて、ちょっと緊張する。

心当たりのない女性からの電話。


だが、次の瞬間、そのこわばりは崩壊する。


「わたし、ミルコンです」


ミルコンという日本人女性アーティストが

宅録を駆使してカセットテープでリリースしている作品を

ぼくはバンブルビー・レコードを通じて知った。


バンブルビーは

ぼくが発売に関わったトム・アルドリーノの

「ブレイン・ロック」をリリースしてくれたレーベル。


トムがサンプルとしてもらったバンブルビー作品の中で

もっとも興奮して聴いていたのがミルコンだった。


その、

今までカセットしか作ってこなかったミルコンが

一念発起して初めてのCDを作った。

それを是非ハイファイでも扱ってくださいとの電話だったのだ。


年末、

北九州からひとりで

彼女はCDを持ってやって来た。


ジャケットのイラスト(彼女を描いた絵)が

素敵ですねと言ったら、

「好きな画家のおじいさんに描いてもらったんです」と

彼女はこともなげに言った。


彼女が帰った後で、

その画家の名前を調べてびっくりした。


その人、森山安英は、

60年代末の前衛芸術運動にあって

北九州を拠点に活動した

知る人ぞ知るアーティスト。


彼が率いたパフォーマンス・グループ「集団蜘蛛」は

糸井貫二や「ゼロ次元」など、

前衛の中でも極北にあるような名前も引き合いに出されるほどの存在で、

あまりに過激な活動がたたって解散したとの記述すらある。


現在は絵画作家として

穏やかに活動しているということなのだが、

ミルコンをモデルにしたイラスト、

あらためてしげしげと見ると、

何かに見とれながら底のない場所に

うっかり足を踏み入れてしまったような感覚をもよおす。


手の込んだ罠ではなく、

ナチュラルに底が無い。


その不確かな美しさはミルコンの

音楽とも通じ合うものだ。


見開きのジャケにも何やら絵があるかもと思い、

開けてみてさらに驚いた。


いやはや、

ミルコン、

そして、

森山安英、

そして、

北九州、

おそるべしと

少しの間、感じ入ったのだった。(松永良平)


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