ロドリック「アイデアと利害 〜利害を形作るアイデア〜」


●Dani Rodrik, “Ideas over Interests”(Project Syndicate, April 26, 2012)

Interests are not fixed or predetermined. They are themselves shaped by ideas – beliefs about who we are, what we are trying to achieve, and how the world works. Our perceptions of self-interest are always filtered through the lens of ideas.
(「利害」(Interests)というのは不変でもなくあからじめ決められているわけでもない。「利害」は「アイデア」(思想、観念)―「私たちは一体誰であるのか」「私たちは一体何を達成しようとしているのか」「この世界は一体どのように機能しているのか」といった論点に関する信念―によって形作られているのである。自己利益に関する我々の認識は常にアイデアのレンズ越しに形作られているのである。)

So, where do those ideas come from? Policymakers, like all of us, are slaves to fashion. Their perspectives on what is feasible and desirable are shaped by the zeitgeist, the “ideas in the air.” This means that economists and other thought leaders can exert much influence – for good or ill.
(それでは、こういった(自己利益に関する我々の認識を形作っている)アイデアはどこからやってくるのだろうか? 政策当局者は―政策当局者に限らず誰もがそうなのだが―流行に囚われがちである。すなわち、一体何が実現可能であるのか、望ましい選択とは何なのか、といった問題に関して政策当局者が抱く認識は「時代精神」や「流行りのアイデア」によって形作られるものなのである。ということはつまり、経済学者やオピニオンリーダーは(アイデアの形成を通じて)善かれ悪しかれ(政策当局者ひいては政策形成過程に対して)多大なる影響を及ぼし得るということを意味している。)


自らの利益になるように行動する、あるいはインセンティブに従って行動するのが人間の典型的な行動パターンだとすれば、人間の行動を変えるためには彼らが直面するインセンティブを変える―個々の行動に伴う便益やコストに変更を加える―必要がある、ということになろう。そしてインセンティブを変えるためには個々のインセンティブを形作っている制度(institution)を変える必要がある、ということになろう。しかしながら、「自分にとっての利益とは何か?」(自己利益に関する認識)というのはあくまで主観的なものであり、利害はアイデアによって形作られているとすれば、人間の行動はアイデアの変更に伴っても(アイデアの変更に伴って「認識されたインセンティブ」(あるいは、インセンティブに関する認識)が変化することで)変化する可能性がある、ということになろう。つまりは、institutions matterであると同時にideas matterということ。
余裕があれば全訳したいのう。