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The Starry Abode.

2011-11-06 Sun Alba Mediterranea

『形成の書』(Sepher Yezirah, translated by W.W.Westcott)翻訳終了

ちょうど文化の日に10年来の宿便が一つ片付きました。ご協力いただいた皆様に感謝いたしますと共に、改めてご叱責、訂正要求、等々、いただければ幸いです。

http://hocuspocus.sakura.ne.jp/bkshlf/sephery/index.html



以下、ざっくばらんに感想を。

8年ほど前に序文と『知恵の32の小径』の後半部を残して訳し終えていたのだけれど、

  1. 「8vo」(Octavo)とか4to(Quarto)などの、本の版型を表す記号の意味が判らなかった。
  2. 昔の偉い人の引用が多くて訳すのが面倒臭かった(長い上にやたらと勿体ぶった書き方で読みにくい)。
  3. 『形成の書』の成立に至る歴史的経緯にあまり興味が無かった。
  4. 仕事その他が忙しかった。

等々の理由でほったらかしにしてあった。昨年、少し暇が出来た時に『知恵の32の小径』をやり終えたが、その後はまた放置していた。しかし、今年の夏頃にふと上記1.について検索したらあっさり答えが見つかったので、仕事の合間を縫って序章を訳してみた。

やってみると、以外と面白かった。事実上のカバラ最古の文献なので、その由来を辿ると、ほぼそのままカバラの歴史になるのだ。そして、ルネッサンスの時期にこの書が印刷されて出版されたのが、イタリア、或いはドイツの南東部*1から東欧(ポーランド、ウクライナなど)の都市だというのも興味深い。しかも現代日本のタレント本の出版などとは重みが違っている。大変高価な本を、その土地の学問の府である大学の教授が編集(或いは翻訳したり解説を付けたり)して発行するのだ。その土地の人脈や文化を抜きにそんなことが出来る筈がない。

ドイツはともかくとして、東欧とかイタリアは東ローマ帝国やアラビアの影響を大きく受けた場所である*2ローマ帝国による地中海支配の中で融合された諸文化の影響を受けながら弾圧されたユダヤ人の文化が、所謂西ローマ帝国崩壊後のヨーロッパの『暗黒時代*3を超えて継承されてきたということなのかもしれない。

イタリアの都市がルネッサンス期に担う役割は歴史の教科書に載っているくらい常識であるため、その辺りを追った魔術史研究については既に前世紀に一般向けの本*4まで出ている。これからは東欧についてもそういう資料が沢山出てくれると個人的には嬉しい。*5

そういう目で『黄金の夜明け団』の歴史を見てみると、発足当時の彼らがユダヤ・キリスト教的隠秘学の歴史において「ど田舎であるブリテン島の新興団体」以外の何物でもなかったことが良く判る。『箔』を付けて結社の体裁を整えるには、ヨーロッパの文化の中心であるドイツの魔術結社の認可状がどうしても必要だったのだ。そう考えると、きっかけさえ在れば、100年後に日本が世界の魔術文化の中心になっていることだって充分あり得るんじゃないだろうか。*6

それにしても、ここ10年でWikipediaGoogle MapsYoutubeなどの便利なコンテンツが増えてきたお陰で、資料を探すのが本当に楽になった。昔は図書館の歴史の棚を引っかき回さないと得られなかったような東欧の都市の昔の名前や、日本で手に入る地図には載っていないような小さな街の情報などが、机の上で簡単に判るのだ。おかげでPCさえあれば、私のような語学力無しの、文化人類学言語学のド素人でも仕事の合間に翻訳が出来るようになった。*7

あとはやる気の問題だ。

著作権が切れている古典で訳されていないものはまだまだ沢山ある。もしも出版社の目に止まってベストセラーにでもなれば、一攫千金だ。*8

若い魔術志願者には、勉強がてら、魔術書の翻訳をすることを是非ともオススメしたい。*9

[]Alba Mediterranea by Arti e Mestieri

D

*1イルミナティの発祥の地ババリア地方とか。

*2:トルコとウクライナは黒海に面しており、貿易も行われていた。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E6%B5%B7

*3:最近の見方では、文化が完全に停滞していた訳ではない、ということらしい。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9A%97%E9%BB%92%E6%99%82%E4%BB%A3

*4:これなんかが入手しやすくて良いと思う。

魔術と錬金術 (ちくま学芸文庫)

魔術と錬金術 (ちくま学芸文庫)

*5:私が知らないだけなのかもしれないが、歴史的に勝者であるドイツやフランスの文化と比べれば、少なくとも日本にはあまり紹介されていないように思う。

*6:スピ関係は結構日本に集まってきているんじゃなかろうか?20世紀後半のスピ関係の受け皿だったアメリカが段々保守化してきていることも影響しているのかもしれない。

*7:翻訳としてのレベルは低いけれど。

*8:あくまでも可能性の話です。

*9:あくまでも私の個人的な経験を元にお奨めするだけです。実行については自己責任でお願いいたします。

tenfingerstenfingers 2016/03/01 12:33 うひょー!これはとてもありがたい翻訳です(^ω^≡^ω^)シュビシュビ
ありがとうございますー!私はビジネスとロシア武術システマの関連で聖書毎日読むようになりましたが、タルムードとカバラーという二つの場と力については全然知らないのでこれは助かります〜。

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