days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

ありがとう、刑事コロンボ


3年ほど前にアルツハイマー病を患っていると発表があったピーター・フォークが亡くなりました。
83歳でした。
この人、映画にも脇役で色々出ていますが、やはり往年の名作ミステリ・ドラマ『刑事コロンボ』のコロンボ役が生涯の大当たり役です。


NHKで放送されていたとき、私は小学校低学年だったかと記憶しています。
放送時間が遅かったので、観ていたのは両親のみ。
私と弟は21時にはベッドに放り込まれていたので、見られませんでした。
小学校高学年になると、2週に1度、下馬図書館に本を借りに行っていたので、ノベライズ本を次々と借りていました。
借りる本3冊の内、1冊はコロンボ、という場合が多かったです。
ウィリアム・リンク&リチャード・レヴィンソンって凄いミステリ作家だなぁ、と思ったものですが、後に石上三登志らミステリ好きな人たちが脚本を元にノベライズしていたと知りました。
つまり日本限定本。
まぁでも面白かったので読む方は全然問題無かったですけれどもね。


小学校高学年の夏休みになると、日本テレビ水曜ロードショーで故水野晴郎解説による放送がされ、これが楽しくて仕方ありませんでした。
時には本を先に読んで予習してから、本と比べっこしながら観たり。
でもこれだとラストの驚きが無くなるという大きな欠点がありましたが(^^;


多くの子供と同様に私もシャーロック・ホームズに憧れていました。
しかし普通のミステリ、つまり最初は犯人が分からないものと違い、最初に犯人と犯行が描かれ、探偵がそのトリックを突き崩すと言う、いわゆる倒叙ミステリに初めて触れたのがコロンボでした。
ほぼ毎回、ラストのコロンボの引っ掛けに驚いたものです。
特に忘れられないのが、ディック・ヴァン・ダイクが主演した『逆転の構図』。
コロンボを見始めた最初期とあって、ラストには驚きましたね。


大人にとっては社会的成功を収めた(主にワスプ)を相手に、イタリア系という白人の中でも差別されている方の、しかも庶民が最後にやっつける、というのも面白さの1つだったのでしょう。
さらにネチネチとイヤらしいコロンボよりも、犯人の方が知性も教養も、時には美貌も兼ね備えていたので、そちらを応援していた人が多かったようです。
しかしまだまだ子供の私にはこんな事情など気付きもせず、ひたすらコロンボを応援していました。


ぼさぼさの髪によれよれのコート、褪せて何色だか分からないちっこい車(父にあれがプジョーだと教わりました)。
犬と言う名前の、飼い主そっくりのもっさりした犬。
あれだけ事件を解決しているのに、まるで昇進していないらしい貧乏振り。
コートのポケットには吸いかけの葉巻が常に入っているようでしたから。
飲み込みが悪そうな言動で相手を油断させ、帰ると見せかけて「そうだ、ひとつ忘れていた…」と不意打ちを食らわす作戦。
それにふと見せるさりげない優しさ。
コロンボは日本版では「警部」となっていますが、警察評論家でもあった水野晴郎によると「警部補」だった、などと言う知識も仕入れて喜んでいたものです。
如何にも強そうなホームズとは違いますが、紛れも無く私のアイドルの1人でした。
コロンボが?それともピーター・フォークが?
それは今でも分かりません。
そんな分け方が無意味な位に、コロンボとフォークは一体化していたのです。


ウィリアム・フリードキンの強盗コメディ『ブリンクス』とか、ヴィム・ヴェンダースの『ベルリン/天使の詩』等の映画も観ましたし、特に後者は俳優ピーター・フォークは実は天使だった!という楽しい仕掛け。
片手を挙げるいつものコロンボの格好もしてそのまんまのイメージでした。
小池朝雄の声と共に、私の中では記憶されていく事でしょう。
合掌。