days of cinema, music and food

徒然なるままに、食い・映画などの情報を書いていきます。分館の映画レビュー専門ブログhttp://d.hatena.ne.jp/horkals/もあります。

Steve Jobs

ダニー・ボイル監督&アーロン・ソーキン脚本作『スティーブ・ジョブズ』を鑑賞しました。
凡作との評判だった2013年の同名伝記映画は未見なので比較はできません。
こちらは鬼才ソーキンだけあって大胆な舞台劇風の脚色が面白かったです。
1984年のマッキントッシュ、1988年のNeXT Cube、1998年のiMacと、それぞれのプレゼンテーション直前の数十分に焦点を当てた異色作になっていました。
プレゼンテーション本番前の慌ただしい舞台裏という興味深いお膳立てに、娘の認知問題も含めた公私共々のトラブルを緊迫感たっぷりに描いたドラマになっています。
ジョブズの傲慢さ、冷酷さ、頭脳明晰やだけでなく、時代と共に外見だけではなく内面が少しずつ変容していく様も描き、ソーキンの脚本は抜かりありません。
マイケル・ファスベンダーミヒャエル・ファスベンダー)は本物のジョブズに全く似ていないイケメンですが、雰囲気は上手く出ていたし、そんなことよりも迫力に魅入ってしまいました。
広報担当のケイト・ウィンスレットとも相性が良かったです。
これは2人共に演劇風の演技に近い為でしょう。


ダニー・ボイルの演出は『スラムドッグ$ミリオネア』『トランス』と言った作品で見せたようにテンポも快調。
演劇風の脚本だがせせこましくない、ちゃんとした映画になっているのはさすがです。
かように面白く観られたのですが、観ていて胸に迫る映画ではありませんでした。
脚本も演出も演技も立派なのに、です。
そこら辺はドライな主人公同様で、終幕に人間性に関する希望を抱かせる辺り、ちょっと綺麗ごとにまとめた感があったからかも知れません。
ともあれ見応えある映画なのは確かです。
一見をお勧めします。


それにしても冒頭の邦画の予告の数々にはうんざりさせられました。
皆、泣いたり叫んだりわめいたり。
ああいうのを見せられると、途端に観る気が失せます。
邦画はプロがプロらしく振る舞う『オデッセイ』を見習うべきだよ。