days of cinema, music and food

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The Shallows


ロスト・バケーション』レイトショウ鑑賞with近所のM田さん。


誰も知らないようなメキシコの秘密のビーチでサーフィンを楽しむ医大生ナンシー(ブレイク・ライヴリー)は、突如巨大ホホジロザメに襲われる。太ももを噛まれて深い傷を負った彼女は、命からがら近くの岩場に逃れる。満潮になると岩場は海に飲み込まれてしまうし、サメは執念深く近くを周回している。浜辺まではたった200メートルなのだが、満潮が刻一刻と迫る。


まさしく孤立無援の絶体絶命な状況下で、如何にして危機を脱するのか。そう考えると、これは『ジョーズ』の後継者というよりも、『ゼロ・グラビティ』を思わせるスリラーと考えた方がしっくりくる。終盤までブレイク・ライヴリーを精神的にも肉体的にも痛め付けて、観ているこちらも痛い思いをし、そこから転じての終盤の活劇的展開には胸躍らされるのだ。だがこの「The Shallow」、つまり「浅瀬」という原題が皮肉な映画は、紛うこと無き正統派サメ映画でもあった。水中からいきなり出現して人に襲い掛かる場面の呼吸にはドキリとさせられるし、水の中での「サメに食われる前に安全圏まで辿り着けるか」という常套場面では手に汗握らされる。スペイン出身のジャウム・コレット・セラ監督は、これまでも『アンノウン』『フライト・ゲーム』『ラン・オールナイト』といったリーアム・ニーソン主演映画でも楽しませてもらっていたが、本作でも元気な演出は健在だ。危機の最中でナンシーは医大生としての知識を駆使して難所を潜り抜け、また観察眼と知恵と勇気を駆使して反撃に移るのだ。前半は母を亡くしたナンシーの心の傷を描きつつ、サーフィン映画としても楽しませ、やがてナンシーの再起によっての逆転攻勢へとなだれ込むのが楽しい。単純なプロットを引き延ばすことなく86分にまとめ上げていた。デジタル撮影ならではの序盤の映像美も見どころの一つ。もっともサーフィン場面はもっと長回しで観たかったが。あのコマ落とし風映像はジャウム・コレット=セラの特徴か。スマホ画面の使い方がコレット=セラの前作『フライト・ゲーム』同様にお洒落だった。避難場所の岩場が満潮に飲み込まれるまでの時間をカウントする時計の表現もそう。ちょっと『シャーロック』入ってるのかな?


出ずっぱりのブレイク・ライヴリーも良かった。母の死に打ちのめされ、人を救えないこともある医学に疑問を持ち、旅に出て母の思い出の場所であるビーチで波と戯れるという、現実逃避的な主人公がどうなるのか、という感情表現も良かったが、最初から最後まで出ていても見飽きないのはやはりスターだ。ビキニ姿のスタイルも見所の1つとなっているくらいなのだから。でも「美人女優」からすると腰が引けるようなGOプロどアップ映像や、後半の顔色が悪くてしかも傷だらけ、なども堂々とこなしていて、スターの前に当然のように女優だった。彼女自身のキャリア構築も見据えての登板もあろうが、日本のスターだったらこうはいかないのだろうな。


以下、メモ書き。


○『キャスト・アウェイ』のウィルソンのような相棒である怪我をしたカモメの使い方には、もう一工夫欲しい気もしたが、限られた時間内で野生鳥類が簡単に懐いて活躍する訳にもいかないので、あれくらいが丁度良いのだろう。


○サメCGIは一部を除いてかなり良く出来ていた。完全な海ロケではなく、かなりデジタル合成も使われていた感じだったけれども。海での撮影は『ジョーズ』『ウォーターワールド』などで大変だったのは有名だしね。それを考えると『ジョーズ』の映像美は凄いよ、ホントに。