寝てる間のアノ活動が記憶に大事なんですヨ

今回は、short paper二本。

Selective suppression of hippocampal ripples impairs spatial memory
Girardeau G, Benchenane K, Wiener SI, Buzsáki G, Zugaro MB. 2009 Nat Neurosci.

Disruption of ripple-associated hippocampal activity during rest impairs spatial learning in the rat
Ego-Stengel V, Wilson MA. 2010 Hippocampus.

どちらも内容はほぼ同じ。なんだけれど、一方はNature系の一流誌、もう一方は専門誌。
見事に早い者勝ちを体現したような例ですねぇ…

内容をざっくりと

空間学習をしたあとの睡眠中、とくに徐波睡眠(slow wave sleep)の間では
SWR(sharp wave ripple)という短時間のバースト発火での細胞の活動の順番が
起きて学習してた時の順番と同じであることが知られていた。

じゃあ、睡眠中のSWR中の活動を阻害したら、どーなってしまうん?
ってのをやってみたのが、この2本の論文。
結果、どちらも、タスクの成績の伸びが、阻害しない場合に比べて悪いことを報告してる。

どちらも、海馬に埋め込んだ電極でLFPをモニターして、SWRっぽいパターンを検出したらVHC(Ventrinal Hippocampal Commissural)を刺激して、一時的に海馬の活動をガッツリ阻害。
この阻害はだいたい100〜200ミリ秒続く模様。


Girardeau et al.は、動物を3つのグループに分けて、
SWR中に活動阻害するグループ、SWRからずらして活動阻害するグループ、活動阻害しないに分けて
報酬を得るためのタスクの成績の伸びを比較すると、
SWR中に阻害したグループのみ、他に比べて有意に学習が遅い事を示した。

一方、Ego-Stengel & Wilsonは、1つのグループの動物で、2種類のenvironmentでタスクを行い
片方のタスクの後にはSWR中の活動阻害を行い、もう片方では何もしない、という実験をやって
その結果、活動阻害した方のスコアの伸びが遅いことを示した。

感想とか

Girardeau et al.は、記憶の定着には、SWR中の活動が特に大事だということを示している。
Ego-Stengel & Wilsonは、SWR中の活動阻害が、記憶の内容に特異的に影響することを示している。
(尤も、阻害してしまえば、起ころうとしていた活動パターンがどちらのパターンのリプレイだったのか、そもそもリプレイだったのかすら知りようが無いけど)

この2つを突き合わせると、起きてる間に覚えたことを定着させるには
寝てる間のSWRの、その記憶のパターンが再生されることが大事なのかなー?って話になる。

ただ、どちらも行動実験のスコアの差として見てるけれども、行動中の神経活動の差は見ていない。

なんとなく、直感としては、行動中の海馬の活動パターンには、阻害した/しないで差はなさそうな気がする。
むしろ、PFC(Prefrontal cortex、前頭前皮質)あたりの活動に差がありそう。

だけど、もし、最初の行動中に形成された場所細胞が、SWR中の活動阻害でリセットされるとしたら…
そいつは超クールでセクシーだと思うなぁ。