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サイエンスとサピエンス このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2018-01-16 定住革命と通販 このエントリーを含むブックマーク

 農耕は文明の重要にして要となる発明だったのだけど、それが元で定住革命というような都市文明が生じたとされている。その農耕の奥底にある深い人間の性向は、生活必需品を手元に取り寄せておきたい、その上で生存の安定化を図りたいという根源的願望があるようだ。

果樹や穀類を定まった場所から定期的に収穫するという傾向を「手元」化と呼んでみよう。

 J.D.バナールなどの科学史家が指摘するように「道具」は手足の延長として生まれ発達した。

 石器やブーメラン、斧や矢などが人類の「手」の持つ空間的な作用範囲とパワーを拡大するようなツールであるのは読み取れる。魚や鳥を捕らえる「網」もそうだ。

獲得願望の一網打尽性と一括りにしておこう。

 ここにも「手元」でなるたけ広い空間に働きかける衝動が生きているのは確かなようだ。

さらなる空間的な制約を超えるには目と耳の届く距離を広げてゆくことだ。

 可視可聴域=可知範囲は当然のことながら物理的、身体的な制約を受ける。しかし、その制約を取り払うインフラが情報通信技術なのであろう。

 そう、手元の空間はいまや情報ネットワークを通じて網目のように地表を覆わんとしている。古代帝国の王者(アケメネス朝ペルシア帝国のダレイオス1世)が「王の目、王の耳」という名の代官を派遣して領土を支配したように、情報ネットワークを通じて多くの人びとが自分の可視範囲を拡大し、生活の充足を手元の情報端末で入手できるようなった。その象徴がamazonという呼び名だったりする。

 つまりは衣食住などに関して「手元」をぎりぎり進歩させてきた、それがインターネット通販だったりするとベタに言うとそうなるわけだ。

 「一網打尽性」と「手元」化が現代文明の技術的特徴であるとも言えるのだ。

それが農耕文明のたどり着く極限、行き着く終端として今がある。

 であれば、「amazon」は農耕の拡張子の一つなのだ。それは農耕がいかに素晴らしく根源的であるかってことであり、逆にインターネットが単に欲望の肥大した「一網打尽」の奇怪な現れであることになる。病的にブクブクと肥大し至る所に寄生根を張り巡らせ、ありとあらゆる存在に取り憑いた根毛なのだ。

 その実態は「AKIRA」の登場人物一人の末期に似る、ってことなのかもしれない。


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2018-01-14 チンパンジーのティーパーティー このエントリーを含むブックマーク

 欧米では1960年頃までチンパンジーにティーパーティーをさせていた。人気の見世物だったぞうだ。

ロンドン動物園のような公共の場所でもこんな状況だったわけだ。

 一部の進化論者はチンパンジーたちが進化して人間以上のマナーを身につけるのを心配したそうな。

イギリス風のジョークだね。


D

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2017-12-19 ドイツの巨大な隕石孔とモルダバイト このエントリーを含むブックマーク

 『鉱物』なる学芸文庫の12月新刊を読み終わったとこだ。この書籍、どうぶつ社の『宮沢賢治はなぜ石が好きになったのか』の復刊だとある。専門家の本としてはなかなか滋味豊かな書物だ。

 そこに「モルダバイト」という特殊な天然ガラスの話が出ていた。チェコのモルダウ地方で産出される鉱物だが、巨大隕石の落下による副産物だとある。

 また、産出量が少ないので高騰しているという。

 ここで思い出したのがヨーロッパの巨大隕石孔の調査結果だ。

たしか、ドイツにはネルトリンガー・リースという盆地があり、縦横20キロくらいだ。そこは1450万年ほど前の巨大隕石の残した地形だ。

モルダバイトの形成時期も同じ頃だとされている。

 チェコからは100キロ程度離れているが、衝突時のインパクトがここまで及んだということであろうか?



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2017-12-18 不気味の谷現象と近松門左衛門 このエントリーを含むブックマーク

 「不気味の谷現象」はヒューマノイドロボットの「より人間らしく作られるようになるにつれ、より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わる」(WIKI)という理論とも感性論ともなんともつかない学説である。森昌宏という一世代前のロボット工学者!の説とされている。

 最近では大阪大学の石黒教授が「ロボットが人間に近づいていくと、人は親近感を感じますが、人に非常に近づく一歩手前で「不気味の谷」に落ちるんです。」としている。

 ところでこの大阪というのが引っかかった。人形劇の文楽が生きつづける伝統があるからだ。そして、人形劇の最大の劇作家である近松門左衛門の『虚実皮膜論』というのを図らずも連想するのだ。

 「ある女性が好いた男の生き写しの人形を造らせた。それこそ毛穴や肌ツヤにいたるまでソックリに造らせたのだが気味悪くなり捨て去った」

 そんな逸話を引いて人形劇のリアルを説いているのだ。

さてさて〜日本人は過去の伝統と切っても切れないものだと感じるのだが。


D

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2017-12-16 分子の立体異方性 このエントリーを含むブックマーク

 有機化合物の光学的非対称性について、最初の発見者はルイ・パスツールだった。左旋光の酒石酸の結晶と右旋光のそれを顕微鏡で選り分けて、偏光面が異なることを示した。それが19世紀。ビオーという物理学者が予言したのだが、そのビオーの目前で実験を行い、老科学者をいたく感動させた逸話は有名だ。

 それを立体化学という視点で理論化し、つまり、立体幾何的にモデル化をした。同時に検証したのがファントホッフである。1901年最初のノーベル化学賞を受けたのは別の研究成果だったが。

 というような偉業を始めて知ったのはマーティン・ガードナーの『自然界における左と右』のおかげだ。この初版の査読者にファインマンが入っていたのは流石や。

 でもって時代がくだり、立体異性体の研究が進む。2001年に野依良治氏らにノーベル化学賞が授与されたのはまさにこの分野だったわけだ。立体異性体を工業的に合成する技術を確立したことへの評価だったのだ。

 これが著しい貢献を生み出しているのは「薬品」分野なのだ。

 麻酔剤のブピバカインは安全だということになっていたが、1979年数例の心肺停止が報告された。実は右旋光(L型)と左旋光(D型)のブピバカインで異なる副作用の出方となることが判明。L型は副作用がないのだ。現在ではLブピバカインが処方されるようになった。Darvonという鎮痛薬はその立体異性体Noradの薬効は鎮咳剤になる。

 サリドマリドもDサリドマリドは有効な睡眠薬で副作用は知られていないが、Lサリドマリドは奇形を生み出す。ところが立体異性体は安定していないという事情があるらしく、生体内で入れ替わることもあるらしい。

 これが「精神疾患」薬でも起きているのが興味深い。

Ketamineは片方は麻酔薬であり、その立体異性体は幻覚を生み出すそうだ。

 麻酔薬の異性体が幻覚剤になりうるというのは、痛みについての認識論に詳しい言語哲学者たちはどんな反応を示すだろうか?


【参考文献】

新版 自然界における左と右

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非対称の起源―偶然か、必然か (ブルーバックス)

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