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GAME NEVER SLEEPS このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2014-09-04

サンフランシスコで就活しました

というわけでちょっと前に6年務めたシリコンバレーの某老舗ゲーム会社から、サンフランシスコにある設立4年くらいのモバイル向けゲームアプリ会社に転職しました。理由や経緯はおいといて、とりあえずここではその就職活動中に感じたことを書いてみます。ちなみに僕の就活経験ですが、2001年の新卒時に日本で1度、6年前にアメリカの同じくベイエリアで1度とかなりの初心者です。前回の転職は軽い気持ちで会社に呼ばれたらそのまま面接、3日後採用でしたが、今回はそんなこと一度もおこりませんでした。

わかったこと

さっそく結論ですが、僕の今回の就職活動で学んだ一番大きいことはこれ、

  1. 自分が会社を選ぶのではなく、自分を選んでくれる会社に出会うまで面接を受けまくるしかない

追記)ベイエリアの人たち(少なくとも自分の見聞きする範囲では)がわりと頻繁に転職するのは、これも大きい理由かもなーと実感しました。つまり、必要に迫られてから就職先を探しても見つからない可能性があるんですよね。今回の俺のように。だったら、どこかのリクルーターが自分の経歴をみて声をかけてきたタイミングで移ったほうが確実かもなーと。

ついでに2つくらい挙げるなら、

  1. コンソール用ゲームの開発からモバイル端末向けに移行したことについて100%必ず絶対にしつこくほじくるように聞かれる
  2. 面接の半分以上は電話でやって、よっぽど見込みがないと会社での面接*1に呼ばれない

こんな感じでした*2。ちなみにコンソールからモバイルへの転向についてたくさんの会社で聞かれたことと僕の回答は別のところにまとめる予定です。

正直、なめてました

はじめる前までは、さーてどこの会社に入っちゃおうかなーくらいに軽く考えてました。どこかでも話しましたが、モバイルにいくかコンソールにいくかどっちにしよーかなーとか。そして実際、レジュメ(履歴書)を送った会社からはほぼ電話がかかってきました。早いところは翌日、朝だしたら当日の夕方かかってきたこともありました。もうなんか食いついてきた食いついてきた!って感じじゃないですか。

でも、スクリーニングと呼ばれる、実際に会社にいってやる面接の前段階の電話面接で落ちまくるわけです。いや、ダメだったといってくれる会社はむしろありがたいです。80%くらいは、「次があれば連絡するから」って形式で、返事を待ったままフェードアウトです。

門前払いのケース

いやー、これは地味にショックでした。それなりに自分に自信がありましたから。でもまあ落ちこんでてもしょうがないんで、ダメだった連絡をくれた人には片っ端から理由を聞きました。僕が受けた限りではスクリーニングには2種類あって、ひとつはリクルーター*3がする最低限の確認です。希望年俸、ビザ or グリーンカード、住所、遠いなら引っ越しできるか、などなど仕事以前の話をします。長くても30分もあれば終わります。このスクリーニングでダメな場合、答えはほとんどこれでした。

「ぶっちゃけあなたに見合う給料を払えない」

まー納得。キャリアも15年目となると業界で決まってる最低これくらいだろって給料もそこそこ高いわけです。デリケートな話なんでふんわり書きますが、すっごい給料さげていいならいいけど...という会社と、うちではそういうことをしないという会社がありました。

最初の電話面接で落ちること10社以上

で、次の段階のスクリーニングはその募集の主かそれに近いポジションの人がするやつで、こっちはもっと突っ込んだ質問をします。時間も45分から1時間ほどかけます。応募時に基本的な情報を入力してる場合は、いきなりここから始まることも多かったです。内容は担当者によっていろいろですが、上に書いたコンソールからモバイルへの移行についての他でおおむね共通してるのは、自分の経歴を含めた自己紹介、自分のゲームデザイン哲学、最新タイトルのゲームデザイン分析、そしてどんなゲームのどこを担当してどれくらい経験があるか、などでしょうか。志望動機もまあまあ聞かれましたが、なぜ弊社に?っていうよりはなぜコンソール?なぜモバイル?って聞かれ方がほとんどでした。で、この段階でほとんど落ちました。10社以上?いやー、へこみましたわー。聞けた理由はすべてこれでした。

「今チームが欲しいポジションにあわない」

ま、どんな理由で落とすとしてもこういうと思うんですが、いやいや、これも納得ですわ。何でかっていうと、自分も前職では人が欲しいときに面接とかしてたわけですが、欲しいポジションにぴったり合う人ってほとんどきませんでした。一応大きめな会社にいましたし、募集かけると全米から応募があるわけですが、「年俸750万くらいで、アクションアドベンチャーのレベルデザインの経験があって、コミュニケーション能力に問題のない人」って条件でスクリーニングしてもらうと、これがなかなかこない。これでも最低限のつもりです。できれば近接攻撃に特化したゲームの経験があればいーなーとか、MAYAでレベルデザインしてたらいーなーとか、今世代機(Xbox 360, PS3)の開発経験があるといーなーとかあるんですが、そこまで言っちゃうともうもうぜんっぜんこない!会社でやる面接まで進む人が1ヶ月にゼロとか普通にありました。はい。欲しいポジションに対して経験がありすぎる(=給料が高すぎる)とか、逆に経験がなさすぎるとか、不思議なほどぴったり合う人ってなかなか見つからないものでした。

電話面接で一番聞かれること

そんなわけで、募集要項にはかなり細かく希望がのってるようにみえますが、それは実は最低限であることがほとんどでした。下は2014年6月の時点でのEAのモバイル部門の応募における必須事項です*4

  • 3+ years of experience in mobile game design, 7+ years as a game designer
  • Experience with Unity strongly preferred
  • Experience with running a live service game strongly preferred
  • Prototyping and wire-framing experience
  • Strong understanding of both premium and free-to-play games
  • Strong understanding of the proper role of community in live services
  • Ability to generate and refine engaging game mechanics and themes
  • Expertise with balancing, including but not limited to, game progression, economies, and reward structures
  • Previous experience within a highly iterative environment, especially focused around touch mechanics on small devices
  • Solid understanding of usability testing best practices

で、送られてきた履歴書やカバーレター(履歴書に書ききれない応募動機などをまとめた自己推薦文)を読んでこれらを満たしてそうな人にだけ、自分のプロジェクトにフィットするかどうかの確認を電話でするわけです。面接する側も制作中のプロジェクトに関わる話なのでwebにはあまり書けませんし、受ける側も普通は書類で細かいことは書かないので、自然と電話でしか話せない開発経験の詳細についての質疑応答がものすごく重要になってきます。

自分が面接官だった経験からいうと、レベルデザインやってたと書いてあっても、実際に話を聞くとテストプレイしただけだったり、カットシーンを組み込んだだけだったりする人も平気でしますし(いや重要ですが)、少しかじったことはあっても、プロジェクトによって役割がバラバラで結局何が得意なの?って人も多くみました。

自分の経験はコンソールのメインストリームには売りにくかった

さて、今回は面接を受ける側です。各社のリードやディレクターと電話面接をしていてすぐに痛感したのは、僕の経験が現在のビデオゲーム・モバイルゲーム業界でそんなに使いやすいものじゃないことでした。

まっさきに理解したのは、FPS/TPS問わず、シューターの開発にはまず呼ばれんなー俺、ということでした。彼らが聞くのはシューター開発経験の有無じゃなくて、「どんなシューターの」「どんなパート」をやってたかでした。ちなみに僕のリードデザイナーとしての経験は、今や絶滅寸前のコンバットアクションゲーム2作と、モバイルゲーム2作です。

「カバーシューターは?」
「ないです!」

「マルチプレイヤーモードのリードを探してるんだけど経験ある?」
「オンラインRPGの下っ端なら!」

「FPSとTPS両方やったことあるといいんだけど」
「高速で走りながら撃つオートエイムの○○○ってゲームなら!」
(カチャカチャと検索してる音)
「……(無言)」
「ハロー?」

世の中には作品の数に比例してシューター経験者は比較的多くいます、ましてや、僕が仕事を探していたアメリカベイエリアには文字通り世界中から人が集まってくるわけです。なんで、シューターの経験がない僕(しかも給料高い)をチームに加えるにはよっぽどの理由がないといけないわけですね。はい、消えた。

モバイルもだめ

次はモバイルですが、こちらも作ったことがあるのが2作だけとなると、モバイルゲーム経験だけでいえば僕より上がたくさんいるわけです(しかも安い給料で)。あと、シリコンバレー、サンフランシスコは現在の形のモバイルゲームの黎明期から開発が盛んなところでもありまして、かなり多くの人材がいるような印象がありますね。ええ、こちらも望み薄です。というかだめでした。

どうですか?詰んだ感ありますよね。俺にはありました。

さらに電話じゃ特技がつぶされて

あと追い打ちをかけるように厳しかったのが、英語が第一言語でも流暢でもない僕が英語圏で生き残る術であるところの「何でも図にする、絵に描く、作ったものを見せる」(参考:IDA-10 氏2万字インタビュー - LYEのブログ

)が、電話面接ではまったく使えなかったことです。一応、事前にパワーポイントのファイルを送っておいても、電話面接の時に相手にみてもらえたことは1度しかありませんでした。

もう一度原点に

というわけで、冒頭のとおりどこにいこうかなーとか軽く構えていた僕は、認識を改めざるを得ませんでした。そして、今一度自分のやりたいことと、強みを熟慮せざる得ませんでした。

うーん、やりたいこと…

「チームのクリエイティビティを増幅させる触媒のような存在になりたい」

でででたー、ポエムおじさん!いるいるそういう人!俺だ!俺だったよ!

ええと、強みですか...

「コンソールの開発経験がオンラインRPGのアイテムからレベルデザイン、コンバットデザイン、システムデザイン、UIデザインまで豊富で、キャラクターが有名なゲームを作ったこともあって、コンバットゲームのリードデザイナーとして中規模(40-80人規模)のタイトルを2本やったことがあり、F2Pのモバイルゲームを立ち上げから運営までやったこともある」ことかなー。

うわー、典型的な「いろいろやってるんだけど専門性がなくて結局何が得意なの?って聞かれちゃうタイプの人」じゃーん!ごめん完全に俺だった!

拾うなんとかあり

しかしですね、結局1時間とか電話でプロ相手に話すわけで、いまさら自分を偽って売り込むのなんて不可能なんですよね。というわけで腹をくくって、むしろいろいろやってたのが自分の強みだ!と開き直った上に200%くらいポジティブに再解釈して、締め切りまで3ヶ月だろうが、ちょっと締め切り過ぎちゃってようが、どんな状況でもチームを煽ってゲームを面白くできるのが自分の特技です!レッツパーティ!などとひたすら自分の価値を信じて売り込み続けました。

……その結果、「キミのような人を探してた!」って会社がベイエリアに3社ほどあったわけです。100倍くらい適当にぼかしてますが、まあこんなかんじ。

「新しいタイトルの立ち上げでプロトタイピングのためにコアメンバーを一人だけ増やしたい」
→いろいろできる人を探してた

「キャラクタービジネスの一部としてゲームを作りたい」
→有名キャラクターを扱ったことがある人を探してた

「データ主導から、ゲームデザイン主導のゲーム制作に移行したい」
→ゲームデザインについて人を教育できて、なおかつ十分なキャリアがある人を探してた

あった!良かった!ただ、どこもエントリーの段階ではまったく期待されている内容が予想できませんでした。電話面接でもいまいちわからず、実際に会社にいってNDAにサインして具体的な話を聞いてはじめて自分に求められているものがわかったのです。そして一度会社での面接に呼んでもらえればこっちのもの。開発に関わったゲームの動画をまとめたプロモーションビデオを流して、架空のゲームの企画書、仕様書、外注への指示書のサンプルなどここぞとばかりにパワポ芸をみせつけつつ、明確になった自分への期待に答えられることを過去の実例を挙げて売り込むのみです。

ちなみにオンサイトの面接に呼ばれると、自分の場合は入れ替わり立ち替わりいろんな人と最低5時間、長いと2日にわたって10時間拘束されました。

もう一度結論

なので、とにかくもう受けまくるしかねえなあ、と。そう思いました。だってわかんないんだもん。だいたいは募集要項にかいてあるけど大事なところは隠してるんだもん。こっちから選びようがないっすわ。で、向こうから選ばれたら、改めてこっちから選べばいいと。

あと、最初にほとんどの場合、返事は次に進めるときだけくるって言いましたが、しばらくしてからいきなり電話がかかってくることも多いです。なんで、今この瞬間もどう?って電話がある可能性もあります。ていうか昨日もかかってきました。遅いよ!まあ、まじめな話、とりあえずエントリーしておけばあとにつながるかもしれないっていう意味で、いろいろ受けまくるのはそんなに間違ってないと思います。はい。

おまけ(今回の就活に使ってたサイト)

LinkedIn: Log In or Sign Up
Glassdoor Job Search | Find the job that fits your life

どちらも自分の職種を登録すると定期的にマッチする求人情報をメールで送ってくれます。微妙に送ってくる情報が違うので両方登録するといいと思います。基本的にLinkedInはこれ経由でリクルーターが声をかけてきまくる就職用SNSで、Glassdoorのほうは、気になる会社の平均年俸とかが知れるサイトです。

追記)

LinkedInは詳細なプロフィールを載せてれば載せてるほどリクルーターからのアプローチが来やすくなります。僕だと最低でも1ヶ月に1度はどこかから声がかかる感じです。あと、個人で会社とマッチングしてくれるフリーのリクルーターと契約してる人もいます。成功報酬だったり定期的に払うタイプだったり基本的に有料ですが、その分企業の求人ネットワークに密にアクセスできたりするので、業界をまたいで就職活動できる人なら良い選択肢かもしれません(と経験者に教えてもらいました)。

*1:on-site interviewといいます

*2:あくまでも僕が受けたベイエリアのゲーム会社、しかもゲームデザイナー職の話です

*3:日本で言ういわゆる「人事」というよりは、会社が欲しい人材を捜して雇用するためだけのスペシャリスト

*4:これがすでに発表済みのタイトルだったりすると、より詳細に欲しいスキルを列挙してあります。

holdencholdenc 2014/09/05 13:20 就活の状況経緯が客観的にわかりやすくまとめられていて楽しく(苦労話なのにすみません)読めました!
アメリカで働いているって何かかっこいいと思いました。
お仕事がんばってください!

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