ラキア

今月の電撃新刊。7月1日が延々と繰り返されると言う現象に巻き込まれた人々を描いた連作短編です。
各話毎に異なる登場人物が、それぞれに繰り返される7月1日をどう過ごすのかと言うお話です。同じ現象に巻き込まれたキャラが何人か登場し、その人たちの間で起こる出来事をメインに話が進みます。
結構面白かったです。区切られた時間から抜け出せなくなる話って、大抵巻き込まれた登場人物は解決策を必死に考えるモノですが、この作品はあんまりそんな感じがありません。かなりアッサリと解決手段が提示されるからと言う事もあるんですが、それ以上に、同じ現象に巻き込まれたキャラは1人ではない、と言う事が大きな要因のように感じました。
問題を共有する仲間がいる事で、世界から只一人取り残されると言う状況から脱しているため、孤独感から解放されているからかと。つまり、この作者が書きたいのは決して時間をテーマにしたSFではなく、あくまでも、非日常的な状況に放り込まれた人たちが何を思いどんな行動をするのか、と言う部分なんでしょう。
前述した「事態を打開する必死さ」と言う部分が弱いのは少々物足りなかったのですが、逆にちょっと新鮮な感じも。このループ現象に巻き込まれるキャラは高校生ぐらいの男女が殆どなんですが、そこから無理なく恋愛要素も取り込んだ話になっているのも好印象。面白かった。
ただ、話は良かったんですが、イラストは...もう少し何とかならなかったんでしょうか。挿絵はヤバイけどカラーイラストはそれなりにシッカリしてる、と言う人は割と見かけるんですが、この作品の場合、両方とも微妙な感じ。うーむ。
あとがき曰く、この作品、まだ続きが出るそうです。シリーズとして見ると、まだ序章と言うか導入が終わったぐらいな内容なので、続きにも期待。楽しみだ。