葉桜が来た夏

電撃の新人さん。第14回電撃小説大賞・選考委員奨励賞受賞作。
琵琶湖のほとりでアポストリと名乗る女性型の異星人と共存するエリア・彦根居留区。この街に住む高校生の主人公は、母と妹をアポストリの1人に惨殺されていて、彼女たちを心底恨んでいるという設定。しかし、ある日突然、そのアポストリの少女と主人公が"共棲"する事になって...と言うお話です。
普通に楽しめました。なんで地球人と異星人が全く同じ姿なんだろう? と言う疑問が頭をよぎりましたが、その辺に目を瞑れば、主人公とヒロインの不器用な付き合い方が初々しくて良い感じ。最初は嫌われていたヒロインが、一緒にいるにつれ、お互いにお互いの事情を知るようになり、徐々に距離が縮まっていく展開が好みに合いました。ヒロインの発作を乗り越えるあたりの展開がすげー好きです。しかし、ちょっと主人公の心変わりが早かったような。長年憎み続けてたのに、結構アッサリと考え方が変わっていった気がします。ヒロインの存在が大きいのは確かですが、もう少し悩むかと思ったのになぁ。
後、十字架, 人間離れした力...とか他にも色々とヒントがあったのに、「餌」の意味がはっきり書かれるまでアポストリのモチーフに気付けなかったのは不覚。けど、そのお陰か意表を付かれた感じがして驚けたのはちょっと嬉しい。得した気分です。
こんな感じで、そこそこ満足な1冊でした。シリーズ化はしなさそうなんで、次回作に期待。