サクラダリセット 5

4巻が短編集だったので、本編は3巻からの続き。今回は主人公達が、ずっと眠り続けている女性の夢の中へと入るお話。夢の中には桜良田の街が広がっていて、ケイはある目的のために、その夢の世界を利用しようとするが...と言う展開です。

話が徐々に進んで来ました。復活した相麻を管理局に気づかせないために、ケイは相麻を桜良田の外へと出そうとする。相麻はケイのために何かを企んでいる。春埼は相麻がいれば自分のリセットと言う能力は不要なのではないか? と悩む。三者三様、それぞれが胸に想いを秘めて行動するから、話がどっちへ転がるか分からない不安がついてまわります。元々、凄く透明感のある中に何処か不安を掻き立てるような雰囲気が漂っていた作品ですが、その不安部分が相麻の復活で大きくなった気がします。未来視と言う強力な力を持つ相麻の前には、ケイの考えは全て見通されている訳で。何をどう企もうと、結局は相麻の手の上で踊っているんじゃないか? と言う気になってします。
また、「シナリオ」と言う「絶対に変えられない未来」がある事が明かされたので、これがどう話に絡んでくるのかが楽しみ。リセットは強力だけど決して万能ではない。前々から分かっていた事ですが、ここにさらに「シナリオ」と言う要素が加わった事で、より万能感が無くなった印象。

そして今回一番良かったのは、春埼の成長っぷり。素晴らしかったです。昔に比べて、随分と人間味が増して来ていましたが、この巻での展開は決定的でした。ただただケイの事を最優先にしてきた春埼ですが、相麻の復活でその気持ちが揺らぐ。ケイの事を第一に考えれば相麻の復活は喜ばしい事だけれど、その代わり自分の能力が無意味になってしまうかも知れない事に感じる違和感。傍から読んでいる身としては、春埼のケイへの気持ちがハッキリと現れているのに、春埼自身がなかなかその事に気付かない展開にはヤキモキさせられました。しかも、やっと決意した...!! と思った矢先にあの展開。なんて事を...と思いましたが、例え何度忘れようと、少しずつだけど確実に変わっている彼女の事だから、春埼はいつかきっとその感情を手に入れる。そう思った1冊でした。