2003/05/16 (金) 音楽ライター小田晶房氏の日記でCCCDやレコード会社などに関する記述が雑誌『map』の編集でもあるライター小田晶房氏がリトルテンポのTICOにインタビューした際、いろいろな力関係とかでCCCDとかの記述を削除せざるを得なかった事情などが、日記に書かれています。以下、日記を全文転載させて頂きます(転載許可を小田様より頂きました。ありがとうございます)。いろいろ考えさせられることが多く書かれています。こういう問題もCCCDにはある、ということで。↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓<転載開始>↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓5月14日(水) いや、これは誰を責めるってことじゃなくて(N君、本当に責めてるわけじゃないからね!)、でもずっと考え続けなくちゃいけないなぁと思って、今日は少しシリアスに書いてみる。先日、リトルテンポのTICOさんの取材をしたんだけれど、自分が作る大切な音楽を守るためにはどうしたらいいかってことをずっと話してた。で、その会話の中で、以前所属していたエイベックス/カッティングエッジに対するFuckin'な気持ち(事実、リトルテンポ側が出すことを認めなかったベスト盤を勝手にリリースしている)をはっきりと語ってくれました。それは本当に納得のいく話で、個人的な誹謗中傷というのとは別の、音楽家としての真っ直ぐな姿勢を感じさせるものでした。でもって、一応オブラートに包みながら(実はもっと厳しい言葉で)、その言葉を原稿にしたわけですが、最終校正の段で、それをカットさせてほしいとの話が来ました。確かに、広告収入を基盤として成立している雑誌にとっては、レコード会社との関係性を守らなければならないのも事実。その一言によって、起こりうる問題は、最初の段階で削るべきという判断はすごくよく分かります。僕も、そんな雑誌を作っていたこともあるから、本当に痛いほどその気持ちがよく分かるし、だからこそ、あえてごねるようなことはしたくない。 でも、それでいいんだろうか、と思う。例えば、TICOさんはミュージシャンとして、完全に巨大資本に喧嘩をふっかけているわけですよ。それに僕が乗っかかることなんてお門違いだけれど、伝えるべき言葉を伝えようとすることが、最低限のメディアの義務だと思うのです。でも、そうはいかないこともある……のか? 本当はどうなのか? もう1点、TICOさんがCCCDを否定する部分も赤が入ってしまった訳ですが、エイベックス云々……てのは仕方ないとしても、『あるミュージシャンが、意識的にCCCDを否定している』という事実は、そのミュージシャンの立ち位置を知る意味でも大きなことだと僕は思うのです。例えば、テイトウワや吉田美奈子の音楽は僕は大好きだけれど、あの人たちがCCCDを称して“音質云々は否定するほどのものではない”ということを盾に肯定するのを聞いた瞬間、彼らの音楽を聴きたいとは思わなくなってしまうのです。自分の音楽は“自分で守る”という意識で作られたもの、そして“商売のためならばその部分はグレイにしておく”という意識で作られたもの、その意識の違いは、確実に盤に記録されているのですから。というか、僕はその意識の部分を一番愉しみに音を聴いていたりするのです。人間的にクズでも構わない、でも音楽家である限り、音に対してだけは純粋であってほしい、と思うのです。TICOさんの言葉は、メディア的な意味でのCCCDの否定ではなく、音楽家とリスナー(もしくは音楽を買ってくれる人たち)との関係性が変わることを危惧しての発言だっただけに、正直残念だったりもします。 話は少し変わりますが、僕らが、一応コマーシャルな仕事をこなしつつ(最近こなせてませんが・笑)mapとして、完全にインディペンデントで本を作ったり、イベントをしたり、CDを作ったりしてるのは、自分たちが底辺であるとはいえ、メディアだという意識があるから。“表現”なんて言葉を使うのは本当におこがましいけれど、言葉を発するのは多少の影響力があるという自負はあって、だからこそ何の制限も受けない“インディペンデント”という場所で展開しているわけです。よくOZ DISCの田口さんとも話すんですが、確かに経済的にはキツイけれど、自分たちだけでやることによって、あの精神的な苦痛から逃れられるという事実だけで、本当にラクチンなもんなんです。一度やったらやめられないから、その状況を守るために他のこと必死にやっているだけの話です(笑)。天気がいい日は、昼からビールも飲めるし、ね。 ただ、僕も憧れていたインディペンデントな文化を持つアメリカが、糞野郎のせいで、今、瀕死の状態です。もちろん、日本の状況も悲惨です。だからこそ、もっとくだらない雑誌が出てこないかなぁと日々思っています。こんな時代だからこそ、メディアが必要だと思うのです。ねぇ、誰か、とてつもなく面白い雑誌、作ってくれませんか? もちろん、僕らもガンバリます。↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑<転載終了>↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑