2008-03-22 雪風“第六話”
■[Snow Wind〜栄光の駆逐艦“雪風”〜]第六話『戦場まで何海里?』
「大日本帝国軍、蘭印方面を完全制圧!残る連合軍はニューギニアの残存部隊だけ!」
「昭和18年(1942年)2月27日、ジャワ海スラバヤ沖にて帝国海軍連合艦隊と連合軍ABDA艦隊が衝突。スラバヤ沖海戦が生起しました。2日間に渡る激戦の結果、日本軍が圧勝。敵は旗艦デ・ロイテルを始めとする多数の艦船を沈められ、連合軍による蘭印の統治は不可能となりました。」
東インド植民地艦隊及びABDA艦隊旗艦 軽巡洋艦デ・ロイテル
「これによって日本軍は長期戦のための資源確保に成功。インドネシアは日本軍の施政下に置かれることとなります。連合艦隊は、ABDA艦隊の残存艦を一掃するために掃討作戦の実施を決定。西側を五戦隊が、東側を私たち二水戦が担当することになりました。」
第六話『戦場まで何海里?』
2月28日
スラバヤ沖海戦終了後、“雪風”は東方方面の哨戒任務を行っていた。
「艦長、毛唐のようですな。ここで拾ってやりたいが、いま停止して、長い時間、海上に静止すると、敵潜に狙われるのが危ないですな。」
「艦長より通達!漂流する敵兵を多数発見!手の空いてる者は、即座に救出活動に入れ!各砲座は警戒態勢を維持。敵潜に気をつけろ。」
甲板
「山崎少尉殿!かなり数がいます!重油で目がやられているようで・・・しかも、全く言葉が通じないし・・・・」
「わかった。引き上げた者は、甲板で待機させておけ。士官がいたら、艦内へ案内を。」
「航海士殿!力を貸して下さい!敵兵が、力尽きそうで・・・・」
士官室
「捕虜の人数の報告を。それと、一番階級の高い者は?」
「40名余りを収容しました。英国軍の大尉が、一番階級が高いようです。」
「国籍は?」
「捕虜たちの健康状態は?」
「それに関しては、看護長より報告が。」
「捕虜の尋問を命じる。対象は、その英国軍の大尉だ。何か有益な情報を握っているかもしれん。」
「それと、服が濡れているだろうから貴様の軍服を貸してやれ。」
「わかりました。それでは、これより捕虜の尋問に向かいます。」
山崎の自室
「・・・えと、これ食べますか?乾麺包というもので、主計科から貰ってきたものです。」
(とりあえず、水を差しだすとして、参ったな・・・海軍兵学校時代に英国人の教師に習ったことはあるが、実用英語なんて初めてだぞ)
「・・・・My name is Thomas Spenser.」
〜以下、斜字は英語だと思って下さい〜
「トーマス・スペンサー。」
「国籍と階級を教えて下さい。」
「これをどうぞ。私のタバコと、あと、“握り飯”です。」
「You're welcome.ところで、貴国の艦隊の編成について、答えてもらえますか?ロイヤルネイビー及び連合軍の残存艦の数。そして、何個艦隊が行動中であるかを教えて下さい。」
「ABDA艦隊残存艦の海戦後の行動については?」
「ロイヤルネイビー極東艦隊の今後の行動予定は?」
(駄目だ、全く、重要なことを話してくれない。さすが英国海軍魂。口が堅いな)
「・・・われわれ捕虜は、ジュネーブの捕虜取り扱い条約*1によって、軍次的な質問に答える必要はないのだ。われわれは身分階級に相当する待遇を受ける権利がある。」
「ああ、知らない・・・(そんなもの、海軍兵学校でも習わなかった*2ぞ。帝国軍人は捕虜にはならない*3というのは、当然のことだと思っているし)」
「ジュネーブ条約とは、捕虜の取り扱いについて定められた条約だよ。互いに待遇を保証し、家郷からの便りも許され、家族からの贈り物を受け取ることができる。」
「もちろん。英独両国はすでに一年半も前から戦っているが、捕虜は家族と連絡をとり、捕虜交換で故国に帰ることもできる。日本軍は違うのか?」
「いや・・・・・郷党のことを考えるならば、捕虜になど・・・」
「日本人は、名誉を重んじると聞かされていたが・・・・本当のようだな。」
「軍事的なことについて話せないことの代わりといってはなんだが、私の故郷の話をしよう。」
「といいますと、イギリスの?」
「ああ、そうだ。私の生まれはスコットランドでな・・・・・・」
〜中略〜
「・・・・で、西イングランドのダートマスにあるイギリス海軍兵学校へ入ったわけだ。」
「ダートマスなら知っています。江田島の授業でも習いましたから。」
「私も、江田島のことは聞いている。ふふ、まさか、こんな所で知り合うことになるとは思わなかったが。」
(それにしても、海兵を出て捕虜になり、平然と階級相当の待遇を要求する。これも国情の違いなのかな。日本軍に捕虜なんて出てない*4ぞ)
「ところで、大尉はずっとエレクトラの砲術長だったのですか?」
「ビスマルク追撃戦の頃からな。英国軍の総力をあげて、奴をようやく追い詰めて沈めた時は爽快だったよ。今回は沈められたが、自分は捕虜交換でイギリスに帰ったら、名誉の勲章をもらうだろう。」
「なぜなら自分は、ビスマルクを沈めるときも、砲術長として奮戦して手柄をたてた。今回も日本軍と戦って、数隻に損害を与えた。巡洋艦一・二隻は沈めたからだ。」
「Youの艦隊では、巡洋艦二隻が沈み、そして、駆逐艦二隻が沈んでいる。それはここにいる捕虜がよい証拠だ。しかし、日本艦隊は一隻も沈んでいないし、被弾して破損した艦も皆無だ。」
「我々の間では、日本軍艦一隻撃沈、一隻大破と伝えられていたのだぞ。」
「ははは、恐れ入ったよ。ところで、君の故郷はどんなところなんだ?」
しばらくして・・・・
艦橋
「報告。捕虜の尋問を終了。スペンサー大尉は自室へ帰しました。」
「それが、何も。ジュネーブ条約というものの規定とかで、軍事的なことは一切話してくれないのです。」
「イギリスは、さすがに口が堅いな。オランダの下士官は全部しゃべってしまったぞ。」
(あ〜あ、せっかくスペンサー大尉が黙ってくれているのに)
「航海長、もう少し速力を落とせないか?まだ捕虜がいるかもしれん。」
「はっ。しかし、この様子ですともう生存者はいないかと・・・・」
(おお、いっぱい高角砲の薬莢が浮いてるな。あれは、12.7cm、10cmのはエクゼターのか?で、7cmのがあって、その間に浮いてるのは・・・・・)
「な・・・・なんか、人だったものが、いっぱい浮いてるのですけど・・・」
「確実に、先の海戦での戦死者たちだな・・・・・」
「うんにょー!だいぶホトケ様をつくってしもうたな・・・・・・」
「南無阿弥陀仏・・・・・・」
3月3日
「艦長!潜水艦を探知しました!」
「了解!・・・・・少尉殿、ソナーによれば所在はこの辺りかと。」
「わかった。艦長、潜水艦の所在がわかりました。」
「はっ!水測要員は、敵潜の位置を航海長に報告!同航しつつ、敵潜の直上を目指す!」
「対潜戦闘用意!爆雷、投下準備!」
「爆雷、投下!」
ドボンッ!ドボンッ!ドボンッ!
「うむ、今日の戦闘詳報に書くことが決まったぞ。『敵潜一隻爆沈確実と認む』だ。」
ボルネオ南岸パンジェルマシン基地入港
燃料補給と捕虜の引き渡しが行われる
「そうですね・・・・大尉の故郷のスコットランドの話、面白かったです。何分、外国なんて行ったことがないので。ありがとうございました。」
「これ、俺からのプレゼントです。日本製のタバコですが。」
「Thank you.戦争が終わったら、スコットランドに遊びに来てくれ。」
「ロンドンまで砲撃にゆくぞ!」
「艦長、重油がないため、精製していない原油のままでの補給になりますが・・・」
「うんにょー、走るとも。原油にはガソリンも揮発油もみんなふくまれている。走らんわけはなか」
「山崎少尉は心配したようですが、この原油で、十分“雪風”は走り回りました。」
3月12日
セレベス島マカッサル基地入港
補給と乗組員の休養を行った。
“雪風”艦橋
「お、町の様子はどうだった?兵たちは、十分に休めていたか?」
「まだ陸上には日本料理店は進出しておらず、現地のインドネシア人が経営する飲み屋でサテ・カンビンを肴に椰子酒を飲めるくらいでした。また、設営隊がドラム罐の風呂を沸かしてくれていたため、ここ二週間分の戦塵を落とすことができたようです。それぞれ、故郷を懐かしがっていましたよ。」
「そうか、それは何より。ところで、そのサテ・カンビンとはどんなものなのだ?」
「“羊の串焼き”とでも言いましょうか。なかなかいけますよ。」
「艦長も来られるのでしたら、心強い。航海長たちにも声をかけておきましょう。」
「そっちはまだ良い方だよ。だって、潜水艦を撃沈したり捕虜を取ったり活躍してるでしょ?」
「まぁね・・・・でも、海戦では全く戦果をあげられないよ。」
3月15日
“雪風”甲板
「こんどは、どうもインド作戦らしい。陸軍はビルマからインドをとって、パキスタン、アフガニスタンと進み、イランの高原でドイツと手を結ぶ*5と言ってるそうだ。」
「いや、東へ行くのではないのか?大本営の作戦は第二段作戦でフィジー、サモア、ニューカレドニアと打通して米豪分断を行い、まず豪州を屈服させ、ついでにドイツの英本土上陸と相まってアメリカを屈服させる方針*6だという説もあるな。」
「俺は全体的な作戦はともかく“雪風”の今後の行動が気になるな。海戦での戦果がないことは知ってるだろ?」
「確かに。実際、砲術科は一隻も沈めていませんからね。潜水艦を撃沈したのは水雷科ですし。」
「司令部が何を考えているかわからんが、また近いうちに戦うことになるだろうよ。」
3月29日
ニューギニア西部方面攻略作戦(ル作戦)発動
同日、マノクワリ上陸支援のため第十六駆逐隊、出港
「さて、今次作戦の目標は西部ニューギニアの都市、マノクワリだ。」
「まぁ、ここにいるのは豪蘭の残敵のみ。さして、問題はないと思うが・・・」
「よりによって、輸送船団が陸地に近寄れませんね・・・・・・・」
「このへんになると赤道直下だ。黒潮が西北へ流れているので、なかなか陸地へ近寄れないのだな。」
「敵は、“千歳”の水偵がやっつけているが、揚陸できんことにはなぁ」
「緊急の措置により、十六駆逐隊が各艦一個小隊からなる陸戦隊を編制し、マノクワリを占領せよとのことだ。」
「至急、第三種軍装に着替え、艦橋へ集合!陸戦隊指揮官として、マノクワリ制圧を命じる!陸戦用意!」
「了解!これより、第三種軍装の着用及び陸戦装備の準備に入ります!」
「中尉、俺の軍刀を持っていけ。陸戦では何かと役に立つはずだ。」
山崎の自室
「となると、野戦の遭遇戦ではなく市街戦だから、兵士を、横隊ではなく縦隊に使うんだったな。」
艦橋
「山崎中尉、陸戦用意完了。一個小隊を率い、これよりマノクワリ市制圧に向かいます。」
「航海士、大丈夫か?兵学校で習ったとおりにはゆかんぞ、上陸するとタマが飛んでくるから気をつけろ。」
「中尉、カッターの準備はできております。いつでも出撃可能です。」
(“市街地においては、街の攻略よりも後の警備に注意を要する”か・・・兵学校時代、原村演習で習ったことがここで役立つとは・・・)
マノクワリ桟橋
「“雪風”隊、全員上陸完了しました。」
マノクワリ市街地
「これより小隊を二つに分ける!各分隊は街路の両側を進軍、双方のビルより狙撃する敵兵を見張れ!」
「ありがとうございます。あ、気をつけてください!先行し過ぎてますよ!」
「ところで、橋本卯六少佐を知っているか?俺が一号生徒で三分隊にいたとき、分隊監事だった人だ。上海事変のおりには陸戦隊大隊長をやっていたとのことで、よく話を聞かせてもらったよ。」
「橋本少佐なら知っております!やはり兵学校の教育は役に立ちますなあ」
「ちなみにこの時点で、連合軍残存部隊は全て敗走。マノクワリは放棄されていました。」
「しかし妙ですな。オランダ人はともかく、日本人すらいないとは・・・」
「ふむ・・・とりあえず、敵はいないようだ。午後に市内警備も兼ねて、日本人の捜索も行う。“雪風”隊は任務を一時中断、食堂が再開しているようだから、そこで飯にしよう。」
食堂
「大坪!“千歳”乗り組みとは聞いていたが、貴様も上陸していたか。」
「いや、今日は陸戦隊だ。貴様のところの飛行機のおかげで無血占領さ。」
「オランダ人が残していったビールがある。それで、乾杯といこうじゃないか。」
午後
“雪風”隊、市内警備へ出発
「近くの家を指差している所を見ると、何かあったのかもしれん。俺が行って調べてくる。他の者は、周囲の警戒を。」
「屋根裏?」
ガチャッ!
「心配せんでよい。日本海軍の陸戦隊だ。マノクワリは占領した。もう安心だよ。」
「日本の軍人さん?本当に日本の海軍がこんなところまで来たんだね。」
「中には誰もいませんよ。戦争が始まるということで、私以外は山中に・・・」
「そこで“雪風”の陸戦隊から話を聞いてな、“千歳”の軍医官を連れてきたんだよ。」
「“雪風”の軍医が見つからなくて、難儀していたんです。」
「彼女(荒井タミ子さん)は駆けつけた軍医官の力を借りて無事出産し、これとともに『ル作戦』は終わりました。その後“雪風”は、四月中旬にアンボンに入港。同二十三日、内地へ向け出港。そして四月三十日、母港の呉へと帰投します。また、これと同時に荒瀬砲術長が転任することになりました。」
4月30日
「石隈辰彦大尉!本日付で、駆逐艦“雪風”に配属となりました!」
“雪風”砲術長
石隈辰彦 大尉(昭和17年4月30日着任)
山崎中尉が四号生徒の時の一号生徒であり、飛田艦長は兵学校時代の教官である。
「これじゃ、兵学校時代と変わらんな。」
「共通の知り合いである石隈大尉が着任してから、士官室は常に和気藹々としていました。まぁ“雪風”は、いつもこんな感じだったけどね。」
「さて、とりあえず今回はここまでにしましょう。次から、長くなりそうだし・・・」
「いつもと変わりありません。ただ、“シャングリラ”からの攻撃には慌てたようですが。」
「いえ、“まだ”終わってませんよ。あそこは“水不足”なんですから。」
「もちろん。彼らは、必ず出てきます。チーズに釣られるネズミのようにね。」
次回予告
敵空母は依然健在!これを撃滅するため、ミッドウェイ攻略作戦が始まった!ハワイ以来の大規模な戦力の投入、負けるなんてことは絶対にない!でも、何かがおかしい・・・心の中で響きだす不協和音とともに、大海原へと艦隊は出て行く。次回、『Snow Wind〜栄光の駆逐艦“雪風”〜−不協和音(ミッドウェイ海戦その1)−』
第6話登場キャラクター
“雪風”航海士 山崎太喜男 少尉→中尉/ヴォルフ・フォン・シュナイダー
“雪風”水雷長 白戸敏造 大尉/アレックス・ルイ・アームストロング
“雪風”看護長 山田安治 看護特務少尉/ティル・パンタブルグ
“雪風”砲術科一番砲塔 加藤定/式森和樹
“千歳”航海士 大坪弘 中尉/ジョニー・ライデン
*1:ジュネーブの捕虜取り扱い条約:正式には、「俘虜の待遇に関する条約」。1929年にジュネーヴで締結された条約であり、日本も署名たが、軍部及び枢密院の反対により批准していない。ただし1942年1月29日、連合国の要請に応える形で「適当なる変更を加えて (mutatis mutandis)同条約に依るの意思ある」との声明を発表、遵守する意向を示した。しかし、この選択が後に重大問題を引き起こすこととなる。
*2:事実。当然、陸軍士官学校でも選択しない限り習っていない。このことも後に生死を分ける重大問題となる。
*3:ちなみに戦陣訓は、海軍では配っておらず陸軍限定だったとのこと。このことは日本軍兵士共通の思いだったらしい。
*4:既に山崎少尉の同期(酒巻和夫少尉)が操縦する特殊潜航艇が12月8日に真珠湾で拿捕され、大東亜戦争における記念すべき捕虜第一号となっている。
*5:荒唐無稽な計画その1
2007-11-13 雪風“第五話”
■[Snow Wind〜栄光の駆逐艦“雪風”〜]第五話
18:50、第一次昼戦が一段落する
「雪風」艦橋
「現在、“雪風”は敵艦隊の左後方八千メートル地点を南下中です。四水戦は敵艦隊の西方二万二千メートルを、五戦隊は本艦の左後方五千メートルをそれぞれ移動しています。」
「敵艦隊一斉回頭!南に針路を向けました!敵旗艦が煙幕を展張。」
「手負いの艦を抱えていますからね。一刻も早く戦場を離脱したいのでしょう。」
第五話「ABDA艦隊潰滅〜スラバヤ沖海戦(後編)〜」
19:10
「オーストラリアへ逃げ込むつもりだな。」
「敵艦隊と一番近い友軍部隊は?!」
19:20
19:24
「英巡洋艦エクゼターが目標か。どうします?」
ドカンッ!ドカンッ!ドカンッ!
「搭載機の撤去作業を行っているようです。あれのガソリンに引火したら、瞬時に轟沈しますからな。」
ドカンッ!ドカンッ!ドカンッ!
「まだまだ・・・・雪風、まだ大丈夫だよな?」
「砲戦はどっちみち魚雷戦の後だ。まずは、魚雷攻撃を行わないことには・・・」
ドカンッ!ドカンッ!ドカンッ!
「敵艦、左旋回!」
19:40
「彼らの行動は全てエクゼターを守るためだった、ということだな。」
「エクゼターを擁護していた敵駆逐艦二隻も離脱中とのことだが?」
「司令、敵主力が健在である中、駆逐艦二隻のみによる行動は危険では?」
「なに、向こうの司令は佐藤大佐だ。必ず、戦果をあげて無事に帰ってくる。」
19:54
「“峯雲”より入電。『敵駆逐艦、一隻撃沈。一隻ハ北方ニ遁走。ナオ、敵艦ノ国籍ハ英国』とのことです。」
「確かに。ところで、司令駆逐艦である“朝雲”からの入電はないのか?」
「しかし、これほどの攻撃を行っているのに我々の魚雷は一発も命中しない。」
「友軍部隊も同様だ。第二次昼戦において魚雷の命中弾は無し。さて、どうしたものか・・・」
(敵の目まぐるしい旋回運動もあるが、魚雷の深度が深すぎる。おそらく、戦艦用として発射されているため、駆逐艦などの船底を通り抜けてしまうのが原因だ。)
「はっ!ジャワ島のワルワル角二十マイルを南寄りに移動中です。」
20:05
「高木司令より各部隊へ下令。『各部隊スミヤカニ集結、夜戦準備ヲナセ』」
「司令、気をつけていただかないと、燃料があと半分しかありませんぞ。」
20:16
「現在、本艦隊の戦果は英国重巡洋艦エクゼターを中破せしめ、同国駆逐艦1隻撃沈、オランダ駆逐艦1隻撃沈となっている。しかし、エクゼターは既に戦場を離脱。つまり、取り逃がしたのだ。また、オランダ巡洋艦デ・ロイテル、ジャワ、米国巡洋艦ヒューストン、豪州巡洋艦パースを含む敵本隊は健在であり、これを叩かなければ作戦の成功は無い。」
「まずは、こちらの命中精度を上げる必要がありそうだ。5時54分に生起したこの海戦で、あれだけの砲弾魚雷を消費しているのに対し、戦果がこれだけとは・・・」
「“神通”より入電。『本艦偵察機ヨリ報告。敵針百三十度』とのことです。」
20:52
「おそらく、二万メートル以上の距離を開き、アウトレインジ作戦に持ち込むつもりなのだろう。」
「しかし、先の海戦で遠距離攻撃の命中精度の低さが露呈したではないのか?」
「なぜ五戦隊は一万五千で撃ち合いをやらんのだ!二回の昼戦で、すでに敵艦に戦艦はおらず、二十センチ以上の砲がないことはわかっているではないか!」
「む?先程から航海は海図を見ていないではないか?自分の職務はどうした?」
「はぁ・・・艦長も知っていると思われますが、この艦には航路自画機*1という機械が設置されており、戦闘航海中は特に何もすることがないのであります・・・・」
「なるほど、それで各艦隊の動向を報告したりしていたわけだな。」
「いくら九三式酸素魚雷*2でも、二万近くでは当たるもんか。」
「田中少将は一体どうするつもりなんだ?!」
「やむを得ん、本艦も“神通”に続いて離脱する。針路、北西。」
2月28日
01:06
ドカーンッ!
01:10
ドカーンッ!
「報告、炎上しているのは敵艦の模様!」
「報告!五戦隊より入電!『本日0040、本戦隊“那智”“羽黒”ガ一万二千メートルヨリ魚雷ヲ発射。0106、敵旗艦蘭国巡洋艦“デ・ロイテル”ニ命中、撃沈ヲ確認。同0110、蘭国巡洋艦“ジャワ”ヘノ命中、炎上ヲ確認。』とのことです!」
「うんにょー!五戦隊が二隻も沈めるとはね。昨日は駆逐艦一隻で、今日に入ってから巡洋艦二隻か!」
「どうもね。駆逐隊が撃たないのに、重巡の魚雷ばかりが当たるとはね・・・」
「しかも一万二千の距離から・・・これが酸素魚雷の威力なのか?」
「何々・・・・『二水戦ハ逃走シタ米駆逐艦四隻ノ追跡ヲ行フ』か・・・・どうやら、また主戦場から遠ざけられるようだな。」
「各員に告ぐ!本艦はこれより、戦闘海域を離脱!東方方面の哨戒に当たる!戦果がなく、不満の者もいると思うが、これも大切な任務だ。我慢してくれ!」
「航海長、砲術長、水雷長。」
「これより、哨戒配置に切り替える。即応用の人員を残し、あとは休ませてやれ。」
「この戦いによって、ABDA艦隊はほぼ壊滅。インドネシア方面の制海権は、日本の手に渡ることになりました。現時点での主な戦果は以下の通りです。」
撃沈:軽巡/デ・ロイテル(蘭)、ジャワ(蘭) 駆逐艦/コルテノール(蘭)、エレクトラ(英)、ジュピター(英)
中破:重巡/エクゼター(英)
「それと、今回戦果を挙げた艦を紹介しましょう。どちらも、妙高級重巡洋艦です。その中で本海戦に参加したのは2番艦の“那智”と4番艦の“羽黒”。彼女たちは、先ほどのように敵旗艦撃沈という大戦果をあげています。」
排水量 :14,984t
全長:203.76m
全幅:20.37m
吃水:6.37m
速力:33.3kt
航続距離:8,500nm / 14kt
乗員:891名
兵装:50口径20.3cm連装砲5基10門、40口径12.7cm連装高角砲4基、61cm4連装魚雷発射管4基、九三式魚雷24本、25mm連装機銃4基、13mm連装機銃2基
航空機:3機
「私たち二水戦は、戦果0という結果になったため、複雑な気持ちですが・・・」
<つづく>
次回予告
皇国の行く手を阻む、ABDA艦隊は潰滅した!次なる目標を探す雪風は、ある“拾い物”をすることとなる。激しい戦い、束の間の安らぎ。敵も味方も軍人も民間人も関係ない!雪風は雪風の戦争をする!次回、Snow Wind〜栄光の駆逐艦“雪風”第六話『戦場まで何海里?』「What is your name?」
登場キャラクター
“雪風”航海士 山崎太喜男 少尉/ヴォルフ・フォン・シュナイダー
第十六駆逐隊司令 澁谷紫郎 大佐/沖田十三
“雪風”水雷長 白戸敏造 大尉/アレックス・ルイ・アームストロング
“雪風”見張員/ゴットン・ゴー
(このページのアイコンは、maaと愉快な仲間たち様及び大東亜戦争コンテンツ様のを使用させていただいています。)
2007-09-20 雪風“第四話”
■[Snow Wind〜栄光の駆逐艦“雪風”〜]第四話
「開戦三日目にして英国東洋艦隊を壊滅させ、制海権を握った日本軍は連合軍に対する攻勢を強めます。昭和16年12月25日には香港島のイギリス軍が降伏。翌年の1月2日には、フィリピンのマニラ市が無血開城されアメリカ軍はバターン半島へと撤退。そして、2月15日、シンガポールが陥落すると現地の英豪軍は降伏し、連合軍はマレー半島及び南シナ海から締め出されることとなりました。」
「前日の14日にはスマトラ島のパレンバンが陥落し、マラッカ海峡は日本軍の制海権下に入ります。次々と撃破され、敗退を続ける連合軍はABDA艦隊*1による日本艦隊迎撃をスラバヤ沖にて行うことを決断。その頃、大本営もオランダ軍の一大拠点であるジャワ攻略作戦の発動と艦隊の派遣を決定しました。ここに、大東亜戦争最初の艦隊決戦が行われることとなったのです。」
第四話「煙モ見エズ雲モナク〜スラバヤ沖海戦(前編)〜」
2月24日 クーパン
「雪風」艦橋
「大本営からの命令を伝える。『第二水雷戦隊はマカッサルにて補給の上、ジャワ海へ進出すべし』とのことだ。」
「作戦目標はジャワ島の制圧。ここが陥落すれば、オランダ軍は東南アジアからの撤退を余儀なくされる。また、スラバヤ港が同海域における連合軍最後の拠点もここであることから、その重要性がわかるだろう。本来ならば、もう少し早い時期に実施する予定だったのだが、航空部隊による飛行場制圧が不十分ということであり、延期されることとなった。」
「27日には、スラバヤ西方150km地点にあるクラガン泊地に進入。翌、28日に上陸を行う。しかし、ここで今作戦における一番の障害が気になってくる。スラバヤ港を拠点とする連合軍ABDA艦隊だ。図を見ての通り、我が方の側面から狙ってくる可能性も有る。」
「連合軍はジャワ島への上陸を全力で阻止しようとするのは間違いない。先日のバリ島沖海戦に敵は、巡洋艦・駆逐艦を計10隻近く投入してきた。今回もスラバヤ港からABDA艦隊を出撃させ、輸送船団を叩こうと考えているはずだ。その場合、我らがとる行動は一つ。輸送船団を護衛しつつ敵艦隊を迎撃・撃破する。これは“雪風”にとって、最初の艦隊戦となる。全ては、諸君らの腕にかかっていることを忘れるな。」
12:00 クーパンを出港、マカッサルへ
「うむ、俺も腕が鳴っているんだ。航海屋の見習いばかりでは、なんのために水雷学校で雷撃を習ってきたか、わからんからな。」
「駆逐艦の主兵装は魚雷だ。魚雷によって敵艦隊を攻撃するのが本来の役目なのだが、今まではそれをぶっ放すことができなかった。」
「我が軍自慢の九三式酸素魚雷は3発命中すれば、戦艦といえども撃沈できるのだ。連合軍の巡洋艦なぞ一撃で十分。すぐに撃滅してみせるからな。」
セレベス島マカッサル
(あれは、小島が所属している第八駆逐隊・・・だいぶ傷ついてるな・・・バリ島沖海戦で何があったんだ?)
「少尉殿、先日生起したバリ島沖海戦における情報が入ってきました。」
「ああ、オランダ軍駆逐艦4隻と米駆逐艦2隻*2を撃沈したのだろ?こっちは第八駆逐隊(駆逐艦4隻)だけに対して相手は巡洋艦3と駆逐艦7。それを撃破したというから、すごいじゃないか。」
「いいえ、私が言っているのは損害の方です。“満潮”と“大潮”が被弾し、“満潮”に至っては64名もの死傷者を出しました。」
「あの様子だとかなりの損害を受けたようだが、まぁ戦争だからな。」
「・・・・その戦死者の中に小島堅二少尉の名前がありました。」
「やはり・・・・少尉が兵学校六十八期生であると聞いていたので、もしやと思い報告したのです。」
(・・・・・俺も小島も江田島に入ったときから、君国に身を捧げたつもりではある。死を厭わず戦うことこそが軍人の務めであり、あいつもそう思って逝ったのであろう。だが・・・・寂しいものだな。去年までともに机を並べた友が戦死するというのは)
(これまでさしたる被害も無く作戦を行ってきたが・・・・明日は我が身かもな。)
2月25日、マカッサル出港
2月26日、輸送船団に合流
「輸送船団及び第一護衛部隊・第五戦隊と合流。」
「輸送船団38隻を中心に、左側面に第一護衛隊、右側面に五戦隊、後方五十マイルに我が二水戦が展開しています。戦力は、
軽巡洋艦:那珂
第二駆逐隊:村雨、五月雨、春雨、夕立
第九駆逐隊小隊:朝雲、峯雲
第五戦隊部隊
重巡洋艦:那智、羽黒
第七駆逐隊第一小隊:潮、漣
第二十四駆逐隊:山風、江風
第二水雷戦隊
軽巡洋艦:神通
06:00
07:00
13:15
一、敵巡洋艦五隻、駆逐艦六隻、スラバヤノ三百十度、六十三マイル、針路八十度、速力十八ノットノ報アリ
二、第五戦隊ハ、直チニコレニ向カウ。一三○○スラバヤノ三百二十八度、百六十五マイル、速力二十四ノット
三、二水戦ハ、現場ニ来会セヨ。一三一五、蝕接機一機発艦セリ
「二水戦旗艦“神通”より入電!『二水戦ハ針路百五十度、速力二十一ノットニテ会敵予想地点ヘ先行スル』。続いて四水戦旗艦“那珂”より入電!『魚雷戦用意ヲ完成セヨ』」
「護衛駆逐艦及び輸送船団が西方へ避退していきます!」
(まるで、虎の群れに会った、縞馬の大群みたいだな)
14:30
「はい。“那智”偵察機からの報告によりますと、敵勢力は甲巡2、軽巡3、駆逐艦9の計14隻。針路百八十度、速力二十四ノットでスラバヤ港に向かっています。」
「しかし、よくぞこんなに数を揃えたものだな。連合軍にも連合軍なりの意地があるということか・・・」
15:00
「“那智”より入電。『一、敵巡洋艦戦隊ハスラバヤ湾ニ向カウモノノ如シ 二、第五戦隊ハ輸送船隊ノ東側ニ出テ適宣減速ス 三、二水戦ハ今夜ノ配備ニツク如ク行動セヨ』」
「ふむ、敵が遠ざかっているなら、このまま進撃したほうが得策だな。」
「このまま行けばな。だが、敵もこっちに気づいているだろう。おそらく、挑んでくるはずだ。」
16:35
「“那智”より入電!敵部隊反転!針路零度、速力十八ノット!」
「やはり。五戦隊高木司令及び“神通”の田中司令からの通信は?」
「ええと・・・今、入電しました!五戦隊です!『一六三五、我ガ針路二百二十度、速力二十一ノット、敵ヲ誘導シツツ合同ス』。続いて“神通”より入電!『二十八ノットニ増速シ、西ヘ向カイ合同ス』」
16:49
「航海士、マストが八本ということは、4隻ということじゃろう、フネにはマストが二本というのが普通じゃからな。」
17:31
「どれどれ・・・・『第五戦隊ノ第七駆逐隊第一小隊ト“山風”“江風”ヲ、二水戦ニ編入。以後、上記部隊ハ田中少将ノ指揮下ニ入ルトス』か。」
17:39
「五戦隊駆逐艦4隻、十六駆逐隊の右側に合流。」
「水雷科、準備完了。」
17:45
ドーン!
17:47
「敵駆逐艦発砲!」
「第五戦隊も砲撃を開始しました!距離は二三Oから二五Oの模様!」
「初弾命中!敵駆逐艦に命中したようです!」
(・・・・しかし、遠すぎる。命中精度を上げるためにはもう少し近づかなくては・・・・)
17:48
「敵巡洋艦が発砲!」
「仕方が無いな・・・我々も加わるぞ。十六駆逐隊、全艦攻撃開始!」
「“雪風”、これより戦闘行動を開始する!方位、距離知らせ!」
「方位百五十、距離七万五千!砲塔、旋回完了!射撃準備よし!」
ドーン!ドーン!ドーン!
「しかし、もう海戦は始まっている。“雪風”だけ撃たないというのは、許されない。」
「天気は快晴、波は穏やか。『煙モ見エズ雲モナク』とは言ったものだ。敵艦隊の様子がよくわかる。」
「つまり、敵からもこっちの様子がよくわかるということになるな。」
バシャーッ!バシャーッ!
(うんにょー!あれに当たったら、ひとたまりもない!すぐ轟沈するぞ!)
17:50
「“那珂”艦橋より、“神通”へ向けて敬礼している者がいます。」
「あの第二種軍装は・・・西村少将.・・・・」
「護衛部隊を支援する二水戦への礼と、覚悟の敬礼だろう。白装束はおそらく、その証だ。“神通”の田中司令も西村司令に対して敬礼をしているだろうな。」
18:03
「四水戦が砲門を開きました!現在、敵艦との距離は・・・一五O!」
「艦長!撃たせてください!既に発射管は敵の方を向いておるのです!」
「現在、敵は魚雷の射程内にあります!航海士!敵までの距離は?!」
「我が軍の誇る酸素魚雷の射程は三万八千!十二分に射程内であり、敵艦とは同航しています!目下、砲戦中のため大きな変針は無し!しかも無気泡であるがため、回避されることはありません!」
「・・・・・・・・“神通”はまだ魚雷戦の命令を出していない。」
「砲撃を続けながらの魚雷発射は難しい。なぜならば震動が魚雷の調定を狂わせる恐れがあるからだ。水雷長も水雷学校で習っただろう。」
ドカーン!
(やはりな。射点占位運動も行わず、腰だめで発射しても当たるものではない。)
18:22
「雷数8?魚雷戦命令は各艦8門によって発射とのことであったが、それならば雷数は16になるはずだぞ?」
「どうやら、“那智”の方で手間取ったようです。“羽黒”からは発射されています。」
18:33
ズダダダダ!
「無茶言わんでください!さっきまで敵艦の方を向いていたのです!急に対空射撃はできません!」
ヒュルルルルルル
ザバーッ!
ザブーッ!
18:40
「砲術はまだ良いほうだ。水雷はいまだ一発も撃たせてもらっていないぞ。」
「大丈夫だ。“雪風”は必ず活躍する。今に敵艦に対して・・・・」
ドカーンッ!
「このままじゃ、五戦隊が良いところを全部持って行きますよ?」
「全軍突撃?ほほう、これで我らにも機会が巡ってきたということだな。」
「“雪風”の力、見せ付ける時が来ましたね。」
<つづく>
次回予告
激闘のスラバヤ沖。ようやく活躍の場が巡ってきた“雪風”は、全軍突撃の命令を受け縦横無尽にジャワ海を駆け巡る。しかし、敵艦はなかなかしぶとい!果たして、戦果を挙げることができるのか?!次回、Snow Wind〜栄光の駆逐艦“雪風”〜第五話『ABDA艦隊壊滅!〜スラバヤ沖海戦(後編)〜』「発射はじめ!」
登場キャラクター
“雪風”航海士 山崎太喜男 少尉/ヴォルフ・フォン・シュナイダー
第十六駆逐隊司令 澁谷紫郎 大佐/沖田十三
“雪風”水雷長 白戸敏造 大尉/アレックス・ルイ・アームストロング
“雪風”見張員/ゴットン・ゴー
2007-08-18 番外編(後編) 占守島の戦い〜日本を護った英雄達〜
■[番外編 占守島の戦い]後編
8月18日00:30(完全停戦まであと14時間30分)
占守島“国端崎”第一砲兵隊陣地
「師団長の発言は、杞憂だったようですね。」
「ああ、そのようだな。奴らも終わった戦争を始める気は無いだろう。」
ヒュルルルルルル
ドーン!ドーン!ドーン!
「そんな馬鹿な!我が軍は降伏しているのです!なぜ攻撃する必要が・・・」
00:50
「海上に艦船のエンジン音!小泊海岸に敵が上陸しつつある模様!」
「奴ら、本気だな・・・・準備が完了次第、砲撃開始!総員、戦闘配置!」
01:10、日本軍の砲撃開始
「目標、洋上の敵艦船!よーい、撃てー!!!」
ドーン!ドーン!ドーン!
ドカーンッ!
ドーン・・・
「・・・・旅団本部及び村上大隊と繋がりました!」
01:50
村上大隊陣地
「第一砲兵大隊より至急電!『我、砲撃を受けつつ有り。現在反撃中。』」
「さっきの砲撃はこれだったのか・・・・大隊は戦闘配備に付け!それと、師団本部への連絡を!」
「まさか、終戦後のこの時期に・・・・国籍はどこだ?!」
「同じく国端崎より入電!『敵上陸用舟艇を発見』。敵の国籍は不明の模様!」
「それは分かってる!軍使を遣すならもっと穏やかな方法があるからな!」
「数千人だと?!和平を望んでいるわけはないな・・・・やむを得ん、村上大隊はこれより『水際殲滅』作戦に基づく戦闘行動を行う!敵部隊に対し、射撃開始!」
02:10
第九十一師団本部
「村上大隊より緊急電!『本朝未明二時ごろ、敵が竹田浜一帯に上陸、目下激戦中、ただし敵の国籍不明』」
「終戦後に戦いを挑んでくるなんて・・・・しかも、降伏した相手に!!」
(すでに終戦の大詔は下りた。各部隊は武装解除を行い、兵たちは故郷に帰れる日を夢見ている。戦いは終わったのだ。だが、現実に占守島では戦闘が開始され、村上大隊が戦っている・・・ならば、答えは一つだ)
「幌筵島の第七十四旅団に増援を要請!南部の部隊は直ちに北部へ移動!」
『敵軍が占守島に上陸。第七十四旅団は、至急占守島へ進出してください。』
02:30
「戦車の快速なら、即座に急行できる。それに、池田連隊長の腕なら必ずや敵を撃滅できるだろう。」
士魂連隊本部
ドタドタドタ
「連隊はただいまより、四嶺山に向かって前進!敵を撃滅する!」
「準備の出来たものから順に出撃しろ!中隊長及び小隊長優先だ!」
「こちらもなんとか出撃準備完了!中隊長、指示を!」
「連隊長車の後に続け!第四中隊、出撃!」
「中隊長、必ず、必ず追いつきます!」
05:00、連隊長車以下20両、天神山に集結
「我々は大詔を奉じ家郷に帰る日を胸にひたすら終戦業務に務めてきた。しかしここに到った。もはや、降魔の剣を振るうほかない!」
「そこで皆に問う。諸氏はいま、赤穂浪士となり、恥を偲んでも将来にあだを報ぜんとするか?あるいは、白虎隊となり、玉砕をもって民族の防波堤となり、後世の歴史に問わんとするか!?」
「赤穂浪士たらんとする者は、一歩前に出よ!白虎隊たらんとする者は手を上げよ!」
「連隊はこれより全軍をあげて敵を水際に撃滅せんとす!各中隊は部下の集結を待つことなく、御勅諭を奉唱しつつ予に続行すべし!」
国端崎
砲兵部隊陣地
ドーン!ドーン!ドーン!
ドカーンッ!ドカーンッ!
「合計13隻を撃沈しました!敵兵を次々と海に叩き込んでいます!」
「あいつら、こんな小さな島にどれだけの兵力をつぎ込む気だ?」
「報告!竹田浜の陣地が陥落!一部の敵部隊が、こちらに向かってきます!」
「ちっ・・・なんとでもここを死守する!上陸した敵部隊に対し、砲撃開始!」
村上大隊男体山砲台
ズーン!ズーン!
「ロパトカ岬のカノン砲・・・約5門といったところですか?」
「ここで砲台を潰さなければ、圧倒的に不利になります。重砲部隊へ、目標ロパトカ岬砲台。距離13。撃ち方用意・・・」
ズドーンッ!ズドーンッ!ズドーンッ!
ズドーンッ!ズドーンッ!ズドーンッ!
20分後・・・
「日本陸軍を甘く見るな!」
師団本部
「国境越えの砲撃戦で敵を撃破か・・・砲兵史上、空前絶後の快挙かもな・・・」
四嶺山(最前線)
「上陸前に6千人ほど失ったけど、まだ2万人もいる。進め!進め!日本軍は全滅寸前だ!」
村上大隊
「馬鹿者!ここを取られたら、奴らは雪崩のように侵攻してくる!それに、国端崎の味方部隊を見捨てるわけにはいかん!」
「こっちの兵力は600・・・相手は、1万か、2万?分が悪すぎるぞ?」
ゴゴゴゴゴゴ・・・・
ゴゴゴゴゴゴ・・・・
ゴゴゴゴゴゴ・・・・
06:50、堤師団長へ向け決別電を発信
『池田連隊は四嶺山の麓にあり、士気旺盛なり!0650池田連隊はこれより敵中に突入せんとす。祖国の弥栄を祈る!』
「天地正大ノ氣、粋然トシテ神州ニ鍾。秀デテハ不二ノ嶽トナリ、巍巍トシテ先週に聳ユ。注イデハ大瀛ノ水ト為リ、洋洋トシテ八洲ヲ環ル。ヒライテハ萬朶ノ櫻ト為リ、衆芳興ニタグイシ難シ。凝ッテハ百錬ノ鐵ト為リ、鋭利鍪ヲ断ツベシ。」
「死シテハ忠義ノ鬼ト為リ、極天皇基ヲ護ラン。」
「死んでも忠義の鬼と為り、天地のあらん限り皇国の基礎を守ろう、か・・・」
ズドォーン!!!
ドカーンッ!
07:50
ゴゴゴゴゴ
タン!タン!タン!
ドォン!ドォン!
「右翼からの攻撃を実施中!敵兵は後退していきます!」
「機を失せず敵を急襲し、一挙に敵を圧倒して水際に撃滅せん!攻撃!前進!」
08:25、第2次攻撃開始
「よし、命中!ソ連軍なんか敵じゃないぜ!」
ズキューン!
ドゴォーン!
ズキューン!
ボゴッ
ドゴォーン!
「またやられました!中隊長車両も次々と被弾!」
バゴッ・・・
ドゴォーン!
「こちら士魂部隊!本部へ!池田連隊長戦死!第一から第三までの中隊長も戦死!戦況は・・・・」
「池田連隊長戦死!同連隊の第一、第二、第三中隊長も戦死しました!」
「わかりません!佐藤少佐、増援部隊の到着は?佐藤少佐、応答してください!」
「中隊長。連隊長の仇を・・・・」
「第四中隊長伊藤力男より各車両へ!池田連隊長に代わり、これより私が指揮を執る!残念ながら、池田連隊長、第一中隊長、第二中隊長、第三中隊長は戦死された。しかし、まだ士魂部隊は健在である!全車両、攻撃前進!」
ボスッ!
「キャタピラに被弾!行動不能!」
「車両を放棄!各自、拳銃の弾を確認しろ!敵中に突入するぞ!」
ゴゴゴゴゴゴ
「中隊長!お待たせしました!」
「中隊長、指示を。」
「うむ、増援部隊は本隊と合流の後、戦闘行動を開始!竹下大隊及び村上大隊と協力し、敵を撃破せよ!」
ズドォーン!
ドカーン!
「こちら村上大隊!士魂部隊に続き、敵中への突撃を敢行する!行くぞ!」
ズダダダダダダ!!!!
竹田浜
ソ連軍側
ゴオオオオオ・・・
日本軍航空部隊(海軍:九七式艦上攻撃機4機 陸軍:一式戦闘機「隼」3機)
「こちら海軍航空隊!遅くなったが、これより攻撃を開始する!」
「同じく陸軍航空隊!これより攻撃を開始する!」
「目標、敵艦船!全軍突撃!我に続け!」
ドゴン!ドゴン!
バスッ
「?!・・・やられたか。こちら荒谷上飛曹、被弾した。そうなった場合、とるべき手段は一つ・・・後は、頼んだぞ。」
ガゴォン!
片岡飛行場
「報告、陸海軍航空部隊は、輸送船2、駆逐艦2、艦種不明1を撃沈。輸送船2を撃破しました。被害は、荒谷上飛曹の1機。」
『幌莚海峡に敵艦隊!航空部隊は、直ちに迎撃に向かってください!』
16:00
「第五方面軍より連絡。『戦闘を停止し、自衛戦闘に移行すべし』」
「現在の線に於いて両軍とも速やかに停戦したのち、武器引渡しの方法について交渉する。というのが第一条件だ。頼むぞ。」
16:30
占守島南部
「参謀長。私も話をしたかったところです。あの娘たちをどうするか・・・」
「そのことで話があったのです。この島には400人もの女子挺身隊員が缶詰工場で働いてますね?もし、彼女らをこの島に残し、そのままソ連軍の占領下に入った場合どうなるか?そして、それをどう避けるか・・・」
「・・・・考えたくもないですが、このままでは必ずソ連軍に陵辱される被害者がでます。なんとしてでも、あの娘たちを北海道へ送り返すべきかと。」
港
「今の内に行かなければ、ソ連軍が来る。早く!」
「大尉さん、お世話になりました。できれば一緒に内地に帰りたかったです。」
「私も。でも、こうなった以上、仕方がない。あなた達が無事、内地に着けるように頑張ってソ連軍を足止めしておくから。」
「感づいたかな?船長、出港を!それじゃ、私は戦闘指揮を執るから。」
ドーン!ドーン!ドーン!
ドカーンッ!ドカーンッ!ドカーンッ!
(みんな、必ず生きて内地へ・・・・)
20:30、戦闘停止
両軍の中間地点
ズダダダダ!
「こちらが白旗を揚げているにも関わらず、銃撃するとは・・・停戦の意志は無いか・・・・」
村上大隊
ズダダダダダ!
「ここは応戦すべきです!幸い、部隊の展開も完了しています!攻撃命令を!」
「いかん!師団命令には従うべきだ!ここは、後退する!各員、応射しつつ後退!」
山田大隊
「敵は、ソ連軍であるとの連絡ですが。」
「ならばちょうど良い。相手に不足は無い。遅滞防御戦闘開始!竹下大隊、村上大隊を援護しろ!」
「よし、大隊は現在保持する全陣地の防衛に当たれ!停戦線より一歩も退くな!少しでも隙を見せたら、奴らは攻撃を仕掛けてくる!」
「果たして、ソ連軍上級司令部から現地軍に停戦命令が出てるのか・・・」
8月19日
交渉により竹田浜にて軍使と会うことが、ソ連軍より通達される
そして、柳岡参謀長などが小泊崎にて、ソ連軍司令官と停戦交渉を開始することとなった
15:00
「我が軍の要求は、まず停戦です。武器引渡しの交渉はその後に・・・」
「ダメだ!即時、無条件で武装解除をしろ。」
「貴官の国は負けたのだぞ?それとも、無駄に戦いを長引かせて犠牲を増やしたいのか?」
「参謀長!」
20:30
日本軍大観台陣地
『馬鹿者!とりあえず、停戦することを交渉に行かせたまでで、その他の条件は許可していない!』
最前線
日本軍側陣地
「報告、敵は戦車を揚陸。弾薬・物資共に補給を完了したようです。」
ズドーン!
四嶺山
山田大隊
ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!
「ノモンハンの仇だ!撃て!撃てー!」
士魂部隊
「ああ、しかも奴ら、こっちで停戦命令が出て戦闘が出来なくなった瞬間に、一気に攻撃してきやがった。停戦命令がなきゃせっかく、殲滅できる所だったのに・・・」
22:00
村上大隊
「もはや、我々に残された戦力は少ない。故に、これより山田大隊に戦場を任せ、南部へ移動する。」
「それに戦争は、本来なら終わっている。これ以上、部下の犠牲を増やす必要は無いからな・・・」
8月20日
山田大隊
ズダダダダ!
士魂部隊
師団本部
「敵部隊、なおも攻撃を停止せず!山田・野口両大隊が撃破したようですが・・・」
「・・・・ソ連軍に声明を送る。」
「爾今貴方において苟も戦闘行為に出づることあらんか、予は断固として貴軍を撃滅すべきことを厳粛に声明するものなり。」
8月21日
06:00
『テイセンスベシ ブキヒキワタシモ リョウカイス』
「師団本部に意見具申を!終戦後に侵攻してきたのは奴らのほうです!」
エピローグ
「この日、昭和20年8月21、幌莚海峡のソ連軍艦上で休戦協定が正式調印され、占守島の戦いは終わりました。」
「そして8月23日。占守島の三好飛行場にて武装解除が行われます。勝者が敗者に武装解除される。こんな理不尽なことはありません。」
「ソ連兵は日本兵の持ち物を我先にと略奪。しかも、略奪したものの使い方がわからずに怒るとか・・・・」
「ところで、何でソ連軍は終戦三日後に占守島を攻撃したのか?それは、プロローグでも書いた通り、北海道を占領する必要があったから。」
「正式には北海道の留萌〜釧路を結ぶ線から北側ですね。スターリンは、対日参戦の見返りに南樺太・千島列島をソ連領とする密約を米英と結んでいました。しかし、ルーズベルトの急死やソ連共産主義を脅威と考えるトルーマン大統領の就任で情勢は一変します。密約が果たされない可能性が出てきたのです。」
「さらに、北海道北部の占領をアメリカに要求。これはさすがに拒否されたけどね。」
「しかし、スターリンは諦めませんでした。米軍上陸前に占領の既成事実化を図ろうと、樺太・千島への侵攻作戦を強行。そして、千島を一気に攻めくだり北海道北部までを占領する予定だったのです。」
「でも、ソ連軍はその作戦の最初の一歩で大きくつまづいた。占守島での被害は、日本軍側の戦死者が300〜700に対し、ソ連軍側の戦死者は3000〜7000。そりゃ、最初の戦闘でソ連は戦死傷3000人を出したんだから、被害も大きくなるって。」
「結果、占守島でソ連が手間取ってる間に米軍は北海道に上陸。北海道の分割占領だけは避けられました。朝鮮半島やドイツの例を見ても分かるとおり、民族の分割は悲劇を生み出します。これを阻止した占守島守備隊は正に英雄でしょう。」
『占守島の戦いは、満州、朝鮮における戦闘より、はるかに損害は甚大であった。8月19日は、ソ連人民の悲しみの日であり、喪の日である』
「さて、占守島にいた彼らがその後どうなったのでしょうか?」
「独航船で脱出した日魯漁業の女子挺身隊員は、5日後、無事北海道に到着しました。そして、その連絡は占守島にも来たのです。」
・
・
・
「女はいねぇがぁ〜女がいるはずだぁ〜」(注:帝国軍人は全員男という設定です。)
「ソ連軍の奴ら、女子挺身隊の娘たちをまだ探してる。もういないのに。」
「参謀長、大尉、北海道から入電です。『全員、無事ニ北海道ニ着イタ』」
・
・
・
「しかし、日本兵達は・・・・・」
「日本に帰国させると言われて、船に乗せられそのままシベリアに抑留。話によれば、北日本を獲得できなかった代償だとか。全く、どこまでもデタラメな国なんだから・・・・」
・
・
・
「私は、関東軍にいてね。彼にはいろいろとお世話になったのだが。池田さんはどうされてる?この収容所にいるのか?」
「・・・・ソ連軍との戦闘で戦死されました。」
「・・・・そうか・・・・池田さんはしあわせだなぁ・・・・こんな所で惨めな思いをしなくて・・・・・」
・
・
・
「さらに、戦後の日本も彼らには決して優しくありませんでした。終戦後の戦いを話しても、『犬死だ』『馬鹿なことをしたもんだ』『せっかく戦いが終わったのに余計なことを』という反応しか。」
「行政側も、彼らに冷たかった。戦後50年経ってようやく慰霊祭が行われても、追悼の辞は内閣総理大臣でも厚生大臣名でもないもの。北海道知事からは花の一輪も供えられない。厚生省の担当者は『私は身内に戦死者がいないので遺族の気持ちがわかりません』と言い、遺族が不満を言うと『それなら慰霊祭をやらない方がいいというのか』と言う。」
「これが、北海道を日本を、そして国民を護った英雄に対する日本人の態度です。彼らは何のために戦って散ったのでしょう?これが池田連隊長や英霊が守った祖国の姿なのでしょうか?それは・・・それは、あまりにも悲しすぎます。」
「教育現場やマスコミでも悲惨な負け戦は伝えるけど、勝ち戦は絶対に伝えない。だから、忘れ去られていく。占守島の栄光は、教えるべきだと思うんだけどね。」
「だから今、ここで伝えようとしているのです。8月18日は、占守島の戦いの日ということを覚えていてください。」
「私達は忘れません。そして、これを見たあなたたちも忘れないでください。侵略者から国土を守った英雄達の戦いと、大東亜戦争最後の大勝利を。」
<終わり>
(このページのアイコンは、maaと愉快な仲間たち様及び大東亜戦争コンテンツ様のを使用させていただいています。)
2007-08-17 番外編(前編) 占守島の戦い〜日本を護った英雄達〜
「さて、『Snow Wind〜栄光の駆逐艦“雪風”』を楽しみにしていた良い子のみんな。今回は、雪風の第四話ではない。上に書いてある通り、番外編を書くことにした。」
「イントロダクションでも説明したが、ずっと雪風の戦史を追う本編と、作者が興味を持った戦闘などを書く番外編にこのコンテンツは分かれている。本来ならばもう少し、時間が経ってから書くはずなのだが、時期が時期だったからな。」
占守島の戦い〜日本を護った英雄達〜
■[番外編 占守島の戦い]前編
プロローグ
「さて、今回説明するのは、日本の未来を守った終戦三日後の戦闘について。千島列島最北端の島である占守島で行われた戦いだ。」
「日本陸軍最大にして最後の勝利。忘れられた戦いか・・・・・」
「この戦いの主役は、第九十一師団と戦車第十一連隊だ。堤不夾貴中将率いる第九十一師団は、人員・装備共に最精鋭の2万5千の兵から構成されていた。そして、戦車第十一連隊(通称:士魂部隊)の隊長は、『戦車隊の神様』池田末男大佐となっており、戦車64両(一式中戦車・九七式中戦車・九五式軽戦車)*1を保有していた。」
「池田大佐は、さまざまな伝説を残している。しかし、ちょっとここに書くには時間が足りない。これに関しては、各個人で調べてくれ、としか言えないな。」
「さて、なぜ、終戦三日後に戦闘が行われたか?それについて少し説明しよう。」
「当時、全千島列島及び南樺太は日本の領土だった。」
「南樺太は日露戦争において、北方四島より北の北千島列島は樺太千島交換条約で手に入れたもので全く大東亜戦争と関係ない。本来なら、日本が手放す必要は無かったのだが・・・・・」
「昭和20年8月9日、ソ連はヤルタ秘密協定に基づき日ソ中立条約を破棄、日本に宣戦を布告した。」
「中立条約はまだ有効であり、日本は降伏の意思を示していた!それを知っていながらソ連は、日本に侵攻したのだ!満州国境は瞬く間に突破され、11日には南樺太への侵攻が開始された。満州でも樺太でも日本軍は強固な抵抗続けるが、戦況不利なのは確実!それでも日本軍将兵は戦った!日本軍の威信と、未だ残る日本人のために!」
「8月15日、日本は連合国に降伏した。しかし、ソ連軍は侵攻を停止せず、戦闘は続行された!同日、ソ連軍最高統帥部は千島列島への侵攻を決定!占守島への上陸作戦が発令された。終戦後の戦争が始まったのだ!」
「奴らの目標は北海道の占領。そのために千島列島と樺太を一刻も早く占領したかった・・・・・」
「それと補足説明だ。登場人物は極力、実在した人の名前を使っているが、物語の都合上フィクションの人も多数登場している。混乱するから、今のうちに言っておこう。」
昭和20年8月15日
第九十一師団
「堤師団長、第五方面軍より『十五日正午重大放送があるから各部隊は各部署において洩れなく拝聴せよ』との連絡が入りました。」
第九十一師団参謀長 柳岡 大佐
「わかった。参謀長は各部隊への連絡を頼む。」
第九十一師団師団長 堤不夾貴 中将
「第九十一師団本部より各部隊へ。重大発表有り、本日正午までに将校は儀式の軍装にて集合せよ。」
戦車第十一連隊(士魂部隊)*2
「はい。重大発表があるため、正午までに将校は儀式の服装にて集合せよ、とのことです。」
池田連隊長直属、通信係将校 佐藤三男 少佐
戦車第十一師団第四中隊隊長 伊藤力男 大尉
「連隊長はなぜ、ご自分で洗濯をなさっているのですか?確か当番兵が・・・・」
「ああ、自分のことを自分でやるのは当然だろう?それに彼らは国に奉公しているのであって、俺に奉公しているわけではないからな。」
同日12:00、九十一師団通信室
「ダメです。電波状況が悪すぎます。」
そして、夕刻・・・・
「・・・・・・第五方面軍より連絡がありました。内容は・・・・」
「戦争が終わったということなのだろう。陛下の意志ならば仕方あるまい。では、内容を発表してくる。」
「将兵諸君に継ぐ。正午の放送は、陛下が終戦の詔書を読み上げたものであり、我が国はポツダム宣言を受諾し、連合国軍に降伏することとなった。」
「大本営より『一切の戦闘行動禁止、但しやむを得ない自衛行動は妨げず、その完全徹底の時期を18日1600とする』という命令も出ている。本日より終戦業務に移行し、速やかに武装解除を行う。以上だ。」
士魂連隊
「・・・・ということで、我々は明日より武装解除を含む終戦業務に入る。」
「中隊長!それは本当のことなのですか?!」
「陛下が終戦の大詔をご自分の声で読み上げたとのことです。」
「陛下が?!」
同日、ソ連軍
「本日、同志スターリンは千島列島攻略を命じた。」
「目標は、北海道北部の占領。米軍が上陸する前に取る必要がある。」
「第一上陸地点は占守島。ここを攻略した後、南下する。なに、満州や樺太の戦闘より楽であろう。」
16日
占守島北部
独立歩兵第282大隊(通称:村上大隊)
「・・・陛下のご命令とあっては・・・・」
「私は明日、部隊長会同に出席することになっている。そこで、詳しいことも聞けるだろう。留守は、頼んだぞ。」
占守島南部
日魯漁業缶詰工場
「いや、なんか空襲が無くなったなぁと思ってはいたんだけどね。」
「全く、これからどうなるか、分からないって時に・・・昨日、陛下が終戦の詔書を読み上げられて、日本が降伏したことを伝えられたのよ。」
「安心してください。内地から迎えが来るはずです。」
「はい。皆さんは迎えの船が着き次第、内地へ帰れますよ。」
「ただ、何日かかかりますので、それまで待つことになりますが。きっと大丈夫でしょう。私も、皆さんと一緒に港へ毎日行きますので。」
師団本部
「参謀長、兵たちの様子はどうだ?」
「師団長・・・・やはり、動揺しているようです。昨日から今日にかけ自決者が相次いでいます。」
・
・
・
・
食事時
「終戦ってことで、物資を節約する必要が無くなったんですよ。」
「そりゃ親孝行になるな。俺のところも、まずは親の手伝いからだ。さて、航空機の魚雷も全て処分したし、我が愛機もそろそろ廃棄せねばならんな。」
「海軍の航空隊もなかなか大変なようですね。」
休憩時間
「ところで、中尉は内地に帰ったら何をしたいですか?」
「娘がいるから・・・まず、一緒に遊んでやりたい。少佐殿は何をしたいですか?」
「私は、やはり両親の手伝いです。お互い早く帰れるといいですね。」
・
・
・
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17日
部隊長合同会議
「いよいよ、明日1600をもって完全停戦となる。占守島を含む千島列島は米軍が接収し、諸君らは内地に帰還できるであろう。これまで、よくやってくれた。万一、ソ軍が上陸する可能性がないでもないが、この場合は戦闘を行なわず、爾後の命令指示に従い行動せよ。良いな?」
「それと、村上大隊は最前線だから軽挙妄動せぬよう。また軍使が来たら紛争を起こさず直ちに連絡せよ。」
港
「今日のも美味しいだろうし、明日もきっと美味しい料理が出てくるよ!」
士魂連隊
「ご苦労。あとは明日、海没処分を行う。今のうちに、別れを惜しんでおけ。」
「中隊長殿!その服は?!」
「ああ、これか?『内地帰還に備えて新品の被服の交付が行なう』との連絡が来ていたはずだぞ。お前達、まだなのか?」
「いえ!これから行くところであります!せっかく内地に帰るのに、汚い服じゃ笑われちゃいますからね!」
「我ら幹部も、停戦協定時にきちんとした服を着てないとな。敗北したとはいえ、まだ誇りは失っていない。」
その日の夜
国端崎
第一砲兵隊
第一砲兵隊隊長 加瀬谷陸男 中佐
「第一砲兵隊長の加瀬谷中佐であります。何かあったのですか?」
『・・・・もし、万が一、ソ軍がもし上陸したならば、これを邀撃せよ。以上だ。』
「師団長命令だ!各部隊への連絡を至急行う!」
「第一砲兵隊隊長加瀬谷中佐より国端崎及び小泊崎に展開する各部隊へ。敵軍上陸に際しては、これを水際に撃滅すべし。繰り返す、敵軍上陸に際しては、これを水際に撃滅すべし。」
<後編に続く>






































































