エキスポランド「風神雷神II」脱線1名死亡

遊具施設は、同じ国土交通省でも旧建設省の管轄。最近のジェットコースターはかなり速度が出ますから、鉄道車両並みの整備体制が必要な気がします。

5日12時50分頃、「エキスポランド」で、ジェットコースター「風神雷神II」(6両編成)が脱線し、2両目にいた女性客が車両とレール左側の手すりに挟まれて死亡、他の乗客19人が重軽傷を負った。大阪府警は、車軸の一部が折れて車輪が脱落し、車両が左側に傾いたとみて、業務上過失致死傷の疑いで吹田署に捜査本部を設置し、6日にもエキスポランド社など数カ所を家宅捜索する方針。
風神雷神II」は「風神」「雷神」の2編成(各6両)。定員24人で、1両に4人が直立した状態で乗り込み、両肩付近の安全バーで固定される。事故を起こした風神には当時、20人が乗車し、2両目には4人がいた。
風神雷神II」は、各車両の左右にある5つの車輪でレールを上下と外側から挟み込む状態で走行する。今回の事故では、2両目の前部左下にある車軸の一部が破断し、車輪が脱落したとみられている。車軸は直径5cm、長さ約40cmで、合金材「SNC」製という。1992年の営業開始以来1回も交換されていなかった。
コースの全長は約970m。風神は、終点手前約250m付近で停車。その手前約30m付近で車輪などが落下し、さらに約240m手前の急降下が始まる付近で、ボルトが付いた車軸左側の先端部(こぶし大)が落ちていたという。捜査本部は終点手前約520m地点で、車軸が折損した疑いがあるとみて調べている。
エキスポランド社の説明によると、「風神雷神II」は、建築基準法などで、年1回、目視の定期検査が義務づけられており、同社は毎年2月頃に実施。あわせて車両を分解する点検も自主的に行っていたが、今年は開園35周年記念のアトラクションを新設するため、分解点検は今月15日から始める予定だったという。
(2007年5月5日=asahi.com

「そもそも任意規格のJISに反しているのを不適切と非難するのは責任逃れ以外の何物でもない」と、小一時間問い詰めたい気分です。
周期だけではなく走行距離、最大速度、最大Gでも押えておくほうがよいでしょうね。

施設側が今年1月の定期検査の際に車軸の傷の詳細なチェックを怠ったのに「良好、指摘なし」と市に報告していたことについて、国土交通省の安富正文事務次官は7日の定例会見で「JISの検査標準に基づいて検査しておらず、不適切」とエキスポランド社を批判した。
ただ、建築基準法や関連政省令は車軸のチェック方法を具体的に定めていない。国交省も「JISは必ずしも義務でなく、エキスポランド社がただちに違法とはいえない」という。こうしたあいまいさが、現場の誤解と検査の不徹底を招いている恐れがあることから、「検査制度のあり方を今後検討したい」としている。
ジェットコースターなど遊戯施設の安全チェックについては国交省がJISを制定。「車輪装置は、回転状態が良好であり、取り付け部に緩み、および著しいさび、腐食がないこと」「車軸は、亀裂および甚だしい摩耗がないこと」「車軸は、1年に1回以上の探傷試験をおこなうこと」「車輪を取り付けるピン、ボルト、ナットなどの締め付けは適正で、かつ、緩み止めが施してあること」などとしている。
(2007年5月5日=asahi.com

<2007年5月23日追記>
コースター等に関する緊急点検結果が発表されました。まだ報告がない50基というのが、すごく気になります。強制規格化するしかないでしょうね。

  • 緊急点検の対象
    • 建築基準法施行令第138条第2項第2号*1に掲げるもののうち、コースターその他これに類する高架の遊戯施設(軌条を走行するもので勾配が5度以上のものに限る。)
  • 緊急点検の実施状況
    • 対象遊戯施設=306基
      • 点検結果が報告された施設数=256基
        • 問題がない施設=249基
        • 車輪、車輪軸、軸受、台車及びそれらの取付部並びに軌条について、錆、腐食、摩耗、亀裂、欠損、破損等があった施設=7基
          • 是正された施設=6基
      • 点検中の施設=50基
  • 車輪軸に係る探傷試験の実施状況
    • 設置後1年を経過していない施設=9基
    • 設置後1年を経過し、過去1年以内に探傷試験を行っていた施設=178基
    • 設置後1年を経過し、過去1年以内に探傷試験を行っていなかった施設=119基
      • うち過去に一度も探傷試験を行っていなかった施設=72基

(2007年5月23日=国土交通省住宅局)

<2007年6月24日追記>
同型車なので、こうなっても不思議はないのですが、それにしてもちゃんと検査していたのかと小一時間問い詰めたい気分です。

事故車両の「風神」号とペアで交互に走っていた「雷神」号の車軸の一部にも亀裂が生じていたことが大阪府警の調べでわかった。亀裂は目視できる状態で、府警は破断のおそれもあったとみている。車軸の微細な亀裂などを調べる「探傷試験」が風神、雷神ともに一部の車軸しか実施されていなかった疑いがあり、府警は業務上過失致死傷の疑いで同社から事情を聴いている。
調べでは、亀裂は雷神の左側の車軸(長さ37cm)に見つかった。車体中央寄りの車軸先端部のボルト(直径3.6cm)にあり、目に見える状態だった。車軸は大小五つの車輪からなるユニットと車体を固定している。
府警が詳細に調べたところ、亀裂は車軸内部にまで延びていた。亀裂が見つかったのは、折損した風神の車軸部分とほぼ同じ個所だった。風神は、金属疲労などで車軸内部にまで亀裂が達した結果、車軸が折損して脱線したとみられている。
同社は、風神雷神の探傷試験を毎年1回実施してきたと説明しており、昨年1月末の試験では車軸に異常は見つからなかったとしている。しかし、これまでの府警の調べに、同社の検査担当者は、風神雷神について一部の車軸しか探傷試験の対象にしていなかったなどと話したという。
神戸大大学院の福岡俊道教授(材料力学)は「ジェットコースターの車軸は人間で言えば『アキレス腱』にあたる。目視できるほどの亀裂を探傷試験で見過ごすことは通常考えられない」と指摘。同社事業部の広報担当者は、雷神の車軸の亀裂を把握していないといい、過去の探傷試験の実施状況は「捜査中であり、コメントを差し控えたい」としている。
(2007年6月24日=asahi.com

*1:ウォーターシュート、コースターその他これらに類する高架の遊戯施設