□月 ●日  No1977 魔法使い達のゆめ


霧雨のご息女を除く魔法使いという人種は概ね人間をやめている。
そもそも魔術の実験などを行うとき、自分の体を改造しまくるなんていうのはよくある話。
そうでなければ長い寿命なんて手に入らない。
しかも長い寿命を手に入れるのは月面人とアクセスするまで謎に包まれていたのだから
無茶なことをして体を壊す者もとても多い。


朝倉の場合はどうだろう。彼女はたしかに魔法使いだったが月面人の長寿命に関する技術を
即座に応用、分子工学ベースの寿命延長に成功したとされる。
他にも寿命を伸ばした者も居るが、だいたいが月面の技術を秘法として持っているケースが
多いらしい。 中には蓬莱の薬の一部機能を殺した薬品も出回っていると言われる。
中国の皇帝がほしがったのはそちらのほうだそうだ。


本題に戻そう。
八雲商事で霧雨のご息女が監視対象になっているのは有名な話だが、これにはひとつ
重要な要素がある。 それは人間のままで魔法使いになれるかと言うことだ。
それこそが霧雨店の主人との契約であり、彼女が人の道を外さないようにと願う親の心でもある。


幸いにして八雲商事には幾つかの成功例があった。
今は黄昏酒場群にいるOBの面々や、経理部にいるプロフェッサーもそう。
私もその末席にいる ほんとうのほんとうの末席で雑魚未満だが。


彼女は八雲商事 そして魔法使い達の技術の結晶でもあるのである。
他の魔法使いが霧雨のご息女に興味を持つのは至極当然だ。
それこそが彼女に掛けられた保険でもある。 もっともその保険は友情の形で
担保されているようだが。


そんなわけで、彼女が長寿命を手に入れようとしても阻止するというのが我々の希望である。
仙人が出てきたタイミングで丁度良いので言っておく。


余談だが、私はある意味人間をやめているというのはどういう意味か誰か教えてください。