夏コミ:ライトノベル積読会さんの『適当ライトノベル読本 vol.7』に寄稿させていただきました!

直前になってしまいましたが、告知です。
コミックマーケット78の二日目(8/14:東D-17a)に出店する、ライトノベル積読会さんの新刊、「適当ライトノベル読本 Vol.7 特集:涼宮ハルヒの憂鬱」に寄稿させていただきました。詳しくは以下のid:ni-toさんの告知記事をご覧いただけたらと思います。
http://d.hatena.ne.jp/ni-to/20100724/1279977611
僕の原稿のタイトルは『ライトノベルのターニングポイント――涼宮ハルヒシリーズについて――』で、現在のライトノベルの流れの中で『ハルヒ』がどのような位置にあるのか、ということを前島賢さんの『セカイ系とは何か』を主に参考にしながら、「日常/非日常」の描かれかたに注目して書いてみました。まあ、つまり自分がこれまで書いてきたこととほとんど同じことを書いてるってことですねw

僕の原稿はともあれ、告知記事を見ていただければわかるとおり、表紙イラスト、中身の原稿のバリエーションともに、ライトノベル評論誌としては、素晴らしく充実した冊子となっています。僕も早く読みたいです(直接会場に行けないのが残念すぎる!)。
それでは、よろしくお願いします。みなさん楽しんできてください!

劇場版・涼宮ハルヒの消失の感想ととあるシーンの演出について。

 面白かった。京アニらしい丁寧な作りになっていて、期待を裏切られなかったと思う。全体的に、キョンの描き方が非常にうまいな、と感じた。特によかったのはキョンが谷口からハルヒの情報を聞きすところで、全体的に漂っていた圧迫感と緊迫感が開放されてとても気持ちよかった。多分一番泣きそうになったのはあのシーン。多分次点がPCに長門のメッセージが表示される場面。あれ「憂鬱」でも大好きな演出なんだよなー。
(以下激しくネタバレにつき格納)

続きを読む

2009年上半期ラノサイ杯に投票します

というわけで、大分ぎりぎりになってしまいましたが「2009年上半期ライトノベルサイト杯」に投票します。
まずは新規から

  • 新規部門

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! (ファミ通文庫)

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! (ファミ通文庫)

主人公の悩む姿がとてもリアルであること、そして新しい答えの方向性を出してしまったことがやっぱり凄いことだと思う。
ロウきゅーぶ!
ロウきゅーぶ! (電撃文庫)

ロウきゅーぶ! (電撃文庫)

小粒な感じではあるのだけれど、青春スポ根モノとして素直に楽しめた。コーチとしての主人公の姿がとても良い。
『勇者と探偵のゲーム』
勇者と探偵のゲーム (一迅社文庫)

勇者と探偵のゲーム (一迅社文庫)

「メタ」とか「ネタ」とかが最近のライトノベルには流通していると思うんだけれど、その流れに対するひとつの意思表明、と読んだんだけれどどうなんだろう。
電波女と青春男
電波女と青春男 (電撃文庫)

電波女と青春男 (電撃文庫)

そういえばこれ新規だったw 日常への回帰を描いたものとしてとてもキレイな作品だと思う。
次は既存部門

  • 既存部門

ラノベ部2』

ラノベ部〈2〉 (MF文庫J)

ラノベ部〈2〉 (MF文庫J)

一巻はそうでもなかったんだけれど二巻で面白くなった。メタ論が、とかいう話だけでなく、キャラクター達の読み手としての強さが描かれていたから。確かに「憬れる」小説だと思う。
あとは好きな作家のシリーズを。
境界線上のホライゾン2』
さくらファミリア!3』
ANGEL+DIVE CODEX 1. HYPERMADEN 』
さくらファミリア! 3 (一迅社文庫 す 1-4)

さくらファミリア! 3 (一迅社文庫 す 1-4)

ANGEL+DIVE CODEX (1) .HYPERMAIDEN (一迅社文庫 し 1-4)

ANGEL+DIVE CODEX (1) .HYPERMAIDEN (一迅社文庫 し 1-4)

『境ホラ』についてだけ触れておくと、より戦略ゲームっぽくなってきた。政治・経済の話が物語の根本にあるからというのもあるのだろう。個人のドラマより状況の動きが優先されているように感じられる。だからこそ、それぞれのキャラクターが自分の役割を果たすのがとても格好いいのだけれど。ただ、『おわクロ』にあった、例えば「本気とは何か」という主人公(佐山)の悩みのような個人の問題が薄味になってしまっているように思えるのも確か。

以下、投票コード
【09上期ラノベ投票/新規/9784757746466】
【09上期ラノベ投票/新規/9784048675208】
【09上期ラノベ投票/新規/9784758040822】
【09上期ラノベ投票/新規/9784048674683】

【09上期ラノベ投票/既存/9784840126373】
【09上期ラノベ投票/既存/9784048678483】
【09上期ラノベ投票/既存/9784758040556】
【09上期ラノベ投票/既存/9784758040679】

『いつも心に剣を』 著:十文字青

『いつも心に剣を』を読んでみて、ANGEL+DIVEシリーズが面白くなってきたのはやっぱり十文字青の文章が好きになってきたから、というのが大きいな、と改めて思った。十文字青の文章には独特のリズムがあるし、癖がある。特に、キャラクターが何か考えたり行動したりする場面では、そのキャラクターが考えていることや目にしたことを順番に書き連ねていくような文章を書くので、そのリズムはときどき小説というよりも詩にも見えたりする。その描写があまりにも密度が高いから、慣れないと読んでいてまあ、疲れる(実際ANGEL+DIVEの一巻は読みづらかった)。
ただ、この書き方でしか出せない臨場感というのは確かにあって、ANGEL+DIVEの二巻ではキャラクターの内面を見事に書き上げているの読んで、これはすごいなと思った。今回読んだ『いつも心に剣を』でもその文体はいかんなく発揮されていて、主人公のレーレ、ヒロインのユユは、彼の文章によって「生きた」キャラクターとなっている。それでいてANGEL+DIVEより読みやすかったので素直にとても面白い作品だった。
先々月の末にに発売されたSFマガジン五月臨時増刊号、『STRANGE FICTION』の巻末に載っている111人の作家レビューの中に、十文字青の名前もあって、レビュアーの前島賢は、十文字青のキャラクターはファンタジー世界を舞台としながらも、今を生きる若者の率直な姿のように見え、彼らの若い派遣労働者を思わせる生の声をひたむきに描写していくと述べているのだけれど、その「生」っぽさは彼のそのリズムによって生み出されているものなのだな、と思った。
薔薇のマリアは昔読んで文章のよさがわからなかったので続きを読まなかったのだけれど、今度読み直してみてもいいかもしれないなー。

いつも心に剣を 1 (MF文庫J し 5-1)

いつも心に剣を 1 (MF文庫J し 5-1)

2009春の文学フリマとソフラマ迎撃オフに行ってきました!

昨日は文学フリマお疲れ様でした! 人とたくさん会えたり本も予想以上に売れたりオフ会を開いてもらったりで最高に充実した日でした。蒲田も広かったけれどそれに負けないくらい人も多かった。そして暑かった。
自分のブースにいることがやっぱり多かったのですが、それでもいろいろな人に挨拶がてら色々と買い物をしてしまいました。そっちの意味でも満足。以下買ったものリスト

知り合い関係が多くなってしまったのは色々と仕方が無いのだけれど、他にも色々見て回りたかったなぁ。全体的に冊子の装丁が綺麗になって来ていた気もするのでじっくり物色する時間が無かったのは残念。買ったものはできるだけ早く読みたいなー。

オフ会では幹事のakoyaさんを初めいろいろな方にお世話になりました。桜庭一樹やその周辺の作家や作品について色々話が聞けてとても面白かったです。ただ途中から、条くんとni-toさんと三人を中心に話に熱中してしまって他の人とあまりお話が出来なかったのは申し訳なかったです。次はエロゲの話ももっとするよ!>エロゲクラスタの方々

しかし、何よりオフ会で思ったのは、やっぱりみんな面白い話をするなー、ということです。今回のオフ会で話した人たちというのは自分よりもよっぽど本を読んでいるし、面白さについて人に伝えることができると思う。ソフラマ、という冊子をこれからどうつくっていくのかと考えたとき、このオフ会で話したもらったようなことを広げられたらいいなー、とも思いました。批評とか言説の必要性、とかを考えてしまうとちょっとややこしくなってしまうのだけれど、もっと単純に純粋に、自分たちはライトノベルをこんな風に楽しんでいる、こういう風に楽しめる、ということを発信していけたらなー、と。それはきっと面白いものになるんじゃないかという気がしています。

いや、しかし本当に楽しい一日でした。改めて、皆さん本当にお疲れ様でした、そしてありがとうございました!

文フリ出ます

五月十日に行われる、2009年春の文学フリマに「ソフラマ」で出ます。ブース番号はE-27です。
今回は新刊に初のオフセット本、『ソフラマ!03号』を持っていきます。目次と表紙はソフラマ公式ブログに載せているのでそちらをご覧ください。値段は500円です。

今回、僕が書いたものは、最近のライトノベルにおけるキャラクターの役割から面白さを見出してみよう、という論考です。タイトルは「キャラクターからプレイヤーへ」。いくつかの作品に通じる、ひとつの読みかたのモデルを考えてみました。自分でもはじめて書いた類の文章なので不安ではありますが、どうぞよろしくお願いします。

また、今回僕はほとんど関われていないのですが、隣のブースでは筑波批評社ツイッター本や新刊代わりのコピー本を用意していますのでそちらも是非。
【追記】
当日の詳しいご案内は以下の通りです。

会場の配置図はこちら。入口を入って右に曲がって突き当たりを左に歩いていくとあるはずです。
会場:大田区産業プラザPio
アクセス:京浜急行本線 京急蒲田駅 徒歩 3分、JR京浜東北線 蒲田駅 徒歩13分
時間:11:00〜16:00

となっています。当日は色々と面白そうなイベントを企画していらっしゃる方もいるみたいです。とても楽しみですね!寝坊しないように気をつけなきゃ。

『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』(著:田尾典丈)

とても、面白かった。主人公にかなり感情移入してしまって、色々身悶えながら一気に読み終えてしまった。『ラノベ部』にしてもそうだったけれど、主人公がプレイヤー、もしくは読者であるというのは反則的だと思う。だって、それだけで楽しめてしまうから。
この小説は、ギャルゲーの世界が現実になってしまったら、というネタにしかならない話を本気でやってしまった作品だ。前半から後半にかけては、ゲームと現実とを比べることでゲームの都合のよさや、システム上の矛盾点から来る問題に主人公の武紀が直面し、それをどうにか解決していく話となっている。そこを突っ込むか、という点(主人公がゲーム上は18歳以上だと言うところまでも!)まで使った話の構成は、なかなか意外性があって面白かったし、試練を乗り越えた武紀が「ヒロイン全員幸せにしてみせる」と言う決意はご都合主義に生じる責任を引き受けていると言う意味で格好良かった。
しかし、この小説で一番考えさせられたのは最後の主人公の選択だ。武紀が「全員幸せにしてみせる」と言ったヒロインはしかし、武紀自身の最初のミスによって全員消えてしまう。ヒロインがいない日常に戻ったことに喪失感と、しかし自身の成長を感じていた武紀に、もう一度ヒロイン達を現実に取り戻せる選択肢が現れる。ここで、武紀はヒロイン達をもう一度呼び戻す、つまり現実をギャルゲーの世界にすることを選ぶのだが、僕自身は武紀のこの選択をとても面白いと思った。
おそらく、ここで現実の日常を生きる選択をする姿のほうが綺麗なのだろうとは思う。そこでまたゲームの世界を選ぶのは成長してない証拠なんじゃないのか、という気もする。だけれど、僕はそこでゲームの世界を選ぶこともある種の成長の証なんじゃないだろうかとも思うのだ。
ゲームに限らず、フィクションを現実に持ってくるのは(田中ロミオの『AURA』的な)痛々しさを伴ってしまう可能性がある。だからこそ、『AURA』でのメッセージは「普通を頑張れ」であって、とても説得力があった。そこではフィクションと適切な距離を取れることが成長のように描かれていたように思う。
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』はではそれがまったく逆だ。最後にゲームと言うフィクションをまた引き寄せている。だけれど、だからと言ってこの姿が『AURA』の妄想戦士たちのように痛々しいかと言うとそうではない。なぜかというと武紀はゲームの都合のよさを全部引き受けているからだ。現実でギャルゲーみたいに振る舞おうとするのは辛い、ということを知った上で武紀はゲームの世界を現実に持ってくることを選んだ。ここで武紀は「はい」と言えないことは逃げていることだ、と言うのだが、僕はこの言葉に、『AURA』とは違う、成長の姿を見ることが出来ると思うのだが、どうだろうか。

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! (ファミ通文庫)

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! (ファミ通文庫)