(35)遅刻常習者から救い出してくれた「目覚し時計」



長年愛用してきた「目覚し時計」が故障して遂にお別れの時が来た。

思えば血気盛んだった30代後半、自己主張が強く歯に衣を着せずズバズバ物を言う私は、事ある毎に上司や同僚と衝突し、憂さ晴らしに飲み歩くのでなかなか寝付けず、来る日も来る日も遅刻が続いて「このままだと間違いなくクビだな」と追詰められていたとき、神保町の裏通りの小さな時計屋で見つけたこの「目覚し時計」。

てっぺんについている耳のような二つのベルを激しく震わせて「絶対目を覚まさせてやる」と物凄いアラーム音を出してくれそうに思えた。台湾製で1982年頃の価格で二千円。

見事私の期待に応えてくれ、私を遅刻常習者から救い出し、さらに定年まで無事に勤めさせてくれた。「目覚し時計さん、大変お世話になりました」。