ブックスエコーロケーション

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ガッチャマンクラウズ最終話 引き金を引くのはけっきょく人間


 この夏を全力で駆け抜けた少女の物語がついに最終回を迎えました。
 リソースの問題か惜しむらくはどうやらカットされたシーン*1がいくつかあるようで、描写仕切れていないところがあり、それによって解釈のしがいが生じてしまっておるようなのですが、実際のストーリーとしては非常に穏当なところに落としたなぁと思いました。新しい変革をもたらす可能性のあるツールが広く行き渡るまでの紆余曲折とその顛末を描いたということになりますかね。なので、ツールによって人類がどのように変化していくのか、そのズレ、あるいはその先にあるだろう見たことのないビジョンが提示されたわけではないということが少々残念ではあります。なんだかんだ言ってそういうところを期待していて見てたので『BEATLESS』や『バレエ・メカニック』や『自生の夢』のようなそういう見たことのないものを見せてくれるんじゃないのかという期待があったんですよねぇ。
 ただGALAXがどうしてもフィクションの外側にあるいまのSNSを下敷きにしたものであり、そのことを踏まえて考えるとやはりどうしても「道具は正しく使いましょう」というテーマになってしまうじゃないかなぁと。おそらくはじめの決断はいままで持っていなかった悪意を自らに取り入れるため/カッツェに世界のすばらしさを教えるためにという意図があると思うのですが、そこにはただ人類の犠牲として悪意を引き受けるために存在するわけではないという描かれ方だとは思います。でもだからこそ超常の力を持つヒーローというよりもキリスト教的な救世主を想起してしまうわけなんですよね。いやガッチャマンに選ばれる前からもしかしてはじめはすでに超越者だったんじゃないのかとか思っちゃいますよほんと。CROWDSをインフラとして使われざるを得ない累もこれからどうなるんだろうというのも気になります。でももしかすると一番の収穫は総裁Xの存在かもしれません。彼女、確実にただのAIを超えてるでしょうあれは。人の善性を誘発するようにゲームを用意するのは何も未熟な人間である必要はないとかそういう感じになるんじゃないんスかね。無人化すべきである。いやもちろんおれの嗜好で捻じ曲げた解釈だとは思いますがね。どうにもそこでまで信じられないみたいだと、――だからこそはじめがトンネルの崩落回で思わず変身してしまうシーンで涙がこぼれてもしまうのでしょう。
 さて久々に熱くなれるアニメでございました。こんなにもひとつものに執着するのはほんとうに久しぶりでそれだけでも貴重なコンテンツであったなぁと思います。でもきっとDVDでは色々と加筆修正があると思うのでそちらを楽しみにしております。とりあえずDVDのレンタルが始まったら1話を日テレオンデマンドと比較してみるぞー。

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*1:おそらく11話のAパート総集編がなく、Bパートと12話Aパートで11話が構成されるのではないかと思われます。でなければ作中で変身後にOPにGスーツが登場するルールに照らすと、12話のOPでODのGスーツ姿が描かれなくなってしまうからです。