『AVATAR』

 12月24日に観た映画として『AVATAR』はふさわしかっただろうか。マイレージを使ってタダで観るつもりだったのだが、「3D」ということで、300円プラスだった。ま、いいか。DVDなどの影響で劇場から足が遠のいた観客を、劇場に呼び戻そうとするための奇策がこの「3D」というのは周知の通り。これからどんどん「3D」映画が公開されるようだ。
 うっかり町山智浩氏の批評を聴いてしまったので、あまり期待せずに観る。考え方によっては、あまり期待せずに観る、という姿勢は、少しでもいいところがあると好意的に評価できるので、いい観方かもしれない。確かにストーリーは、これまでの“インディアンもの”を踏襲しているようで意外性はなかった。パワードスーツ(?)は、同じキャメロンの『エイリアン2』で登場したものよりもずっと精巧になっており、それを含む近代軍隊と原住民戦士たちとのバトルは、『スターウォーズ ジェダイの復讐』の帝国軍vsイウォーク族のバトルを彷彿とさせた(ついでに『ラストサムライ』の近代軍隊vs戦国武将とのバトルも)。文明vs自然という対立図式は、あまりにも稚拙。タイトルにもなっている「アバター」というアイディアは……『サマーウォーズ』を観ちゃったからね。
 ところで、切実にアバターやパワードスーツを必要としているのは……ALSをはじめ重度の病いを抱える者たちだろう。川口有美子さんの『逝かない身体』(医学書院)を読んでいる最中にこの映画を観たというのは、偶然とは思えないタイミング。『AVATAR』の主人公の海兵隊員は、戦闘で足をやられたらしく車椅子生活を送っており、死んだ科学者である双子の兄の代わりにアバターを使って原住民の部族に潜入する。情報を取ることに成功したら、足を治してもらえる、という報酬をちらつかせられながら。こうした舞台設定は、気にならないわけではない。

逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)

逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)

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 みなさま、よい聖夜を。09.12.24