<無人島>虫が大繁殖、消滅の危機 瀬戸内海

6月26日15時3分配信 毎日新聞

 東広島市安芸津町沖の瀬戸内海にある無人島・ホボロ島が、ナナツバコツブムシという虫の大繁殖で消滅の危機にひんしている。無数の虫が掘った穴に波が打ち寄せることで岩が削られ、二つあった岩山のうち高かった方は完全に崩落した。調査を続けている沖村雄二・広島大名誉教授(地質学)は「島の地形を変えるほど大規模で急速な生物侵食の報告は、世界的にも珍しい」と指摘している。
 ホボロ島は1928(昭和3)年の地形図によると、東西約120メートルの細長い島で、最も高い所で21.9メートルあった。昭和30年代に撮影された写真では二つの岩山があり、高い方には松など植物が生えているのが確認できる。現在は、高い方の岩はほとんどなくなり、岩が散乱する砂州に高さ約6メートルの岩が一つ立つだけで、満潮時には大半が水没してしまう。
 地元住民の間で、「台風のたびに島が小さくなる」と言われており、依頼を受けた沖村名誉教授らが昨年、調査を開始。ダンゴムシと同じ甲殻類で体長1センチほどのナナツバコツブムシが無数に生息し、岩に多数の巣穴を開けているのを確認した。島の地質は、風化しやすい凝灰岩がむき出しの状態で、穴が開いてもろくなった岩が波の力で崩れ、急速に崩壊が進んでいるとする結果をまとめた。
 周囲の島では同じ現象は見られない。ナナツバコツブムシの生態は詳しく分かっていないが、沖村名誉教授は「ホボロ島の地質が巣穴を掘るのに適した軟らかさで、ナナツバコツブムシのえさが豊富にあるなどの条件も重なったのではないか」と推測している。
 調査結果は29日午後6時から、広島大総合博物館(東広島市)である公開講演会で発表される。【宇城昇】
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