教授、動く


 東京大医科学研究所が開発したがんペプチドワクチンの臨床研究で、医科研付属病院の患者が消化管出血を起こした情報を、ワクチン提供先の他病院には知らせていなかったと朝日新聞が報じた問題で、記事中でワクチンの開発者などとされた同研究所の中村祐輔教授の代理人を務める弁護士は、「重大な人権侵害であり抗議する」とする通知書を、朝日新聞社あてに送付した。中村教授が28日明らかにした。

 通知書によると、中村教授は問題とされたワクチンの開発者ではなく、記事は「基本的な医学的知識や表現の誤り、事実誤認が含まれている」などと指摘。「がん診療とがん研究の停滞、科学的実証のない治療法への誘導が懸念される」として、すみやかに事実関係や取材経緯について検証し、結果を明らかにするよう求めている。

朝日新聞抗がん剤治験報道について、名指しで取り上げられた中村教授が強い抗議行動をとってきました。学会・患者会などが抗議声明を発表しているのに対し、弁護士を通じての抗議文です。これを無視したり事実無根な主張を出し続けたら、名誉毀損で訴えられるかもしれません。
この件に関しては医療報道を考える臨床医の会という団体も署名活動を始めました。このような団体が、感情的な報道に先走り勝ちなマスコミのいさみ足をけん制できるようになるといいのですが。

日本の学界からも声明


 才能や性格、病気のなりやすさがわかるとした市販の遺伝子検査が増えていることについて、遺伝医学の専門家で作る日本人類遺伝学会は27日、「科学的に確認されていないにもかかわらず、有用であるかのような誤解を与えている場合も少なくない」などとして、監督体制の早急な検討を求める見解をまとめた。

 見解では、遺伝医学の専門家を介さずに、企業やクリニックで、生活習慣病のなりやすさや、肥満、薄毛などの体質、文系・理系の知能、音楽や美術、運動の適性などを調べる検査が広がっていると指摘。こうした検査の多くは、個人の体質を確実に表したり、ある病気を発症するかどうか明確な答えを与えるものではないとし、「専門家にとっては検査の意義さえ疑問視される」と批判した。個人情報保護の対策も不明だと問題視。(中略)

 特に、未成年者に対しては、自己決定権を尊重する理由から、専門施設が行う遺伝病の検査においても原則行わない旨の指針を定めており、子どもの能力や適性の遺伝子検査は「人権保護や差別防止の観点からも十分な考慮が必要」と安易な実施にくぎを刺した。

先日のLancet記事と同様、日本人類遺伝学会も個人向け遺伝子検査に対する声明を出しました。アメリカではFDAが動いてますが、日本だと厚労省になるんでしょうか。トクホのように「厚労省認可」ってつけるようにするのも、少し違うような気がします。やはり医療機器や検査キットのように、きちんと有効性を検証するようにしてほしいですね。