さて、行政側の責任はというと

ボーイズラブ本を18禁扱い→「住民グループ」が猛反発→18禁扱いを解除…大阪・堺市図書館
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1202768.html

 ひきつづき。
 俺も一応図書館人の片隅の片隅に位置するんで、かなり「図書館の自由」に振った話になってるけど、個人的にはこの騒ぎ、もう一歩踏み込んで欲しい。


 そもそも堺市が5000冊もBL抱え込む(あんまり考えたくないけど、5000冊あったらがっちゅん絡みのあるのが100冊なんてありえないと思うぜ……)羽目になったのか、といえば究極的にはリクエストサービスの悪用のせい。
 どこの図書館にも「発売日にレーベルの新刊にリクエストを絨毯爆撃していく利用者」ってのはいるだろうし、あんまりにもそういうのが多いと「いっそ全点購入」という流れにもなる。でもって「見計らい制度」を活用し切れてない、書店が非協力的だなんて事情だと内容を見た選書ができないし、主題知識(まあこの場合はYA図書の動向だな)が薄いと「今何が起きているのか」がわからずにそのまま買ってしまう。もちろん無体な要求をする利用者は感心すべからざる存在なんだけど、公共図書館は彼らの言い分がそのまま通ってしまう苦境にあるというのが現実。
 で、この問題の最大の淵源は、「貸出至上主義」と呼ばれる「図書館の評価が行政の上で貸出点数で測られることによって、貸出点数の上昇のみを追い求めざるをえない図書館経営方針」。司書課程科目で口を酸っぱくして「陥るな」と警告されてる*1のに……。貸出点数が少ないと予算が付かない、予算を付けるためにリクエストの多い本を買う、予算が危なくなる、の無限悪循環。専門書なんかは必然的に貸出回数も少ないし、予算に対するという意味ではあまり効果がないしね。
 これを機会に、堺市市長および市議会は、図書館予算のあり方を考え直すべきだ。数字で変動させず、独立性を確保した予算にね。この騒動で予算を削るなんて話になったらまた同じ悪循環に陥るから。間違いなく。
 あと大阪府内の図書館は早急に相互協力態勢を確立して、「堺市を被害担当館にして自分のところでは買わない」方針を固めてしまうことをお薦めする。せっかく溜め込んでるんだから図書館行政全体の利益になってもらわない手はない。


 それにしても、閉架書庫ってことは出してきてもらうのにいちいち職員に頼まないといけないんだよなあ……。それでもひっきりなしって……。
 未だにエロゲ雑誌買うのも躊躇う俺には真似できないなあ……(←コバルト文庫大人買いする男が何を言うか)。
 ま、購入やめた現状でひっきりなしに借りられてるなら、2年もすればページが外れるとか口絵切り取られるとか盗難とか水濡れとかで自然に除籍されるだろうけどな。

*1:ちなみにこの手の講義で真っ先に槍玉に挙がるのが株とギャンブル(特にパチンコ)系。

アンタッチャブル in 図書館

 運用として18禁規制は妥当だろjk。あまりにも盗難だって多いしな(事実ラノベという枠がはっきりしてなかった頃、文庫新書コーナーに混排していたころの90年代ラノベなんてほとんど残ってない)。しかしそれよりも、

http://www.bk1.jp/product/02054817
こんな表紙や

月華乱舞‐げっかみだれまい (白泉社花丸ノベルズ)

月華乱舞‐げっかみだれまい (白泉社花丸ノベルズ)

こんな表紙や
白衣の悪魔に愛されちゃう? (ガッシュ文庫)

白衣の悪魔に愛されちゃう? (ガッシュ文庫)

こんな表紙や
メイド少年は御主人様が命! (白泉社花丸ノベルズ)

メイド少年は御主人様が命! (白泉社花丸ノベルズ)

こんな表紙をだな、

 開架書庫に置いておくことの方が問題あると思うんだ。内容以前の問題として。
 フヒヒ、起家一子絵好きでサーセンwwwww。ちなみに本文はかなりの地雷だと後輩が言ってた。俺もこの作者のは一冊読んだことあるけどがっちゅん掘られてた。というかぶっちゃけダメBLは突き詰めれば調教ゲー末期のド淫乱ヒロインのノベライズと変わらない。まだバトル寄り、青春小説寄りでそれなりの熱い絆があるとか(ミラとか)ならまだしも、出版点数の大半がタダのエロ小説。
 過去にも「少女小説にBLを含むのか」なんて話題になったことがあって、そのときのみりおんぐらむさんの記事(29日分 http://homepage3.nifty.com/t-snow/diary/0508ge.html)とか見るとわかりやすいかも。まさに「こwれwwはwひwどwいwwww」。まあダメレベルでもかなりブッチ切りのダメな方に吶喊されたみりおんぐらむさんはかーなーり可哀相な事例だと思うけど。

ボーイズラブ本を18禁扱い→「住民グループ」が猛反発→18禁扱いを解除…大阪・堺市図書館
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1202768.html

 まあ「図書館の自由」とかお題目があるから廃棄しろとまでは言わないけどさ(末期患者の人工呼吸器と同じで一回買ったらオシマイなのよ、図書館ってのは)、有識者が廃棄に否定的なのは、図書館の役割、主に憲法上の自由権について重視しているため。別にBLを肯定しているわけではない。そもそも図書館が圧力によってフラフラすること自体が問題なのである。いわば図書館はアンタッチャブルなのだ。


 ヘタすると堺市は、船橋市焚書司書や、同和団体による恫喝と同様に「恣意的な資料排除」として「図書館の自由が脅かされた事例」の仲間入りをしてしまいかねない。で、そうなったらどうなるかというと、図書館司書課程の教科書に記載され、子々孫々図書館の役割を啓蒙するための教材になり続けることになる。
 図書館学という学問は、知る権利を筆頭とした憲法規定はもちろん、『耳をすませば』が十字砲火を浴びるほどプライバシーにも厳しい。


 そうそう、民主党国会図書館になにやら仕掛けようとしているようだが、やめた方がいいと思うね。
 図書館に偏向を強要すると、教科書に記載され、次世代の図書館員に当事者およびそれが属する勢力への疑心を持たせてしまうことは想像に難くない。「森村誠一はロクに考証をしないで本を書く男だ」「焚書司書と同和団体・人権団体は図書館の敵、ひいては憲法の保障する知る権利の敵であり民主主義の敵である」というのと似たような認識を量産しても何の得にもならんだろうに。


 あと図書館を地雷処理犬に使う連中は滅びればいいんだ。というか、ハーレクインと時代小説と火葬戦記買うのやめたら図書館財政って好転すると思うんだけどね。問題のありそうな本は適当に他館から引っ張ってくるべきだ。そのためにこそ相互協力を活用してもいいと思うんだけどねえ。
 てかさ、広山とか峰とか生田とか普通にエロイ推理小説には反応しないわけ? それに『初恋マジカルブリッツ』とか『ROOM NO.1301』とか最近は危ない物が増えすぎてるんだけども。コバルトだって最近は平気でヤってるわけで……『風の王国』とか『汝〜』とか……。結局は線引きの問題といえばそれまでだが、選書基準が甘かったり、貸出至上主義の弊害にもろに曝されてるだのといった図書館行政の問題も含めて、堺市の対応がまずすぎるという結論にしておく。