2008-01-24 異人館で会いましょう
異人館で会いましょう
小説 |
そこはお化け屋敷と呼ばれる洋館だった。
俺がそこに入ったのは、肝試しで、だ。
高校生にもなって肝試しもないだろうと俺は抗議したが、皆面白がっているようで、俺の意見は却下された。
俺の意見が却下された理由はわかる。
俺は極度の怖がりだからだ。俺が怖がる様子を見て楽しもうという計画だろう。少し悔しいので、自分に怖くないと言い聞かせて、震える足で扉を開ける。
ギィィィィィィ。歯軋りのような音で、扉は開く。
「ヒッ!」
思わず叫ぶ。自分の叫び声の方が、怖かった。
「わ!」
思わず叫ぶ。誰かが。また怖かった。
素早く口を抑え、必死で絶叫を喉の奥に押し込める。
「ふふっ」
その俺の様子を見て、その誰かは女の子の声で笑った。
一瞬幽霊かと思う。また叫びそうになる。よく見ると、月光に照らされた足がある。
人間だ。俺は安心した。
「なんだ、さつき、お前かよ」
彼女の姿が全部月光に照らされる場所に移動して、俺は言った。
さつきは俺の幼馴染みだ。イギリス人とのハーフで、生まれつき茶色い髪をしている。
「うん、ここ、好きだから」
煙草を咥え、なつかしそうに、彼女は言う。
彼女はいわゆる不良だ。夜遊びはするし、授業はサボりまくるし。
だからなのかはわからないが、彼女にはあまり友人がいない。
俺にもあまりいない。ここに送り込まれたのは、いじめのようなものだ。向こうにはそんな気は欠片もないだろうが。
洋館の中で煙草を咥えた彼女は、まるで貴婦人のように見えた。
本当は不良娘のくせに、そう一瞬だけ思う。
でも、そうじゃないとすぐ気付く。
これこそが、本物のさつきなんだ。
彼女がこの洋館の主人。俺は訪問者。
異人館に、ようこそ。そう言われた気がした。
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