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回路の小説置き場

2008-01-24 異人館で会いましょう

いろはのお題

20:28

ちょっと前にいろはのお題を提供してくれていたサイトさんからお題を借りて書いたのがこの小説。

しかし、今はそのサイトが発見できませんでした。

勝手に使って申し訳ありません。

異人館で会いましょう

| 20:16

 

 そこはお化け屋敷と呼ばれる洋館だった。

 俺がそこに入ったのは、肝試しで、だ。

 高校生にもなって肝試しもないだろうと俺は抗議したが、皆面白がっているようで、俺の意見は却下された。

 俺の意見が却下された理由はわかる。

 俺は極度の怖がりだからだ。俺が怖がる様子を見て楽しもうという計画だろう。少し悔しいので、自分に怖くないと言い聞かせて、震える足で扉を開ける。

 ギィィィィィィ。歯軋りのような音で、扉は開く。

「ヒッ!」

 思わず叫ぶ。自分の叫び声の方が、怖かった。

 

「わ!」

 思わず叫ぶ。誰かが。また怖かった。

 素早く口を抑え、必死で絶叫を喉の奥に押し込める。

「ふふっ」

 その俺の様子を見て、その誰かは女の子の声で笑った。

 一瞬幽霊かと思う。また叫びそうになる。よく見ると、月光に照らされた足がある。

 人間だ。俺は安心した。

 「なんだ、さつき、お前かよ」

 彼女の姿が全部月光に照らされる場所に移動して、俺は言った。

 さつきは俺の幼馴染みだ。イギリス人とのハーフで、生まれつき茶色い髪をしている。

 「うん、ここ、好きだから」

 煙草を咥え、なつかしそうに、彼女は言う。

 彼女はいわゆる不良だ。夜遊びはするし、授業はサボりまくるし。

 だからなのかはわからないが、彼女にはあまり友人がいない。

 俺にもあまりいない。ここに送り込まれたのは、いじめのようなものだ。向こうにはそんな気は欠片もないだろうが。

 洋館の中で煙草を咥えた彼女は、まるで貴婦人のように見えた。

 本当は不良娘のくせに、そう一瞬だけ思う。

 でも、そうじゃないとすぐ気付く。

 これこそが、本物のさつきなんだ。

 彼女がこの洋館の主人。俺は訪問者。

 異人館に、ようこそ。そう言われた気がした。