2008-01-25 パラボラアンテナ危機一髪
パラボラアンテナ危機一髪
小説 |
(うう……電磁波が反射してビリビリと来るぜ……)
またの名をディッシュアンテナ。
皿のように美しい、この楕円の形状からそう呼ばれている。
さつきは両親が共働きで、しかも結構いそがしい。
別に家が貧乏なわけじゃあない。彼女の両親は自分がすべき事を知っており、それが成したい事でもあるという、幸運な二人である。
しかしその事は、さつきにとっても誇りでありながらも、さつきに孤独を与える事になっていた。
その孤独を少しでも和らげるために、俺は今日も衛星放送を受信し、彼女に娯楽を与えている。
俺はその事を嬉しく思う。
さつきのような美少女に、少しでも喜んでもらえる事を。
そして俺は願う。
さつきにわずかなりとも感謝される事を。
そう、見返りを求めぬ優しさを持てるほど俺は崇高なパラボラアンテナではない。
少しでもいい、さつきからの感謝が欲しいのだ。
何故なら俺は、さつきを愛してしまったから!
「おーすさつき、邪魔するぜ」
「うん、こんにちは、今開けるね」
間の抜けた男の声に、まるで無防備な返事でさつきは応対し、男を! 家の中にあげる!
別にこの男とさつきは付き合っているわけではない。
男は自分の家で衛星放送が見られないためにさつきの家に来るのだ!
そしてさつきは付き合ってもいないくせに男を家にあげる!
俺はその事に耐え切れない。
そして、さつきは付き合ってもいない男と仲良さそうに一緒にテレビを見始めた。
俺は疾妬のあまり我を忘れそうになる。
幸い、そこに風が吹いた。
俺は風に身を任せ、ぷい、と横を向く。
これで映像は受信できなくなるはずだ。
二人が仲良しになるのを邪魔してやる。そう考えた。
しかし、そうはいかなかった。
さつきは画像の乱れに気付き、すぐに俺を元の方向に戻した。
さつきが俺を触ってくれた。
それも、優しく手扱ってくれたのだ。
「もうずれないようにね」
冗談っぽく、彼女は言う。
だが、さつきがそういうのなら仕方ない。
俺は耐えよう。
この映像を受信しやすい方向に、自分を固定しておく事を、俺は決意した。
台風が接近して来ている事も知らずに……。
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