正体のばれたサンタクロース

どろどろしたクリスマスだった。多分に僕のせいだ。22日午後5時から23日午前7時半までバイト。本当に疲れた。頑張れたのは彼がいてくれたからだと思う。23日午後2時まで二人で爆睡。その日は12月で唯一、彼が仕事を休みにした日だ。あっという間に終わった。彼の家に泊まりに行った。彼のお兄さんの彼氏と会話をしたのは初めてだった。僕は彼の小さな甥っ子姪っ子の相手をずっとしていた。
24日、朝7時半に起きて彼は仕事へ行く。僕は家へ向かう。JR大阪駅構内の本屋で立ち読みを始める。「リアルおにごっこ」とやらを読む。ラストにひねりの「ひ」の字も見られない駄作だった。間違ってもおすすめすることはできない。気づけば10時半、ロフトへ行きクリスマスカードを買った。だってクリスマスイブだ。僕はこういうイベント事が、実は大好きなのだ。そのくせまだ何も準備してなかった。それで続いて新阪急ビルのデパ地下でシャンパンを買った。先日オススメを受けたヴーヴ・クリコのホワイトラベル。ハーフボトルで2850円也。僕的にちょっとした贅沢。彼はこれを飲んだらなんと言うだろう。僕も少し奪って飲もう。地下を通りタワレコへの道すがら、直径15cmのちっこいホールケーキを買った。タワレコLOW IQ 01の「SWEAR」を購入。期間限定クリスマスカラーのギフトラッピングして貰った。僕が大阪に来てから一番聞いたCDだと思う。大好きな曲だ。彼が気に入るかと言うと少し首を捻るけれども、それでも聞くだけ聞いて欲しかった。僕の大好きな曲は僕を意味するからだ。帰り道で暇つぶしのために江國香織の「きらきらひかる」、吉田修一最後の息子」を購入。どちらもゲイが登場する。豊中で降りケンタッキーフライドチキンを買う。きっと冷めちゃうけどまあ、暖めればいっか、と買ってしまった。帰宅。読書に耽る。彼から「頭が痛いから今日は行かないで家でゆっくりしとく」というメールが来る。凹む。けど体調を崩してしまったのなら仕方が無いよなあと安否を憂える。でも心は沈む。おそらく彼が来ないのは頭痛のせいだけではないだろうと、それは僕の中で確信めいたものになっていた。ぼーっと読書をしながらいろいろと考える。なんだか、なぜかわからないけどまた彼の家族に負けた気分になってしまった。きっと家族でクリスマスを祝うのだろう。そう思うと悲しくなってしまった。(彼に彼の家族のことだけは書くなといわれたので書けないからきっとこれを読むひとは意味がわからないだろうけれど)彼はまるで正体のばれたサンタクロースのようだなと、ふと思った。いつまでサンタクロースでい続けようとするのだろう。そんな風にふわりと頭に浮かんだことを彼へメールしたら、彼はまた随分重く受け取ってしまったらしい。彼はメールで「疲れた」と書く。それが僕には酷く辛い。彼を疲れさせているのは僕しかいないからだ。ゆっくり休んでねと言う。そして今日も結局僕は独りで一日を過ごした。一日経ったケーキとチキンを大学の部室に持っていったら、みんな食べてくれた。「ドタキャンされてさー」とおどけて言うと「ざまあみろ」と笑われた。まったくその通りだ。大好きでもどうしようも無いことはある。まるで「きらきらひかる」の睦月と笑子のようだ。彼の優しさにも耐えられなくなっている自分がいる。残酷になっていく自分がいる。それでもどうしようもなく彼が好きなんだよなあと思う。その想いだけで自分は今、生活している。悪循環にはまりながら。
彼は僕が鹿児島へ帰省している三週間程の間、ゆっくり考えると言った。僕は日記に書きしたためることで、整理して行こうかと思う。

上記文章について、そして四ヶ月前の過去ログ消去の理由について

自分の中である程度の整理がついたので書こうと思う。
七月の終わり、彼と僕と彼の友達のノンケカップルで食事に行ったときのことだった。そこはゲイが経営する店で、客は誰でも入れたけれど、やはりゲイの客も多い、そんなところだった。カウンター席に座った僕等は、それぞれの席位置に従って、僕は右隣にいるノンケカップルと会話をし、僕の左隣に座っていた彼はその左隣にいるお客さんと会話をしていた。彼は見ず知らずのひととすぐ会話を始めるのだった。彼はにこにこしているように“見えた”。食事を終え、店を出る際、彼と話をしていた男性が、僕に向かって「日記読んでます」と言ってくれた。すごくうれしかったけれど、それ以上に焦った。皆店を出てしまっていたので、僕は挨拶もそこそこにその店を出てしまったのだけど、おそらく狼狽している様子は彼に伝わっていたと思う。彼は帰り道の間、常に不機嫌だった。見たことのない不機嫌さだった。
彼の家族について書くな、それが彼の唯一の要望で、僕が日記を書いていて唯一彼を悲しませたことだった。彼が言うに、僕が個として認識できるひと(たとえばHNを持つ一個人)に対して、彼の家族のことを一対一で述べるのならよいのだけど、不特定多数に対してそれを公開することはやめて欲しいとの由。これまで僕が彼と十ヶ月付き合って、彼を泣かせてしまったのはただ一度、そのせいだけだった。それで僕は僕の三年間の日記を消去した。僕の日記のせいで誰かが悲しむのはいやだったし、それが僕の大好きなひとなら尚更だった。僕は彼に日記のURLを教え、彼がそれを読み判断すればいいと思った。そこには僕の三年間が凝縮されていて、僕が思ったこと、感じたことが全て詰まっていたからだ。けど、それは受け入れられなかった。彼は結局僕が彼と出会った頃からの日記だけをちょこんと読み、僕の書いた彼の家族の記述について彼はひどく悲しみ、泣いた。僕は純粋に思ったことを書いていただけであったのだけど、勿論悪いのは僕なのだろうと思い、その後日記を消去したのだけれど、彼に泣きながら「お前に僕の何がわかるんだ」という言葉を言われた瞬間は、僕も泣きそうになった。しばらくして、彼から電話がかかってきた。「僕は君を許せそうにないから、別れよう」と言われた。僕は一連の出来事が本当に急なことで、驚きを隠せなかったけれど、仕方の無いことだと思った。僕は彼のことがそのときも大好きだったから、そのことだけを彼に伝えて、なんとか仲直りしようとした。その後どうにか修復することに成功したのだけど、結局ネットでの表現について、僕の中で燻り続けた。彼の家族についての記述はできるだけ避けるようにした。しかし彼の中で彼の家族が重要である分だけ、彼の家族についてのことを避ければ避けるだけ僕は彼のことを“書けない”“書けていない”と感じ虚しくなったりした。それは、今でも続いている。
というわけで、昨日今日の出来事に関しても記述が曖昧になっているのだけど、もし詳細を知りたい方がいたら僕にメールを下さい。僕から直接、一個人に言うのであればそれは許されると思うし、そうでもしなければ僕が相談できる可能性はゼロになってしまいます。そのことは彼も理解してくれるはずです。以上が三年分の過去ログを消去した理由でした。