ネクラ少女は黒魔法で恋をする / 熊谷雅人

ネクラ少女は黒魔法で恋をする (MF文庫J)

ネクラ少女は黒魔法で恋をする (MF文庫J)

ネクラ少女にシンクロフィーリン。良作です。
自分に自信がなくて、友達も恋人もいなくて、いつもうつむいていて人と会話もロクにできないくせに、心の中は被害妄想と加害妄想と自己嫌悪と自己卑下で一杯のネクラ少女空口真帆、決め台詞は「呪うぞ」(もちろん心の中で)、にシンクロ度の針が振り切れます。これはもう人によるとしか言えませんが、こういう感情に共感できるなら面白いかと。沈んでくような暗さではなくて、小動物が精一杯威嚇してるようなタイプのネクラなので読んでいて不快な感じもしませんし。
話は黒魔術で呼び出した悪魔に可愛く変えてもらって、その対価に誰かに恋することを禁止されたところからスタート。外見から生まれ変わったネクラ少女は、演劇部へと誘われ、そこでの仲間との交流や先輩への淡い恋心で少しずつ内面から変わっていきます。この過程がなんとも微笑ましくて、読んでいてかなり幸せな気分になれます。なにより、真帆を取り巻く演劇部の人々や、妹やクラスの友人がみんな良い人なので、それに真帆が少しづつ気付いていく過程が素敵に思えます。
人間内面が大事で自分が変われば世界は変わるというありふれたテーマを、ありふれたストーリーやキャラクターで綴っているのですが、読みやすく親しみやすい文章も相まってなかなか良い感じになっています。
ラストはちょっとどうなのかなぁとも。今までの話でもっと見たかったところもありながら、これで続編はどうするのかとも思いつつ、綺麗にまとまってるといえばまとまってるかという感じ。ただちょっと物足りない感じが残ったのが残念です。
満足度:A-