カクリヨの短い歌 / 大桑八代

カクリヨの短い歌 (ガガガ文庫)

カクリヨの短い歌 (ガガガ文庫)

短歌が幽世に消え、戻ってきた歌の一部には災いの力が宿り、禍歌と呼ばれるようになった世界。
多くの歌を管理する祝園家の少年宗道と、彼の幼馴染にして手段を選ばず歌を集めて回っている帳ノ宮真晴を描いたガガガ大賞受賞作は、短歌を使った異能バトルという異色の設定に独特の雰囲気が組み合わさったもの。
取り上げるものが短歌ということで柔らかな和風ファンタジーのように見せかけて、どこか浮世離れしたようで無機質な世界観と展開が不思議な読み心地を与えてくれる一冊だったと思います。冷えた空気に、忌まわしい力の宿った短歌がすっと浮き上がってくるような、そんな印象。
ただ異能バトルやキャラクターについては、割と崩している感じというか、普通のライトノベルという印象が強かったので、もう少しこの独特のセンスのまま突き抜けて欲しかったなあと個人的には。ついてこれる人が減るのかもしれませんが、その方がきっとオンリーワンな作品になって面白かったんじゃないかなとも思います。