Kitajskaya’s Raccomandazione

このブログでは、私、Kitajskayaが気になったモノを紹介します。私の嗜好はかなり偏っているので、かなりマニアックなものなると思います。また気まぐれなので、更新はまちまちになると思います。 Raccomandazioneとは、イタリア語で「おすすめ」という意味です。

孤独の中華そば「江ぐち」

 久しぶりに記事を更新します。思えば4か月ぶり!?

孤独の中華そば「江ぐち」

孤独の中華そば「江ぐち」

思わず自分も食べたくなる、飲みたくなる!はてなブログお題「あなたの『行ってみたいお店・レストラン』」結果発表!(http://r.gnavi.co.jp/g-interview/entry/gohan/2875)について記事を書く

 年末にはてなブログみんなのごはんの共同企画である「あなたの『行ってみたいお店・レストラン』」に応募し、どういう訳か入選しまた結構なお品(熊本の馬刺し)を戴きました。先日お品が届き、家族と一緒に舌鼓を打ちました。月並みな表現で申し訳ありませんが、柔らかな歯ごたえと口に入れた時に甘味とうまみが広がり、美味しかったです。はてなダイアリーで書いて申し訳ないのですが、この度は本当にありがとうございました。
 その時の記事です。 
kitajskaya.hatenablog.com

 この記事を書くときに参考にしたのがこの孤独の中華そば「江ぐち
 社会人の時くらいに「江ぐち」のラーメンや店員さんについて書かれた本を読んだことを思い出し、Amazonで探しました。探し出した本のタイトルは「近くへ行きたい。秘境としての近所-舞台は“江ぐち”というラーメン屋。」吃驚したのは作者があの「孤独のグルメ」で有名な久住昌之さんだったことです。ただ残念なことにこの本は絶版になっているようで、「江ぐち」閉店を機に出版されたのがこの本でした。
 久住さんは前書きで以下のように述べています。 

 この本は、1984年つまり昭和59年に、ボクが書いた『近くに行きたい。秘境としての近所―舞台は“江ぐち”というラーメン屋。』という本が元になっている。
       〜中略〜
 とにかく、当時、ボクの行きつけのラーメン屋「江ぐち」のことを、店員に全く取材もせず、友人達と勝手に想像してあれこれ書いてしまった一冊だ。
 当時ボクは、マンガ家としてデビューして3年目で26歳だった。
 25年前だ。ケータイもインターネットもなかった時代だ。
       〜中略〜
 そういうわけで、この本は一軒のラーメン屋とボクの、四半世紀にわたる記録である。結果的に、ボクが25年もかけて作った本になった。 

 江ぐち三鷹駅南口にあったラーメン屋で、学生時代三鷹市に住んでいた関係からよく食べに行きました。この店を初めて知ったのは、女友達だった人の弟さんが三鷹市内の高校に通っていて部活帰りによく食べている美味しいラーメン屋があると聞いたからです。学生時代はかなりの頻度で通い、社会人になっても最初のうちは中央線沿線に仕事の拠点があったため、移動の時はわざわざ三鷹駅で降り、江ぐちによってラーメンを食べていました。住まいが横浜に移った時も、あの味が忘れられずに年に何回かは江ぐちに通っていました。結婚し、調布に越したときは嫁と一緒に行ったこともありました。ただ21世紀に入り、職種が変わり、生活拠点が東京から静岡に移ったため、江ぐちにはいかずじまい、すっかり江ぐちのことは忘れていました。今回ブログ記事で思い出したのですが、残念なことに江ぐちは2010年1月31日に閉店していました。 
 久住さんはあとがきで次のように書かれています。

 「江ぐち」の閉店の一週間は、それはスゴイ騒ぎだった。地下の店の前から地上に出てさらに長い行列ができた。麺がなくて泣く泣く帰る人もいたようだ。
 mixiでもtwitterでもすごい話題になっていた。ボクの日記が、知らぬ間にニュースに引用されたりした。
 名古屋や、京都や、岡山から、江ぐちのラーメンを食べるだけのために上京した人もたくさんいたそうだ。みんなそれぞれの「江ぐち時間」が忘れられないのだ。
 「泣きながらラーメンを食べる人を初めて見ました」
 という報告もあった。思わず笑って、同時に涙がこぼれそうになった。

 今はもう存在しない「江ぐち」ですが、その後継というかその味を受け継ぐ形で2010年5月に同じ場所に「中華そば みたか」がオープンしました。基本的に麺もスープも「江ぐち」とほとんど変わっていないようです。
 さてこの本ですが、想像だけで江ぐちのことを事細かく記載しています。江ぐちの店の作りにはじまり、メニューとかそこで働く3人の職人さん達とか。今さらというべきでしょうか、久住さんの観察眼や想像力はもの凄いですね。それがあの「孤独のグルメ」に繋がったと思うと合点が行きます。
 特に3人の職人さんについては本当にこんなこと書いて大丈夫?と思えるほど際どいことも書かれています。当初、久住さんはお店の名前は伏せてくれと嘆願したそうですが、その願いは叶わず、この本が出版されても、久住さんは内心はびくびくしながらも江ぐちに通われたとか。でも出版されていたことは結局3人にはバレていて、「よく見ているなあ」と感心されていたそうです。3人のお人柄が偲ばれますね。
 後日談として3人のうちの一人アクマと呼ばれていた横倉道彦さんの娘さんと久住さんのエピソードが出てきますが、その話には思わず泣けてきました。その他にもいろいろな「江ぐち」ワールドが描かれており、これは単なるラーメン屋の話にとどまらず、何というか、そこに集う人間のドラマが凝縮されたような本です。読み終わって面白かったがちょっと切ない気持ちを感じる、心に残る私にとっては一冊でした。
 最後に3人の職人さん、タクヤと呼ばれいた井上修さんははてなブログでちょっと書きました。もう一人オニガワラと呼ばれていた江口伸弘さん、本ではコミカルに描かれていましたが、私は江口さんがラーメンを作る時間帯によく当たりましたが、江口さんの作るラーメンは美味しかったですよ。