まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

剣の女王と烙印の仔Ⅵ

剣の女王と烙印の仔? (MF文庫J)

剣の女王と烙印の仔? (MF文庫J)

  • ストーリー

アンゴーラの侵攻によりラボラジア軍が撤退し、大きく軍勢を減らした公国軍。
7万の軍の指揮官代理として、パオラは1人、激務に追われていた。
一方、次期総主教選挙のためプリンキノポリに向かったフランチェスカは、刻印の謎に迫りつつあった……。


杉井先生が同一シリーズの6冊目を出した!
ということで大剣が舞い策謀が踊る中世ファンタジー、第6弾です。
ページ数から見ると薄めにも関わらず、今回もボリュームたっぷりの1冊。
色々な場所での物語が同時展開しているからそう感じるのでしょうが、かなりの重量感があります。
これだけストーリーが分かれて進んでいるのに、毎巻きちんと決着をつけているというのが凄いと思いますね。


バラバラになった主人公たちがそれぞれの場でそれぞれの目的のために死力を尽くして戦う様子に胸が熱くなる。
今回は特にパオラの頑張りが目を引きました。
失敗を繰り返しつつも、大軍の指揮官として、フランの代わりとして、年の離れた公爵や将軍たちの中で孤軍奮闘するパオラ。
致命的な失敗を導いてしまったときに、周りの叱咤を受けて再び顔を上げるその姿はめちゃくちゃ格好良かったです。
一方のクリスとミネルヴァ。
お互いを想い合っているのに共にいることができず、すれ違っていく2人が切ない。
この2人が報われるときは来るのでしょうか。お互いを信じて生き抜いていけば、いつか必ずそんな日が来ると信じたい。
教会を操ろうと画策するフランは刻印の秘密に触れ、新たな力を得ます。
全てを犠牲にして突き進む彼女は、誰よりも勇壮で、誰よりも悲しい。
忘れてはならないのがジュリオです。
シルヴィアのためなら文字通り自分の身を投げ出す。彼を止める者はもはや存在しない。


主人公たちのそれぞれの物語は時に分かたれ、時に交錯し、ますます広がりを見せてくれます。
どうやらこの大風呂敷はまだまだ広がっていくようですね。
この壮大な物語がどこへ向かってゆくのか。とても楽しみです。


巧妙な仕掛けと鮮やかな伏線も健在です。また見事にしてやられたなあ!
一度まとめて読み直したら新たな発見がありそうですね。


夕仁さんのイラストが今回も大変印象深いです。
特にモノクロのイラスト数枚は見た瞬間に痺れが走りました。
間違いなくこの作品の世界観構築に一役買っていると思います。次の巻のイラストも大いに期待ですね。