まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

薔薇のマリア 12.夜に乱雲花々乱れ

  • ストーリー

ルーシーの父親の正体に戸惑い、ルーシーとどう接するべきか悩むマリアローズ。
アジアンは、真偽を確かめるためにひとり第八区へと向かい、SIXらしき男と対峙する。
一方、《秩序の番人》の副長ヨハンは、SIXへの復讐を胸に誓っていた……。


出だしからいきなりのユリカ・飛燕コンビにニヤニヤ。
いや、もう、ほんと、なんで飛燕なの? と思わずにはいられないけれど、こればっかりは仕方ない。だってユリカが可愛いんだもの。


ずっと追い求めてきた父が極悪非道の犯罪者かもしれないと明かされて混乱するルーシー。
ZOOにとってのSIXは憎むべき敵で、しかしルーシーは大切な仲間だから、仲間の父への思いも大事にしたいけれどそうとばかりも言っていられない。
複雑に思いつつも、マリアたちはルーシーのため、手がかりを求め続けます。
マリアは悩みながらも、後輩のために、真摯にルーシーと接し続けて、全てを話して聞かせました。
もがきながら着実に前へと進もうとするマリアが素敵。毎回思うけれど、本当に成長したよなあ。もう立派に「頼れる先輩」という感じですね。
マリアとアジアンはなんだかんだでとてもいい関係になってきました。
アジアンの熱烈な極限愛はおいておくとしても、マリアだって心の底では、アジアンを嫌ってはいないし、多分好いてもいる。
決して口に出さないし、自分でも認めないけれど、確かにアジアンのことを想っているマリアに、なんともいえぬ甘酸っぱさを感じます。
愛の表現は全く違う2人ですが、相手を大切に思う気持ちは一緒。ああ、むずがゆくて、きゅんとする。


和やかな雰囲気は一転、遂に奴がまた登場します。
相変わらずの最低最悪の下衆っぷりには思わず吐き気が。でもなんででしょう、奴が登場するのをなんとなく待っていたような気もするんですよね。
全く少しも好きにはなれませんけど、何か引きつけるものがあるのは確かだと思います。それを魅力とは言いたくないけれど。
復活した強大な悪に対し、再度立ち上がったのが秩序の番人。
ある者は義のために、またある者は復讐のために、騎士たちは団結し、勇んで戦いに身を投じていきます。
中でも目を見張る活躍を見せたのはなんと、冷徹なる副長・ヨハンでした。
今まで直接剣を振るうことはなかったヨハンですが、そんな彼が見せた剣技、その胸に秘める強い思いに、胸が熱くなります。
琺瑠に密かに想いを寄せながら、あくまで副長として居続けた不器用さも含め、純粋に格好良いと思えました。いつか彼の想いが届くことを祈る。


敵はまだまだ圧倒的で、希望の光さえ見えなくなってしまいそうだけれど、もう悲劇は繰り返してほしくない。
ZOOをはじめとした人々がどのように奴と戦っていくのか。次がとても気になります。
エピローグで姿を見せたベアトリーチェの活躍にも期待。


それにしても、チョコレートの描写でこんなに官能的なものを見たのは初めてです。