まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

剣の女王と烙印の仔Ⅶ

剣の女王と烙印の仔? (MF文庫J)

剣の女王と烙印の仔? (MF文庫J)

  • ストーリー

総主教代行となって、ミネルヴァたちと再会したフランチェスカ
折しも聖王国が停戦協定を申し入れてきており、その協議に向けてさらなる計略を練ることに。
一方のクリスは、単身、聖都のすぐ近くにまで迫っていた……。


ページ数はそう多くないのに相変わらずどっしりとした読み応えでした。
クリスだけではなく、ミネルヴァやフラン、ジュリオにシルヴィアといった人物たちそれぞれが主人公然としていてとても楽しい。


自分の獣を支配すべく、ひとりで聖王国の中枢へと向かったクリス。
深淵の獣と出会い、遂にその秘密に触れたクリスですが、それはあまりに重い事実でした。
正直これは、どうにも救いが見えないほど。いよいよ物語の核心へ踏み込みつつあるような気がします。
ザカリアの聖女様には今回も感服。まったくひどい計略もあったものですが、これでこそフランだ!
相手の裏をかき、隙を見て喉に喰らいつく策略謀略の掛け合いはこの作品で一番胸が踊る部分のひとつだと思うんですよね。ミネルヴァとパオラの勇気にも乾杯。
王太伯ティベリウスに体を乗っ取られたジュリオは、メルクリウスと共にアンゴーラとの戦いへ。
シルヴィアのために自分さえも投げ出すその強い意志には感服する他ないけれど、可哀想なのはメルクリウス。
大好きなシルヴィアを救い出すためとはいえ、同じく大好きなジュリオがジュリオではなくなってしまうのを間近で見るのはどれほど辛いことか。
シルヴィアもシルヴィアでひどく恐ろしい目に遭っているし、ここのグループは全く休まる時がありません。


主人公たち以外にも、敵であるガレリウスやアナスタシアまでが魅力的だから困る。
中でも存在感が凄いのはやっぱりカーラですよね。彼女だけは本当に行動が読めません。何をしでかすのか分かったもんじゃない。
ラスボスはやっぱりカーラになるのでしょうか。クリスとの顔合わせも済んだことだし、全面対決も近いような気がします。


バラバラになりながらもそれぞれの場所で戦う仲間たち。それが最後にひとつにつながって収束、一気に終わりへと流れこむ巧妙な仕掛けが見事。
普通に考えたらこんなにタイミングよく、上手いこといくわけがないのだけれど、これはやっぱりテュケーが影響しているのかな。
もしそうならば、神や運命に抗うために戦い続けている彼らが運命に救われるというのはまた、ひどく皮肉に感じます。
彼らが敵に回しているものはあまりに大きく、勝てる見込みなど欠片もないように見える。
でもだからこそ、あくまで人として、神に立ち向かい続けようとするフランやジュリオが、これほどまでに眩しく輝いて見えるのでしょう。
きっと、人の思いは神を超える。そう信じて。


ひとまずの解決と、さらなる事態と。
まだまだ襲いかかる危機に対し、フランは、ジュリオは、どうやって戦っていくのでしょうか。
そしてクリスは、ミネルヴァとの甘い約束を果たすことができるのでしょうか。
ますます大きく膨らんでゆく物語から目が離せません。次も楽しみです。