まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

きんいろカルテット!(1)

きんいろカルテット! 1 (オーバーラップ文庫)

きんいろカルテット! 1 (オーバーラップ文庫)

ストーリー
ユーフォニアム奏者の大学生・摩周英司は、恩師の紹介で中学生の少女たち4人の楽器コーチをすることになる。
「ブリティッシュ・カルテット」と呼ばれる日本の吹奏楽では馴染みのない楽器を演奏する少女たちに感動する英司。
コンテストを目指して練習に励む少女たちだが、吹奏楽部の顧問の教師から横槍が入り……。



オーバーラップ文庫キックオフ賞<金賞>受賞作品。
マニアックな金管楽器を演奏したいと願う4人の少女を、才能豊かな天才演奏者の主人公が教え導く音楽ストーリーです。
面白かったです。純粋に音楽を楽しもうとする少女たちが、ひたむきに努力を続けて羽ばたいていく綺麗な展開が素敵でした。
作者はプロの楽器奏者ということで、その知識に裏打ちされた(かどうかは正直素人の私には分かりかねるけれど)音楽描写も魅力的でしたね。


ユーフォニアムの菜珠沙、コルネットの貴ノ恵と涼葉、テナーホーンの美夏。寡聞にして私はどの楽器も知らないのですが、そんな耳慣れない楽器を愛する4人の少女たち。
吹奏楽部から追いやられて、独自の活動さえも邪魔されて、それでも自分が演奏したい楽器を持ち続ける彼女たちの純真さに、心が洗われるようです。
顧問はよくもまあ、こんなまっすぐな女の子の願いを踏みにじるようなやり方ができるものですね。見ているだけでも腹が立ってきて、より一層、4人を応援したくなってきます。逆にいうと、口調が憎たらしくて手段もせこくていかにも小物っぽい彼は、悪役としてとてもいい味を出していたと思います。やっつけたくなるものね。
大会で賞を取ることばかりを優先しているような顧問と対照的なのが主人公の英司。なかなかに格好良い主人公でしたね。
菜珠沙たちが秘めた可能性を見出してそれぞれの良さを引き出していく指導者としての凄さと、ところどころで垣間見せる演奏者としての底知れぬ才能。
英司のもとで少女たちがどんどん上達していくのが目に見えるようで、この子たちはいったいどこまで行けるのだろうかとわくわくさせられました。
ヒロインとしての可愛らしさを発揮してくれたのは主に菜珠沙でしょうか。ふたりでのお買い物やマウスピースのドキドキがとても微笑ましい。今は英司にとって妹のような存在になりつつあるのかなと思いますが、浅からぬ因縁もあり、今後の関係がどうなっていくのか気になるところです。


ライバルであるはずの吹奏楽部のメンバーが、4人に協力してくれたのには、胸が熱くなりました。
もちろん4人にとっては、音楽を楽しむということが第一にあるわけですけれども、それはそれとして。認められていなかった少女たちが、頑張った結果として周りに認められるようになったというのは、とても嬉しいことですよね。
コンテストでの演奏は4人の一体感が出ていてよかったですね。でも彼女たちはきっと、こんなところで終わるような子たちではありません。今後のさらなる成長に期待です。


イラストはDSマイルさん。口絵のツヤのある色使いが(特に楽器が!)綺麗でした。
マウスピースのシーンの1枚が特に好きです。あとTバック


あとがきをはじめ、文章の要所要所から作者のドヤ顔が見える。気がする。