ギルド＜白き盾＞の夜明譚

ギルド〈白き盾〉の夜明譚 (MF文庫J)

ストーリー
『本物の騎士』を目指し、凶暴な魔獣ひしめく新大陸へとやってきた少年レイ・ブラウン。
到着直後に伝説の傭兵の子孫マリールイズと出会ったレイは、彼女のギルド＜白き盾＞との契約を持ちかけられる。
ところがレイに任された仕事はギルドの経営・兵站管理を行う『運営職』で……。


第11回MF文庫Jライトノベル新人賞＜最優秀賞＞受賞作品。
ポンコツリーダーと金食い虫のメンバー3人を抱えた赤字ギルドを、かつて輜重車の悪魔と呼ばれた主人公が立て直すギルド運営ファンタジー！
面白かったです。剣士でも魔法使いでもなく、ギルドの運営者として働く姿がユニークですね。
ギルドメンバーはみんなワガママ放題で、何をするにも金がかかって、もうジリ貧すぎて頭痛がくるほどだけれど、それだけに命運を懸けた一大クエストが熱い。


旧大陸で騎士になれず、それでも諦めることができずに新大陸へとやってきた主人公・レイ。
奇跡的に伝説のギルド＜白き盾＞のリーダー・マリールイズから勧誘されたかと思ったら、騎士としてではなく「運営職」としての契約でした。
伝説のギルドとは名ばかりで、運営としてはかなりポンコツなリーダーと、力量はあってもワガママばかりで金を使い荒らすメンバー3人しかいない破綻寸前ギルド。
そんなギルドを、交渉や営業や経理など工夫しながら、なんとかしていこうとする主人公の努力が涙ぐましい。
ギルドがギルドとしてやっていくには、戦士だけが重要ではないのだ！　ちゃんとクエストをもらってきたり、商会と専属の契約を交わしたり、戦闘に使う経費を抑えたり、そういう営業努力があって初めて黒字運営が成り立つのだ！
今まで見たことのなかった視点でギルドというものを見ることができて、とても楽しかったです。


志は立派だけれど、人が良すぎて周囲の言いなりになってばかりのリーダー・マリールイズ。
傭兵都市でも指折りの実力者だけれど、戦闘に使う砲弾、刀のメンテナンス、魔力回復薬、等々で戦えば戦うほど赤字の出る残念ギルドメンバー3名。
こんなダメダメギルドに、初めこそ愛想を尽かしていたレイですけど、マリールイズの健気な姿勢に打たれてやる気を出してからがなかなか凄かったですね。
大きなクエストを限られた予算で実行するために、色んなところに力を借りながらも、最後の最後は博打っていうんだから怖い。これが敏腕の仕事というものか……。
これだけのクエストをこなしても、ギルド運営は“ちょっとだけ上向いたかな”程度ですが、レイの手腕によってこのギルドがどんな風に生まれ変わっていくのか、今後が楽しみです。


イラストは白井秀実さん。ノスタルジックな表紙が印象的でいいですね。
見開きは迫力があって素晴らしかったです。


酒飲み堕落美人エルフ、好きだ……。