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ラディカルな経済学(旧館) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-09-24

軍事同盟はいらない(ワシントン)

優れた外交方針は、諸外国との通商や貿易を広げながら、できる限り政治的なつながりを持たないことである。

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ジョージ・ワシントン「告別演説」(Farewell Address)より。ロン・ポール『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』(佐藤研一朗譯、成甲書房、2011年)182頁から再引用。報道によると、訪米した野田總理大臣は9月22日、オバマ大統領と初めて首腦會談を行ひ、日米同盟を一層深化させていくことで合意したといふ。戰後長らく續くこの同盟は、兩國にとつて正しい外交政策だらうか。米國初代大統領であつたワシントンがもし生きてゐれば、「間違つてゐる」と言ふはずだ。

ワシントンの「告別演説」は實際の演説ではなく、退任前年の1796年、新聞紙上で發表された。告別演説としては、「軍産複合體」(Military-industrial complex)の影響力を告發したアイゼンハワーの演説(1961年)と竝び、もつとも有名なものだらう。くしくもこの二つの演説は、どちらも米國の外交政策のあり方に警鐘を鳴らすものだ。

ワシントンは獨立戰爭を戰つた軍指導者でもあつたが、他國との政治的・軍事的同盟にはきはめて否定的だつた。さうした結びつきは、せつかく獨立を勝ち取つた米國を無用の戰亂に卷きこむと信じてゐたからだ。同じ演説でかう述べてゐる。「なぜ自立を捨て、他国に依存しなくてはならないのだろうか。ヨーロッパの一部と同盟を結ぶことは、我々の運命を他国に委ねることである」「なぜ自国の平和と経済的繁栄を犠牲にしてまで、ヨーロッパの野望、競争意識、利益、世論や気まぐれに、巻き込まれなくてはならないのだろうか」

外國の政治・軍事に干渉しないといふ理念は、ワシントン以外の「建國の父」たちにも共有されてゐた。トーマス・ジェファーソンは「すべての諸外国との平和、通商、信頼し合う友情関係を保ち、他国の問題に巻き込まれるような同盟関係(entangling alliances)を、どの国とも結ばない」と述べたし、ジョン・クィンシー・アダムズは「アメリカは倒すべき怪物(monsters to destroy)を探しに海外へ行ったりはしない」と明言した。

ところがその後、米國政府は建國の父たちの助言にそむき、最近では歐州はおろか、中東や日本を含むアジアの一部の國々とまで同盟を結び、世界中に基地を配備し、「倒すべき怪物」を求めてベトナム、イラク、アフガニスタンといつた遠隔の地で戰爭を行なひ、血を流した。だがその結果、米國は「歴史上ないほど国際社会から孤立化」(上掲書の著者で、古典的自由主義を信奉するロン・ポール聯邦下院議員)し、反感を買つた米國民は「911」に代表されるテロの標的となつた。膨らんだ軍事費が財政を壓迫し、ドルの價値は下落の一途をたどつてゐる。ワシントンら建國の父たちの危惧が現實となつたのだ。

強調しておきたいのは、不干渉主義は米國だけが理念としうる特殊な外交方針ではないといふことだ。オーストリア=ハンガリー帝國の皇位繼承者夫妻銃撃といふ一事件が多くの國を卷きこむ戰亂(第一次世界大戰)に發展した一因は、大戰前、ドイツ、オーストリア、イタリアが三國同盟、ロシア、フランス、イギリスが三國協商をそれぞれ形成してゐたことにある。ドイツ、フランス、イギリスはバルカン半島に直接の政治的利害關係を持たなかつたが、それぞれの同盟國であるオーストリア、ロシアを支援するため、參戰していつたのだ。軍事同盟は國の安全を保障しない。むしろ國を危ふくする恐れが大きいとさへ言へるだらう。

他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ ―リバータリアン政治宣言―

ロン・ポール議員は來年の大統領選に出馬してゐるが、公約として在日米軍を含む海外駐留米軍の撤退を掲げてゐる。可能性は小さいかもしれないが、もし實現すれば日米兩國民のみならず、全世界にとつて喜ばしいことだ。もちろん私は、一部の「反米保守」言論人のやうに、米國をいたづらに敵視してゐるわけではない。ワシントンが告別演説で述べたことを忘れないでほしい。平和は特定の國との軍事同盟でなく、諸外國との「通商や貿易」によつて築かれるものだ。日本と米國、日本と世界が一切の政治的障壁なしに自由な經濟關係で結ばれる日を私は夢見てゐる。ワシントンもきつと賛同してくれるだらう。

原文

The Great rule of conduct for us, in regard to foreign Nations is in extending our commercial relations to have with them as little political connection as possible.

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引間清浩引間清浩 2011/09/25 11:54 ワシントンの警告を無視した結果が「バフェット増税」を招くことになりましたね。(これは明らかに「政府の失敗」であり、「金持ち優遇?」とは無関心です。)もはや建国の精神はアメリカから失われたのでしょうか?

KnightLibertyKnightLiberty 2011/09/25 20:33 建國の精神が衰へたのは確かですが、しかし立ち返るべき原點があるのはアメリカの強みであり、うらやましくも思ひます。ウォーレン・バフェットのお父さん、ハワード・バフェット下院議員は不干渉主義と金本位制を擁護する立派な古典的自由主義者でしたが、息子は増税の旗振り役ですか……。

引間清浩引間清浩 2011/09/26 07:37 ミルトン・フリードマンも指摘しているように「金持ち増税」はすでに富を手に入れた者ではなくこれから富を手に入れようとする者に大きな打撃になります。そう言った意味では「既得権益」を守ろうとしているのでしょう。同様に「金持ち増税」に賛同しているビル・ゲイツも「坂本龍馬」ではなく「岩崎弥太郎」に成り下がったのでしょう。

梅澤梅澤 2011/09/26 16:11 アメリカが「世界の警察なんてやめた、やる義理ないし」と言へばその通りなんですが、建国の精神同様、アメリカの「傲慢」なメシアニズムも根が深いやうに思ひます。 
彼らは気まぐれですし。

KnightLibertyKnightLiberty 2011/09/27 01:00 引間さん
貧困層を助けたいのならば、資金を政府の手でなく、民間の手に委ねるべきだといふことを、バフェット氏は忘れたふりをしてゐるやうですね。

梅澤さん
根は深いでせうね。アメリカ人に限らず、人間は傲慢ですから。しかしそれを傲慢だと指摘する人がアメリカの中に今もゐるところに望みを感じます。

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