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ラディカルな経済学(旧館) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-10-08

自分の人生を生きよ(ジョブズ)

だれも死にたくはない。天国へ行きたいと願う人々も、そのために死のうとは思わない。けれども、死はだれもが最後に行き着く場所だ。逃れた者はいない。〔略〕時間は限られている。だから無駄にしてはならない。他人の人生を生きてはならない。定説にとらわれるな。それは他人の考えた結果のままに生きることだ。他人の意見という雑音によって、自分の内なる声がかき消されないようにしなければならない。一番大切なのは、勇気を持って、自分の心と直観にしたがうことだ。自分が本当は何になりたいのか、心と直観はそれを知っている。他はどうでもよいことだ。

スティーブ・ジョブズ I

今囘は番外篇。スティーヴ・ジョブズ「スタンフォード大学卒業式式辞」(2005年)より拙譯。アップルの創業者、スティーヴ・ジョブズが死去した。享年五十六。今から六年前、シリコンバレーの中心、スタンフォード大で學生たちを前に行つたこの有名なスピーチには、liberty といふ言葉も、freedomといふ言葉も出てこない。しかし紛れもなく自由の精神に滿ちてゐる。

ジョブズの言葉を少し言ひ換へれば、かうなるだらう。人間は他人から學ぶことができる。しかし最後に決斷するのは自分自身だ。他人の意見にとらはれ、それにしたがつてばかりでは、自分の人生を生きてゐるとは言へない。人生は一度しかなく、しかもいつ終はりを告げるかわからないのだから、人間は「内なる声」に耳をすまし、自分自身の人生を精一杯生きなければならない。

ジョブズの人生は決して長くはなかつたが、それが他人の意見にとらはれない、「内なる声」に忠實なものであつたことは間違ひないだらう。それをもつとも雄辯に語るのは、言ふまでもなくジョブズが心血を注いだアップルのコンピュータ製品だが、それだけではない。

たとへばジョブズは、慈善事業に寄附をしないことで知られ、それを理由に非難されたこともある。だがこれに對しかう説明してゐる。「慈善事業の問題は、成否を測るしくみ(measurement system)がないことだ。寄付した相手、事業の目的、実施の仕方などについて、自分の判断が正しかったかどうか評価することができない。成功したか失敗したかわからなければ、物事を改善するのは難しい」

ジョブズは正しい。營利事業であれば、お金を無駄づかひせず、多くの人々に歡迎されるサービスや商品を提供できたかどうかは、利潤と損失によつて判斷できる。だが慈善事業はさうした尺度がないので、事業のあり方が正しいかどうか知ることができない。もちろん人が自分の意思で慈善事業を行ふのは自由だし、優れた慈善事業もあるだらう。しかしだからといつて、營利事業を道徳的に劣つたことだなどと考へるのは間違つてゐる。營利事業は利潤・損失といふ羅針盤に導かれることにより、慈善事業よりはるかに大きな規模で、持續的に、多數の人々に奉仕しうるのだ。

ジョブズは政治活動にも否定的だつた。ジャーナリストのティモシー・カーニーによると、アップルには政治獻金の主體となる政治活動委員會(political action committee)がない。これは米國の大企業としては異例のことだ。またジョブズはロビー活動に消極的で、アップルの支出額はマイクロソフト、グーグル、IBMといつた競合企業を大きく下囘る。市場での地位を守るため政治の庇護を求める企業が少なくないなかで、これはやはり特筆に値するだらう。

自分の信念を頑固なまでに貫く獨立獨歩の精神は、じつは優れた企業家に不可缺のものだ。經濟學者ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは次のやうに指摘してゐる。

利潤を維持し、利潤をもたらす企業家の着想こそは、大多数の人々が、気付かなかった着想である。〔略〕無数の人々が受け入れている誤りに惑わされず、それと異なる考えをとった者のみに、賞金が与えられる。(村田稔雄譯『ヒューマン・アクション』922頁)

ヒューマン・アクション―人間行為の経済学

「大多数の人々」が何と言はうと、自分の着想を信じ、實現する勇氣を持つてゐたジョブズは、天性の企業家であり、自由の尊さを體現する人物だつた。市場經濟を蔑み、政治的解決を求める風潮が強まるなかで、その死は惜しんでも餘りある。

原文

No one wants to die. Even people who want to go to heaven don't want to die to get there. And yet death is the destination we all share. No one has ever escaped it......Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma ― which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.

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引間清浩引間清浩 2011/10/11 22:15 「慈善事業」が悪いとは思いませんが(個人の資産の使い道を強制するのは『自由』に反することですから)、ジョブズが出来る最高の社会貢献は最高の製品を生み出すことです。その点では「最高の社会起業家」と言えるでしょう。同様にゲイツが出来る最高の社会貢献は『Windows』の改良でしょう。結局「貧困」を打開するのは「ビジネス」しかないのですから。

福田恒存をやっつける会会長福田恒存をやっつける会会長 2011/10/13 11:42  長らく御無沙汰しております間に、新しいサイトを立ち上げられたのですね。地獄の箴言を時たまのぞいていましたが、ここに越したということには気がつきませんでした。

 相変わらずの主張を繰り返されているようで、なにやら一安心といった心持であります。ここをのぞいたついでに国語問題協議会のサイトを見てみましたら、あれれ品格高潔な藤原正彦センセーが評議員の一覧から消えているじゃあありませんか。儀とも受けしようと新潮社の編集者とたくらんで、センセーノ過去の書きなぐり原稿からそれらしい文章を選んで、「国家の品格」なる品格マイナス1万点の愚書をでっちあげたところが、これがうまく時流に乗ってあれよあれよという間に百万部以上も売れて、新庁舎はもちろん、藤原センセーも億という金をあっという間に設けてメデタシメデタシ。

 そればかりか、品格評論屋の先達として原稿依頼が殺到して、あることないこと書き飛ばすだけで年収ウン千万円。これ十ああ名誉教授の肩書きなんぞいっそじゃまっけ、どこか私立大学の教授にもぐりこむ算段もすることなぞなくなってああ良かった。

 ついでに、正仮名(ワードでは正仮名は仮名漢字変換出きませんでした)正漢字をを主張する国語問題協議会の評議員という役員まであy利ながら、現代仮名遣い・常用漢字の見つかってカネ稼ぎをしている実を恥じたのか、どうか判り暗線が、その評議員一覧から姓名が消えておりました。さすが品格の高い世渡り上手なお方は違います。

 それに引き換え、木村貴様や瀬戸内寂聴破戒尼は、相変わらず金儲けは金儲け、信条は信条、と、悩むことなぞ全然なく、あっさり割り切って現在も浮世を楽しく渡っていらっしゃいます。

 これからもちょくちょくお邪魔しようかなあ。

KnightLibertyKnightLiberty 2011/10/14 06:31 引間さん
慈善事業しか存在しなかつたら、私たちがかうしてコンピュータを使つてやり取りすることも不可能だつたでせうね。一方でフリーウェアや青空文庫のやうな「慈善事業」も存在し、役立つてゐる。コンピュータの世界は政府の介入が比較的少なかつたから、營利事業と慈善事業がともに補ひあう形で、存分に花を咲かせることができたのでせう。

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