神戸らしさと特別感−おとな旅神戸(1) 着地型の好例に

業界紙トラベルニュースより
 兵庫県神戸市の着地型ツアー「おとな旅・神戸」が人気だ。食や文化など多彩なプログラムを用意し、2013年度冬、14年度夏に続く第3弾が11月11日―来年3月26日に展開される。毎回完売のツアーが相次ぎ、満足度は"高止まり"と、着地型観光商品の好例といえる存在。
 キーワードは「神戸らしさ」と「特別感」。市観光コンベンション課観光交流事業担当係長の山田健一さんにプロジェクトの根幹を聞いた。
神戸らしさと特別感−おとな旅神戸(2) 好調の要因は「顧客価値追求」
 「おとな旅・神戸」は今年1―3月に第1弾を開催。2012年の大河ドラマ平清盛」で集まった注目を神戸ファン獲得につなげようと企画した。市や神戸国際観光コンベンション協会などによる実行委員会が主催の官民協働の取り組みだ。
 神戸愛する「市民アドバイザー」に個性
 神戸といえばファッションや食、港町といった「おしゃれで上質」なイメージ。従来はこれを具現化させたツアーは少なかったが、おとな旅ではこの「神戸らしさ」に、ターゲットのアクティブシニア層の女性をひきつける「特別感」を加え、「神戸ならではの着地型旅行」を実現させた。
 6―7月の第2弾では募集開始後数分で完売するツアーもあるなど初日の予約率は75%、最終的には92%を記録。満足度も第1弾92%、第2弾93%と高く、参加者は神戸市からが約50%と地元からの支持も上々だ。
 好調の要因に、山田さんは「顧客価値の追求」を挙げる。ツアー後は必ずアンケートを取り意見を商品に反映させるなど「お客が面白いと思えるものをつくることが第一義」という考えを徹底。実際に成功するかは半信半疑だったそうだが、これまでツアーの9割が売れたことで「このやり方で売れる」と確信、加えて「金額に見合う価値の提供の重要性」への自信を深めたという。

おとな旅神戸
第1弾では神戸外国人倶楽部でのジャズライブも

 面白いツアー実現のカギが「市民アドバイザー」。神戸を愛する作家や編集者、料理人、老舗店主らがアドバイザーとして企画・同行案内するツアーですべてのプログラムを構成しており、おとな旅最大の特徴と言ってもいい。
 宿泊者しか食べられない神戸北野ホテルの「世界一の朝食」を山口浩シェフ自らの案内で味わうツアーや、作家・玉岡かおるさんが自身の作品「お家さん」の舞台・元町を語るものなど、体験からまち歩きまで独自性に富んだラインナップがそろう。
神戸らしさと特別感−おとな旅神戸(3) "神戸愛"を商品化
 山田さんはツアー設定には、地域に配慮し協力を得ることを基本に、面白いものづくりには行政的観点の排除も必要という。
民間観点で自信の企画 交流、満足度向上の好循環 そこを埋めるのが市民アドバイザー。「自分の名前が出るので皆さん一生懸命に企画されています」と、民間の観点で自分が面白いものを自信を持って企画するため、神戸の魅力も伝わり、品質も高まる。そして同行案内まで担当することで「人との交流を生み、満足度も上がるのではないでしょうか」と好循環を生んでいる。
 山田さんは「その道のエキスパートが神戸のためにと引き受けてくださる。神戸に根付く神戸愛という文化は大きな武器だと感じました」。
 企画から同行まで同一人がこなすのは古き良き旅行会社を彷ふつとさせる。地元からの支持も高く、顧客志向という点でも現代の旅行業にとって注目すべき点だ。
 おとな旅は「おしゃれで上質なまち神戸」のプロモーション手段としても位置付け。さらに地域の事業者間、市民とのつながりの創出など収益以外の効果も生んでいる。
 11―3月期ではプログラム数を前回の57から88に拡大。今回は遠方からの誘客促進のため大阪へのPR展開や、宿泊ツアーの導入、市内の旅館ホテルとの連携で宿泊優待プランを設定するなど宿泊誘客にも挑戦する。今後は旅行会社とのタッグによる商品化も視野に入れる。
 「PRの強化や将来的な運営形態など課題は山積でまだまだ暗中模索」と山田さんは語るが、この冷静かつ貪欲な姿勢がおとな旅の着実な発展を支えている。