エイガ・デイズ このページをアンテナに追加

「お世辞をいうのは、愛情のない証拠です。お世辞をいうぐらいなら、皮肉をいってあげた方が愛情です」(川島雄三)

2016-04-05

Kurobaku2016-04-05

[]東京の孤独(日:日活1959 井上梅次監督)

さっそくシネ・ヌーヴォの名画発掘シリーズvol.1「女優・芦川いづみ」の第一弾、行ってきたよ〜。

プロ野球の世界を描く話で、東京ディッパーズ(架空の球団)の監督大坂志郎が有望株の新人投手(小林旭)と新人強打者(宍戸錠)を見つけ出すも、悪徳スポーツ記者・西村晃の策略によって、アキラはライバル球団ウェーブスの方へ行ってしまう。

ここで純情青年を演じる小林旭は、大坂志郎に憧れてボクシングからプロ野球の世界に移ったという設定で、大坂に会いに行って「こんなはずじゃなかった」と涙を見せる。大坂は「敵チームになっても勝負の世界は厳しいんだ、お互いに全力を出して頑張ろうぜ」とか言って励ます。見ているこっちまで思わずもらい泣きしそうになるが、メソメソ泣き出すアキラというのは珍しい。ちなみにこのときのアキラは、タッパはあるのだが、色が白くて、かなり青臭い。調べてみるとこの時点では渡り鳥シリーズも銀座旋風児シリーズも始まっていないので、映画の中のキャラクター同様、まだ頭角は現していなかったと思われる(本作の公開三ヵ月後に渡り鳥シリーズの原型『南国土佐を後にして』が公開される)。

一方で、アキラと宍戸の二人は大坂の娘・芦川いづみに惚れこみ、先に新人王になった方が芦川と付き合うことができるという賭けをする(おいおい)。のちの渡り鳥シリーズで戦うことになるアキラと錠が、ここではライバルチームのピッチャーとバッターに分かれて早くも対決している。日活映画ファンなら見逃せない作品だろう。また例によってこの錠が、ガムをクチャクチャ噛んだりして凝った役作りをしているんだよ(笑)。

純情青年に人格者の監督、そして宿命のライバル…とどこか昔の熱血野球マンガを読んでいるような味わいがあるが、試合場面は思ったほどない。それよりも有望な新人選手にたかって契約金を横からせしめる悪徳ブローカー的記者の方が印象に残る。おそらく西村晃がいつもの憎ったらしさで好演したせいもあるんだけど、そういう球界の裏を暴くジャーナリスティックな側面とどっちつかずになっているところが残念である。せめて西村が最後にとっちめられるような、わかりやすいオチでもあればよかったのだろうが。

というのは、ラストは新人王になったアキラが芦川と海岸でキャッキャッと走り回るノーテンキなハッピーエンドなんである。とても『東京の孤独』というタイトルからは想像もつかない明朗さ。案外、原作は大真面目な球界暴露小説だったのかもしれない。

まあ、この頃は、映画もプロ野球もまだまだ元気だったんだね、という一本でした。

<4/5 シネ・ヌーヴォにて鑑賞>

[]無伴奏(日:キングレコードほか2015 矢崎仁司監督)

小池真理子が自分の高校生時代を振り返った半自伝的小説の映画化だそうだが、なんというか、これは「なんちゃって全共闘」の話でいいのかな。舞台は1969〜71年。当時の高校生であれば、大学の学生運動に憧れたのはよくわかる。この映画のヒロイン響子(成海璃子)も友人と一緒に制服廃止運動をして学校側に盾ついたり、大学生と一緒にデモに参加したりする。しかし観客は、響子が帰宅する際、家の前で私服を脱いで、そそくさと学校の制服に着替えるのを見て、すぐに彼女が学生運動に本気でないことがわかる。しょせん流行でやっている真似事にすぎないのだ。

響子が好んで出入りするのは映画のタイトルにもなっている「無伴奏」というバロック喫茶。そこに集まる学生たちは反体制的なフォークソングではなく、クラシック音楽をじっと静かに聴いている。ここからも彼女たちがノンポリ人種とさほど変わらないことがわかる。なので、この映画のメインはその喫茶店で出会った男女の色恋話ということになる。この色恋話には後半でちょっと意外な展開が待っているのだが、日活ロマンポルノとか数々のエロ映画を見てきた私には別にどうというほどではなかった。

それでも私がこの映画を楽しんで見れたのは、成海璃子をはじめ池松壮亮斎藤工といった今をときめく役者たち(池松は以前にもあったが)が、当時の服装や舞台設定で青春時代を演じている奇妙さが何とも言えず、面白かったからである。この映画の批判で時代考証が甘いという指摘がある。もちろん金のかかった外国映画――例えば『リリーのすべて』のような時代再現のきっちりした作品あたりと比べれば、この作品の再現力などひとたまりもないが、「ファッション」としては、私はけっこう成功していると思う。成海璃子の柄物のシャツも、エマを演じた遠藤新菜の白いブーツも、池松壮亮の茶色い革ジャンも…当時の服装がいちいちカッコイイのだ。特に四人で海岸に行くところは当時の東宝青春映画の再現みたいでカッコイイ! 水着やクルマなどいかにも当時っぽい感じだ。ちょっと強引な論理だが、上っ面の時代再現(ファッション)が、響子の上っ面だけの学生運動とまるで連動しているかのようで、私にはそれでいいと思えた。

もったいないのは、撮影・石井勲の画作りだ。硬質で、薄暗い感じの映像が70年代っぽいが、デジタル処理の関係だろうか、細部が潰れてボケていたのが残念。

最後にやはり触れなければならないのは、『武士道シックスティーン』『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』『少女たちの羅針盤』などの学園もので、明朗活発な女子高校生役を演じてきた成海璃子が、本作でとうとう濡れ場を演じたことだろう。これまた不評で、大方は事務所の関係でNGだったのでは、と言われているあの不自然な乳首隠し。共演の遠藤新菜がまたごく自然に脱いで、おっぱいを見せていただけに、なおさら成海が損しているように思える。でもねえ、私は彼女を庇うよ(笑)。この映画の成海璃子は厳しい父親にしつけられたお嬢様の役でしょ? 初めての男の前で、乳首を隠すのはその恥ずかしさのためだと思えばアリじゃないか、と。ほら、そう考えただけでドキドキする(笑)。少なくともこの翌日に見た、何もかも開けっぴろげな『LOVE 3D』よりこっちの方が私はエロく感じた。

<4/5 大阪ステーションシネマ、スクリーン6、座席H-7にて鑑賞>