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「お世辞をいうのは、愛情のない証拠です。お世辞をいうぐらいなら、皮肉をいってあげた方が愛情です」(川島雄三)

2016-08-20

Kurobaku2016-08-20

[]ハイ・ライズ(英2015 ベン・ウィートリー監督)

J・G・バラードの原作小説は大学のとき友人から借りて読み、えらく面白かった記憶があるけど、この映画はクソつまらなかった。

近代文明の粋を集めたハイテクビルディングには階層が出来ていて、上の階に行けば行くほど上流階級の人間が住んでいて、下の階に行けば行くほど下層階級になる。あるとき停電が起きて、ビルの機能は停止し、虐げられてきた下層階級の人たちが上階にあがってきて、めちゃくちゃになるとかいうのが原作の話だったと思う。こんなのいくらでも面白くできると思うのだが、エイミー・ジャンプの脚本が無能で、観客を物語に引き込む努力が何も感じられない。とりとめのない出来事がだらだらと並べられ、いつのまにかビルは大混乱で、秩序崩壊という感じ。

そもそも語り部たる主人公(トム・ヒドルストン)が本当にただ存在しているだけで、何も主張しないし、何も行動しないというのがヒドい。一応、主人公なのだから少しくらい観客に感情移入(もしくは同情)させるようにするのがほんとだろう。当然ながら脇役にも感情移入できることはおろか、興味の持てる魅力的なキャラクターすら皆無。まるで自分とまったく関係のない集会に紛れ込んでしまったような退屈さでずっと見ていた。そもそも上流階級の人も、下層階級の人もステロタイプな描き方で、これで面白がれ、という方がどうかしている。

それでも少し面白かったのは、この映画に登場するファッションや車などがレトロなことで、おそらくこれはバラードの原作が書かれた1975年に舞台設定をしているからだろう。また、このハイテクビル=高層マンションの中にスカッシュコートやスーパーマーケット、プールなどがあるのも凝っていて面白いが、これも原作にあったものだろう。しかし逆に言えば、そんなことしか褒めるものがない。

何よりもこの映画が致命的なのは、原作にある狂気やヤバさを表現できていないことだろう。デビッド・クローネンバーグ監督の『クラッシュ』(1996)はバラードの同名小説を映画化したものだが、ちゃんとヤバさが出ていた。ベン・ウィートリー監督にはそういうヤバさを表現できる才能がない。ちなみにこの監督の一本前の作品『サイトシアーズ 〜殺人者のための英国観光ガイド〜』というのも見ているが、あれも私には面白くなかった。本当にこの人、才能あるの? と思う。

<8/19(金) シネ・リーブル梅田 劇場3、座席G−4にて鑑賞>

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